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リクの攻勢
しおりを挟む「よし……っと、多重結界!」
意気込み、動き回りながらもヒュドラーからの攻撃を結界で防ぐ。
まだだ……ヒュドラーの攻撃が止む瞬間、そこを狙わないと……
数回、エアソードとヒュドラーのブレスがかち合った時、エアソードは火炎ブレスも含めてヒュドラーのあらゆる攻撃を斬り裂いて突き進んだけど、その際の威力は減衰していた。
圧縮した空気の刃、その形が歪んでしまったんだろう。
ヒュドラーの攻撃の威力を受けてなのか、魔力的な干渉のせいなのかはわからないけど、エアソードは二つから三つの首を斬り落とすくらいしかできなかった。
考えている計画を実行して、確実に止めを刺すためには最初に放った時のように、六つの首は斬らなければならない。
できれば、七つだけど……空気を圧縮しているせいなのか、変換させた魔力がヒュドラーに当たって減衰し始めると、途端に威力が落ちるようで期待はできない。
ギリギリ六つの首を斬ったくらいで、圧縮した空気を維持できなくなる……って考えて良さそうだ。
「一応、保険になれればって考えているけど……これはもしもの時に限るし、そんな事は起こって欲しくないけど……っ!」
妨害されなければ、五つの首は確実……六つの首を斬り落とせなかった場合の動きも、一応考えている。
六つの首が斬り落とせた時に、実行すればとも考えたけど……これで決めないと、そろそろ周囲の状況が動き始めているようだ。
開戦直後は、定期的に飛来していた援護の矢は来なくなっている、矢がなくなったのかもしれないし、抜けて行った魔物の対処で一斉に弓矢を打てない状況なのかも。
モニカさん達は、ある程度の魔物を倒してはいたようだけど、後から後から迫る魔物に押されて、最初の頃は振り向けば微かに見える位置にいたのに、今は見えない……距離が離れた事と、魔物が間に入り込んでいるせいでもあるんだけどね。
とにかく、ヒュドラーと戦っていられる猶予はもうほとんどない……何度も、そして色んな方法を試していられる状況でもないので、ここで決めないといけないわけだ。
そのため、確実性を上げるために少しだけ機会を窺う。
いや、機会はずっと窺っていたけど……ようやく倒せそうな案が浮かんだんだ。
「……まだ。まだ……今だ!」
結界を張り、もしくは動き回って避け、攻撃をするのに一番効率的な位置取りを探り、耐え、機会を窺い、ついにその時が来た!
ヒュドラーの首がほとんど同じ軸で並び、俺のいる位置もほぼ真横……絶好の機会だ!
「コンプレスエアソード! っ! 結界!」
イメージを崩さないよう、魔法名を省略せず確実に発動させる。
この時のために、ずっと発動直前の状態で待機させていた。
エアソードが発動されて九首側に向かうのと同時、俺もヒュドラーの首を狙って飛び上る!
さらに、中空に結界を地面に平行になるように発動……結界はもう使い慣れ過ぎていて、適当にイメージするだけで発動するから、本当に便利だ。
「ギャギ!?」
「ギギュ……!」
「ギー……!?」
「よし、狙い通り六つの首を斬り落とした……! 後は俺自身が!」
先にヒュドラーへと迫ったエアソードは当初の狙い通り、九首から六つの首を斬り落とした。
ただ五首だけは、守るために遮った四首と三首によって邪魔された……おそらく、俺が何度もエアソードを使っていたから、ヒュドラー自身がどういう攻撃か理解してしまったんだろう。
確実に斬り取られるのなら、他の首を犠牲にして五首を守ろうとしたのだと思われる。
できれば、一番堅い五首はエアソードで斬り落としたかったけど……できなかったのは仕方ない。
一応狙いは達成されたのだから、後は俺の動き次第。
飛び上がっていた俺は、斬り離され、地面に落ちていく六つの首の横をすり抜け、中空に発生させていた結界の上に乗る。
反撃をするためだろう、残っている三つの首、その顎を俺に向けるヒュドラーに対し、エアソード発動直後から開始していた集中をさらに深くする。
少しの間……残っている首の口から、それぞれの攻撃が吐き出される……。
「よし、間に合った! 魔力弾!!」
広く地面に平行に張った結界の上を駆けて、良さそうな位置を発見。
その瞬間放った俺の魔力弾は、一首の酸、二首の氷を突き抜ける!
「グギ!?」
「フシュ……!」
それは、エアソード発動直後からずっと溜めていた体内の魔力の放出。
時間がなかったので、ただ直進するだけの威力が低いものだけど……ついでに俺が今乗っている結界にも魔力が使われたからね。
それでも十分に二つの首を貫通して突き抜けて、胴体と切り離される二首、一首はそのまま地面へ……。
直進する魔力弾、これを二つの首に当てるためにヒュドラーの首の位置を気にする必要があったんだ。
できるだけ軸を同じに、横並びになるのを待っていたってわけだ。
結界に乗った俺に攻撃する際、少し動いたけど……俺の方が移動して軸が合って良かった。
わりと賭けだった部分が大きいね、まぁ、駄目だったら別の手を考えてはいたけど……五首以外なら、なんとかなっていたと思う。
それはともかく……。
「っ!」
魔力弾を放った俺に迫る氷の槍、それを左手で打ち払って残他五首を見据える……左手がちょっと痛かったけど、そんな痛みに構っている暇はない!
「残るは五首、やるしかない!……多重結界! くぉのぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ギャギャギャギャ!!」
二人分くらいの大きさの結界を、五首に向かって直進するようにして、発動。
剣を構えながらその結界を追いかけ、俺も足場の結界を離れる。
残ったヒュドラーは、再生するまでに五首が斬られれば終わりだとわかっているためか、これまで以上に必死の反撃。
速度の遅い溶岩を吐き出し、さらに後ろから岩石を追加……同時に当たって威力を増すためなんだろう。
結界に当たって弾かれる溶岩と岩石。
溶岩が弾けた空間を結界と共に通過……熱が残っているため、肌が少し火傷するような熱さに見舞われたけど、痛みも含めて全て無視。
さらに襲い掛かる腐食毒と酸……これは結界を盾にする事で直接触れないようにする。
飛び散った腐食毒や酸が、突き抜ける俺の服や肌に少しだけ触れて融かす。
「つぅ……」
溶岩の熱よりもさらに強い熱さと痛みに、顔をしかめる。
けど、でもそんな事で止まっているわけにはいかない! というか、もう足場の結界を蹴って動き出しているから、止まれない!
いくつかの結界が壊れたけど、そっちもまだまだ!
「ギャギー! ギャギャギャ!!」
苦し紛れか、氷の塊を飛ばす五首……向こうも焦っているんだろう、単なる塊でやり槍や矢の形にすらなっていない。
しかもその直後に、火炎ブレスをばら撒いた。
結界に防がれる氷の塊、次いで襲い掛かる火炎に氷は融け、中空に広がる火炎ブレスの中を結界を盾にして突き進む。
氷の塊がぶつかり、火炎に晒されて腐食毒や酸に浸食されていた結界は、ほとんどが破壊。
残り一枚……火炎の勢いに、結界と俺の勢いが相殺されるのを感じながらも、そして溶岩を弾いた後以上の熱を感じながらも、火の海を突き進む……!
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