1,277 / 1,955
剣のおかげでこちらのヒュドラーもあっさり撃破
しおりを挟む剣を突き刺し、暴れ回るヒュドラーは周囲の魔物を巻き込む……というより踏み潰す。
結果的に、最初に少しだけガルグイユなどからの魔法攻撃を受けただけで、途中からは俺に対してだけでなく、マックスさん達の方にも一切攻撃が行く事はなくなった。
……このまま、ヒュドラーを暴れさせて同士討ちみたいな事をさせれば……なんて一瞬だけ頭に浮かんだけど、魔力吸収している今だからそうなっているだけだし、無理かと考えを振り払った。
突き刺した剣が抜けたら、またセンテ側に向かって進行し始めるし、守ろうとする人達を攻撃するだろうからね。
「……ふぅ。よし……多重結界! これで、しばらく大丈夫だね」
ヒュドラーが力尽き、地面に体を横たえて剣を抜く。
ピクリとも動かなくなったヒュドラーと、巻き込まれなかった魔物達とを隔絶するよう多重結界を張る。
これでしばらくは、中央に魔物達が進行するのも押し留めていられるだろう。
そう思いながらヒュドラーの首を一つ斬り取り、再生されるような事がないのを確認して、剣を収めた……全部の首を斬り取るよりも、先に元ギルドマスターの治療をしないと。
「マックスさん、終わりました」
「あ、あぁ……そのようだな」
「本当に、私達だけでなく、ミスリルの矢の攻撃……いや、砲撃を受けても倒す事が敵わないヒュドラーを、一瞬で……」
「北側のヒュドラーを倒して来ているのだから、リク様にならできるとは思っていたが……これ程たやすくというのは想像していなかったな」
マックスさん達のいる所へ戻り、簡潔に報告。
魔法鎧は顔も全て覆われているから、三人の表情はわからないけど……驚いているような声、かな。
それと、俺がヒュドラーに向かった時とまったく同じ格好だったので、ずっと固まっていたのかもしれない。
まぁ、全部輝く剣の魔力吸収能力のおかげなんだけどね。
「俺というよりも、この剣が活躍してくれているおかげですよ」
「……ヒュドラーすら、魔力を吸い取りきる剣というところか。恐ろしいな」
簡単にヒュドラーやレムレースを倒せたのは、剣に寄る所が大きい。
そりゃ、ここのヒュドラーは首が六つだったから……最初から全力でエアソードを使えば、一気に全ての首を狩れたのかもしれないけど。
あと、エアソードだけじゃだめでも、魔力弾と剣を組み合わせれば九つあった最初のヒュドラーより、時間がかからず倒せただろうけどね。
「だがまぁ、その剣が凄い事は認めるが……よくわからん効果を発揮しているからな。それでも、リク様でなければあぁもあっさりはいかなかっただろう」
「私達でしたら、ヒュドラーが暴れ回っただけで振りほどかれそうですね」
「それに、途中からはともかく最初の頃にガルグイユなどからの魔法攻撃もだな」
元ギルドマスター、ヤンさん、マックスさんと、剣だけでなく俺だから……というような事を言っている。
確かに、途中足場用の結界があったから剣から手を離さないようにできたし、ずっと振り回され続けていたら振りほどかれるかもしれないからね。
ガルグイユとかの魔法もそうだし……なんて、以前なら謙遜していただろうけど、今はそこまで過剰に自分の力なんてと卑下はしない。
素直に、マックスさん達が称賛する声を受け止める。
ただ、偉そうにしたり自分以外を下に見るような傲慢な考えにはならないよう、気を付けないとね……。
「あ、そういえばミスリルの矢の砲撃ってのは? あ、元ギルドマスター、ちょっと失礼します」
「え、あ、あぁ……」
とはいえ、まだ悠長に話している時間が多いわけではないので、元ギルドマスターの治療をするために近付きながら、ヤンさんの言葉でちょっと気になった部分を聞いてみる。
称賛が嬉しくないとは言わないけど、ずっとそればっかりってのもね。
それはともかく……ミスリルの矢ってのは、俺が土を固めて作った石の矢だ……石の矢というには、硬すぎてちょっとおかしな事になっちゃったけど……ロジーナがミスリルの矢と命名するくらいには。
その砲撃っていうのは見ていないので、どういう物なのか気になる。
「ミスリルの矢は、リクさんが作った物ですが……あ、ほら丁度あんな風に」
「ヒーリング……よし、元ギルドマスターの治療できました。えっと……あぁ、成る程」
元ギルドマスターを魔法で治癒している俺に、頭上を指し示すヤンさん……小手に付いて魔力を纏っている剣が、ちょうど示すのに役に立っているね、本来の使い方とは違うけど。
空には、エルサの魔法でだろう、とんでもない速度で射出されたミスリルの矢と思われる物が、魔物の方へ向かって飛んで行った。
成る程、砲撃ね……一つの威力が弾丸どころか、大砲みたいなものになっているから砲撃と言って差支えなさそうだ。
「あ、ありがとう……ございます? ふ、不思議なものだ、話しには聞いていたが本当に一瞬で全身の傷が治っている」
「致命傷すら、場合によっては治療できるみたいだからなぁ……」
魔法で治癒を終え、一番深い怪我だった左腕を動かしながら体の調子を確かめる元ギルドマスター。
マックスさんから何やら話しかけられているけど……元ギルドマスター、治癒する時にわかったけどわりと致命傷に近い負傷をしていたんだよね。
本人は隠していたのかもしれないし、気付いていなかったのかもしれないけど……あれで立って動けていたのは、元ギルドマスターの気力がすごいのかそれとも、魔法鎧の効果か……。
「……あ」
そんな事を考えているうちに、ミスリルの矢の砲撃が魔物達へと降り注……がなかった。
俺が張っていた多重結界に阻まれて、全て弾けて消えた。
というか、元の土に戻っていった、が正しいかな?
ちなみに多重結界は、半分以上割れているから……少なくとも数十のミスリルの矢で、ヒュドラーの一斉攻撃よりは威力があるようだ。
「なんだ? 途中で弾けたように見えたが?」
「私にもそう見えました。あれは……リクさんの結界に、何かがぶつかった時に似ていますね」
魔法鎧があるので表情はわからないけど、訝し気な声を出すマックスさんとヤンさん。
ヤンさんの指摘がそのものずばり、俺の結界にぶつかったからなんだけどね。
「いやー、あははは……魔物を寄せ付けないように、俺が結界を張っていたんですよ。どうやらそれに当たったみたいで……」
「そういう事か。だから、先程から魔物達がこちらに来ないうえ、魔法攻撃すらなかったのだな」
左手で後頭部をポリポリとかきながら、苦笑しつつ種明かし……もなにも、ヤンさんが言い当てているんだけど。
腕を組み、呆れ混じりに呟くマックスさん。
多重結界は、撃ち上げてこちらに降り注がせる魔法の使い方をされても大丈夫なように、かなりの高さまで張ってある。
さっき、ヒュドラーの体を越えるように使われていたからね。
だから、俺達からすると結構な高度で放たれたミスリルの矢だけど、結界にぶつかってしまったと。
ミスリルの矢と、エルサの魔法、兵士さん達が投げる労力全てを無駄にしてしまった……申し訳ない――。
0
あなたにおすすめの小説
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる