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魔物を殲滅して街に戻る

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 燃え盛る炎を鎮火するために、巨大な氷から解けて水になったのがぶちまけられたわけだけど……エルサの心配している通り、地面はかなりぬかるんでいると思う。
 けどリザードマンとかのように、沼地が棲家の魔物は別として、全ての魔物がぬかるんでいる地面で動きやすいわけじゃない。
 少しでも動きを鈍らせる効果もあるかな? と思ったのも水を使った理由だね。
 地面がぬかるむだけなら、環境的な影響も少ないし。

「……本当に、リクにしてはよく考えているのだわ。驚きなのだわ」
「失礼な。俺はいつもよく考えているってば。ただちょっと、状況が合わなかったり想像よりも威力が高かったりするだけだって」
「それが、失敗に繋がっているのだわ」

 失礼な事を言うエルサに、心外とばかりに言い返すけど、確かに威力が高すぎたり状況に合わないからこそ、失敗に繋がっているの自覚している。
 今回は失敗と言える事はない……はず、今のところは。
 だけど、撒き散らされた炎が思っていたよりも勢いよく燃え盛っていたり、氷が解けるのが遅かったりはしたけど……。
 やっぱり、もう少しイメージと魔力の使い方は慣れた方がいいかもしれない。

「さすがリク様です。ただただ圧巻の一言に尽きます」
「いやぁ……でもアマリーラさんは、南側の魔物達をスピリット達が一掃するのを見ていたから、慣れているんじゃない?」

 エルサと話していると、ワイバーンからアマリーラさんが降りてきた。
 俺を褒める言葉以外にも、尻尾が勢いよく振られているから、喜んでいるんだろうと思う。

「確かにあの時は私も見ていました。ですが、あちらはスピリット……精霊様が協力して成し得た事です。リク様はお一人で成された。やはり獣神様では?」
「いやいやいや、違いますから。俺は尻尾もないし耳は……他の人間と同じ物しかありませんよ」

 獣神様って言われたら、アマリーラさん達のような獣人さん達のように、人間とは違う尻尾や耳があるんだろうなと思う。
 けど俺には付いていないし、そもそも神様でもない。
 知り合いの神様には、よく驚かれているけども。

「それよりも、空から確認していたと思いますけど、魔物達は? ここから見る限り、動くような何かは見えませんけど」

 俺への称賛とかよりも、魔物を一掃できたのかの確認の方が重要だ。
 地上から見る限りじゃ生きている魔物はいなさそうだけど、上空からも確認して確実にしたい。

「完全に殲滅しているのを確認しました! お見事です、リク様!」
「そうですか、良かった。それじゃこれで、俺の役目は終わりですね」

 ちゃんと殲滅できていたようで、ホッと一息といったところだ。
 後ろの方で、アマリーラさんの報告が聞こえたのか、兵士さん達がワッ! と沸き上がる声を上げるのが聞こえた。
 また別の魔物が迫っているけど、でもずっと長い間戦っていた魔物がいなくなったんだ、感動はひとしおだろう。

「はい。この後はお任せ下さい」
「あまり近付かないようにしてくださいね? ワイバーンに乗っているからと言っても、危険ですから」
「はっ!」

 アマリーラさんはこの後もまだ役目がある。
 ワイバーンに乗って、上空からの偵察だ……他にも貸し出したワイバーンに乗る兵士さんも一緒だけど。
 ただ、これまでの魔物と違い魔法を使う魔物もいるようなので、空からであっても近付き過ぎるのは危険だ。
 アマリーラさんなら承知してくれていると思うけど、あまり近付き過ぎて危険な目に遭うのは、避けて欲しい。

 ちなみにリネルトさんは、ワイバーンを使って街を行ったり来たりの伝令役をやっている。
 伝令ワイバーンと偵察ワイバーンか……それだけでも、味方になってくれて良かったと思う。

「さて、それじゃ俺達は一旦戻って……」
「ワイバーン達とも話しておかなきゃなのだわ?」
「そうだね。宿を出る時、簡単にボスワイバーンには伝えておいたけど、ちゃんと話さないと」

 踵を返し、石壁へと戻りながらエルサと話す。
 ボスワイバーンには、今朝こちらに来る前に大きな戦いがあるから協力して欲しいと伝えたし、頷いて承諾してくれた。
 けど、どういう風に戦うかとかの詳細も話さないといけないし、戦う相手とかワイバーン達の意思も確認しなきゃいけないからね。
 とりあえず、そろそろエルサがお腹空いたって言いそうだし、昼食の事も考えないと……なんて思いつつ、センテへと戻った――。


「それじゃ、戦うのは構わないんだ?」

 宿に戻り、宿の庭で昼食を食べながらボスワイバーンに、戦いについてのお願い。
 エルサに頼んで通訳してもらって会話しているけど、そのエルサはキューに夢中だ……まぁ、話自体は俺とボスワイバーンでするからいいんだけど。

「ワレワレ、ハ、タタカイヲコノム、デス。リクガタタカエ、トメイジルナラワレワレハ、ヨロコンデタタカウ、マス」
「命令よりも、お願いなんだけど……」

 ボスワイバーンは戦う事自体に忌避感はなくて、簡単に承諾してくれたんだけど……命令って言う程強制する気はない。
 けどまぁ、ワイバーン達がそれでいいというのなら、今はとりあえず命令って事にしておこう。
 命令とお願いの違いをなんだかんだと言っている時間もないからね。
 というかワイバーン達、結構のんびりした性格のように見えたけど、戦いを好んでいるんだ……魔物としての本能みたいなもののせいかもしれないけど。

「リク様、私から一つ提案があるのですが……」
「カイツさん、なんですか?」

 ボスワイバーンの承諾を得て、一応他のワイバーン達にも確認する事にして俺も昼食を食べ始めた。
 そんな俺に、カイツさんから何やら提案があるとの事……カイツさんとフィリーナには、既にある程度の事は話してあって、マックスさん達魔法鎧隊の後方支援をする事が決まっていたんだけど。

「ワイバーンの皮を私が採取しておりましたが……それを使えないかと」
「ワイバーンの? 確かに、かなりの量を取っていましたけど、間に合わないんじゃないですか?」

 カイツさんによる実験、というかワイバーンの趣味の影響でかなりの量の皮が取れている。
 昨日見せてもらった時は、抱える程の大きさがある木箱が十個以上になっていたくらいだ……大まかにだけど、数十体のワイバーン分の皮素材になっていると、フィリーナが教えてくれた。
 ただ、そのワイバーンの皮……ちゃんと加工して鎧などにすれば硬くて熱に強い者が作れるけど、そのための時間がもうない。

 遅くても明日の夕方くらいには、ヒュドラーが石壁付近に迫る予想だから。
 ワイバーンの皮の加工……俺は詳しくないけど、一日二日でできる物じゃないはずだし、それこそ鎧を作る事自体数日で完成する作業じゃないはず。
 
「真っ当に加工すれば、確かに間に合いませんが……ワイバーンの皮をそのまま張り付ける程度なら、可能でしょう。そうするだけで、多少の耐熱効果と耐刃効果が得られるはずです」
「貼り付ける……まぁそれくらいなら、すぐにできるとは思います。けど、兵士さん達に行き渡らせるには、相当な作業量になりますしやっぱり間に合わないんじゃ……?」

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