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シュットラウルさんと合流
しおりを挟む「おぉ、リク殿。来てくれたか!」
「アマリーラ様が報告に行ったので、すぐ来てくれると思っていましたぁ」
部屋の中では、シュットラウルさんとリネルトさん……それから執事さんや侯爵軍の大隊長さん、その他にも数人が揃っていた。
迫る魔物達に関しての相談を始めるところだったっぽい。
シュットラウルさんも含めて、立ったままなのは事の深刻さを表しているように思えた……シュットラウルさんの後ろに、椅子が倒れているし。
多分、リネルトさんの報告を受けて驚いて立ち上がり、椅子が倒れたとかだろう。
「む、アマリーラも共に来ると思っていたが?」
俺に報告して、そのまま一緒にここまで来ると考えていたようで、シュットラウルさんが俺の後ろなどを見ながら首を傾げた。
「アマリーラさんには、俺からお願いして動いてもらっています。すみません、本来ならシュットラウルさんに話を通してからが正しいんですけど……」
「いや、構わん。リク殿がその方がいいと考えての事だろう。今は、少しでも早く動かなければならんからな。既に手遅れになっているようでもあるが……」
事後承諾になってしまったけど、予想通りシュットラウルさんは気にせず頷いてくれた。
まぁ、必ず自分を通せとか、細かい事を言うような人じゃないからね。
「それでも、ワイバーンで空から魔物達の確認ができて良かったと思っています」
「うむ。早期発見に繋がり、こうして後手に回らぬよう集まる事ができたのは、リク殿のおかげだからな」
「もしワイバーンがいなければ、空からの監視ができなければ……魔物に気付くのは、すでに手遅れになった後だったと思われます。その際には、兵士達も気が緩んでいたやもしれません」
もしまだ何も知らないままだたら……今いる魔物を掃討する途中、最悪の想定をするなら勝利を確信したタイミングや、勝利後の一番気が緩んだ状況で、アマリーラさん達が発見した魔物が押し寄せる事になってしまう。
そうなってしまうと何も対処できないまま、気が緩んだ兵士さん達は戦いもままならず、蹂躙されてしまっていたかもしれない。
やっぱり、上空監視は有効だね。
「しかし……魔物達のいる向こう側から、さらに別の強力な魔物を大量にとは。こちらにギリギリまで悟らせないようにしていたのだろうな」
「そう考えられます。全部が全部とは言い切れませんが、これまでの魔物達は目隠しの意味もあったのかと……」
地上からや、外壁からだと今も戦闘中の魔物が邪魔になって、あまり遠くまで見渡せない。
だから今回アマリーラさん達がワイバーンに乗って発見できたのは、向こうにとっては想定外だったのかもしれないね。
「報告ではヒュドラーが三体……か。他にもいるようだが、ヒュドラー一体だけでも街に近付けば多大な被害が出る事を覚悟せねばならん」
「今は、少しでも早く発見した事で、こうして対策を練られる事を喜んだ方が良さそうですね」
ヒュドラーは基本的に、準備を整えて数百人単位の人を犠牲にする覚悟で挑んで、ようやく倒せるといったくらいの魔物らしい。
いきなり街の付近に現れたら、戦う人以外にも多くの犠牲が出るのは必至だろう。
まぁ、急に襲われるよりも、こうして話をする余裕があるだけ良かったと思うべきか……。
「うむ。だが、早く発見できたからと言って、なんとかできるような戦力ではないのだがな……センテにいる者達は疲れ切っている。王軍はまだマシだろうが、それでも王都からここまで移動してきた疲れもあるだろう。いや、ヒュドラーや大型の魔物が大量にいるというだけで、疲れだなんだというのはあまり関係ないな」
「……全貌は把握できていませんが、私やアマリーラ様が見ただけでも今この街にいる兵士、冒険者を総動員しても蹂躙されるのは間違いない……と断言できますねぇ」
顔をしかめて悩んでいるシュットラウルさんに、リネルトさんがいつもののんびりとした口調で事実を突きつける。
あくまで、現状を踏まえての事実の確認なんだろう。
けど、のんびりとした口調でありながら、その声音はいつもより低く深刻な様子が伝わって来る。
よく見てみると、リネルトさんの佇まいはいつもと変わらない様子なんだけど、足が震えており細い牛のような尻尾を挟んでいる。
アマリーラさんのように戸惑って取り乱したりする事はなくても、不安がって恐怖も感じているんだろうね。
まぁ、Sランクと言われる災害級の魔物が複数、さらに強力な魔物が大量にいるのを見たのだから、当然と言えば当然か。
「かと言って、街の者達を全て避難させるような猶予もない。そもそも、ここが最前線だ。逃げればヘルサルも巻き込まれる」
ここから近いヘルサルは、魔物が押し寄せてセンテが破壊しつくされた後は、次の標的になるだろう。
それに、ヘルサルからの応援もいまセンテに来ている状態で……ここで食い止められない場合は、ヘルサルすら放棄せざるを得なくなる。
「ですがそれでも、助けられる命は助けるべきです」
「わかっている。マルクス殿と相談する必要はあるが……王軍と協力して、なんとか猶予を得られるよう考えねばな。全ての民が失われるのは、今後数年……いや数十年に及ぶ国の損失となろう。リク殿……」
「はい」
リネルトさんに頷き、苦虫を噛み潰したような表情で唸るように言うシュットラウルさん。
そのままの表情で、向き直って正面から俺を見据えて呼んだ。
表情がそのままなのは、状況的に仕方ない事だと思う。
「以前、リク殿に頼り過ぎになるのは……と私から言っておいて申し訳ない。だが、そうも言っていられない状況になった。すまないが……」
「はい、わかっています。俺も協力……いえ、全力で魔物と戦うつもりです。そのために、ここに来たんですから」
「すまない、助かる」
「いえ、ここ数日でシュットラウルさんが考えていた事も、なんとなく実感していましたから」
兵士さん達や冒険者さんといった、実際に戦っている人達はまだしも、戻りつつある街の人達のほとんどは俺がいるから大丈夫……という考えの人が多かった。
実際、俺がやって来た事の影響の大きさはある程度自覚して来ているけど、それでもシュットラウルさんが言うように頼りきりになってしまう、という考えが少しはわかるようになっている。
「リク殿がいれば、なんとか民を避難させる猶予はできるか……」
「あ、いえ、シュットラウルさん。最低限で非難する猶予を稼ぐ……です」
「最低限、とな?」
俺が戦いに参加する事で、時間稼ぎができると少しだけ安心した様子のシュットラウルさん。
だけど、俺が考えているのはそうじゃなくて……時間稼ぎじゃなくて、できれば被害を少なく、それでいて魔物を倒し切ってしまいたい、という考えだ。
「もちろん、避難は優先的にして戦闘に巻き込まれないようにする必要はあります。ですけど俺は、魔物を殲滅できればと考えています」
時間稼ぎが目的ではなく、絶望的な状況ではない事を伝えるために、考えている事をシュットラウルさんに伝えた――。
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