神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
1,078 / 1,955

水風船の魔法

しおりを挟む


「ん……よく見るとあれ、結界で水を包んでいるのか?」
「そうなのだわー。リクの記憶から拝借した……水風船? なのだわー」
「水風船……あぁ、そういう事か」

 頭上に現れた球……よく見てみると、水がタプタプと揺れている。
 探知魔法のおかげでわかったけど、球状の結界を膜にしてその中に水が入っているようだ。
 確かに、エルサが言った通りの水風船そのものだな。

「それじゃ、行くのだわー! これがウォーターガンなのだわー!」
「おぉ!」
「……」

 そういえば、エルサが発した魔法名はウォーターガンだったな……とよくわからない感心をするくらい、とんでもない勢いで兵士さん達の方へと向かう、無数の水球。
 成る程……水を打ち出すイメージの魔法だったんだな。
 多分、結界のおまけというのは水風船にするためって事なんだろう。
 横で見ていたシュットラウルさんは、エルサの使った魔法の規模か、それとも水球が放たれた速度になのか……はたまたその両方かに驚いて、口をあんぐりと開けたまま絶句していた。

「あー、成る程。確かに水風船だなぁ」
「何かに当たったら結界が解除するようにしたのだわ。どうなのだわー」

 エルサの使ったウォーターガン……無数の水球が凄まじい勢いで土壁の向こうに殺到。
 狙いはモニカさん達が向かっている中央アーチの奥で、兵士さん達が一番密集している場所で。
 特に細かく狙いを定めていないためか、水球は地面に落ちたりしているのもあったけど、数が多いおかげでほとんどの兵士さん達に命中……したような反応が探知魔法で知る事ができた。
 その水球は何かに当たった瞬間、水球が水をまき散らしているよう……アーチの向こう側なので、詳しくは見えなかったけど、水飛沫が舞っているのは見える。

 兵士さん達の悲鳴っぽい叫びも聞こえるから、相当な威力だったのだろう。
 誇らし気なエルサの声からすると、結界はそのままではなく衝撃と共に消える仕組みになっているらしく、水をまき散らしているのはそのためか。
 かなりの勢いで飛んで行ったから、水とは言え結構な衝撃なんだろうなぁ。

「さすがエルサだなぁ……俺だったら、似たような事はできても」
「リクがやったら、結界が解除されずにそのまま当たった対象物を貫通するのだわ?」
「いや、そこまでにはならないと思うけど……」

 俺がやったら、エルサの言うように結界のまま貫通……はさすがにないと思いたいけど、自信はあまりない。
 それか、まき散らされる水の量が多かったり? そもそも、数はともかくエルサが魔法で作った水球とは違って、一つ一つがもっと大きいものになりそうだ。
 結果、援護どころかそれだけで兵士さん達を全滅させてしまいそうな……やっぱり、後方援護はエルサに任せて正解だったようだね。
 今回の目的は全滅させる事じゃなくて、訓練する事なんだから。

「こ、こちらも負けてはいられないぞ! 不甲斐ない姿を見せ続けるな! 最後方帯、壁向こうに魔法をばら撒け! 前衛部隊は槍を持て! 壁やアーチに張り付かせるな!」
「……よ、ようやくあちら側の反撃のようだな。まぁ、先制でこれだけの事をやられたら、初手が遅れるのも無理はないか。こちらはどう動くか……」

 おそらく大隊長さんだろう、大きな声を張り上げて兵士を鼓舞するとともに、指示を飛ばす。
 それを聞いて、エルサの魔法で驚いていたシュットラウルさんが正気に戻った。
 状況の分析をするのはいいんだけど……本来向こうの兵士さん達って侯爵領の兵士さん達だから、シュットラウルさんは俺達側ではなくて、向こう側のはずなんだけど。
 まぁ、俺達と一緒にいて見物しているから、感覚としてこちら側の気分なのかもしれない。

「よっ……と」
「ふむ、やはり兵士達の方の魔法は精度が低いな」

 遠くから落ちて来る魔法を、結界で防いだり剣で弾いたり、シュットラウルさんも同様に剣で軽く打ち払いながら、分析。
 大隊長さんの命令後、一気に動き出す兵士さん達……これまで、押し込まれそうになっていた状況を、壁の外側で耐えるようになっている。
 後方の兵士さん達、最重要の陣地を守っているんだろう、その人達から打ち上げられた魔法は、壁を挟んでいるという事もあってか命中率は高くない。
 俺が一人でやった演習の時程ではないけど、それでも数が多いから、モニカさん達の足止めになっていはいるようだ。

 アマリーラさんとリネルトさんは、そもそもあまり攻め込み過ぎず、あくまで主力はモニカさん達という事なんだろう、近くにきた兵士さんを薙ぎ払うだけに留まっている。
 結構広範囲に火の魔法や氷の魔法などが降り注いではいるけど、かなり接近しているため、モニカさん達には直接命中する事はほとんどなさそうだ……アーチ付近に降り注がせたら、味方に当たる可能性もあるので、どうしても少し離れた場所に落としてしまうからだろうね。
 ただ、それをわかっているから、兵士さん達の動きもモニカさん達を直接どうにかしよう、という感じではなく槍などリーチの長い武器を使って、魔法が多く着弾する地点に押し戻そうとしているようだ。
 中々、こちらも攻めきれないし、向こうも押し返せない攻防になっているね。

「うーん、味方が邪魔して直接魔法で狙えないみたいですから、仕方ないですね……」
「そうだな。初手が遅れたからだろう。本来なら、モニカ殿達やアマリーラ達が駆け込む前に魔法で足止めをするのがセオリーなんだが……」
「そうですよね。俺の時も、最初は魔法で来られましたから」

 距離が離れている時は、存分に魔法を撃てる……まぁ、それは軍同士ならお互いそうなんだけど。
 それを、今回は先にフィリーナとカイツさんが向こう側を牽制してくれたので、楽にモニカさん達が近付ける結果になったってだけの事だ。
 向こうも準備はしていたんだろうけど、先制で魔法を撃たれたうえに左右にアマリーラさんとリネルトさんが散って、対処が遅れたのも原因かな。
 混戦になってしまっては、遠くから直接魔法で援護するのは難しいか……。

「味方が魔法に当たる覚悟をさせるのは、駄目ですよね……?」
「それは味方の戦力も削ぐ結果になる。それに、そんな決死の覚悟を持たせるのは演習ではさせられんだろう、危険過ぎる」
「まぁ、そうですよね」

 こういった状況でどうやって魔法を使って援護するかを考えて、シュットラウルさんに聞く。
 味方のはずの人から撃たれた魔法が当たる……後ろから撃たれるようなものだから、それはできないか。
 本当に魔物とかが押し寄せて来て、命を懸けて守らなけらばという状況ならともかくだ、演習でそれをやるのはシュットラウルさんの言う通り危険過ぎる。
 無防備の背後から魔法が当たれば隙だらけになるし、威力が高い魔法だったら鎧を破壊して大きな怪我もしてしまうからね。
 衝撃だってあるだろうし……。

「数人程、状況を見てどこに魔法を放つか指示を出す人って、選出できませんか?」
「ふむ……それはつまり、その選出した者の指示通りに魔法を撃つという事だな?」


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...