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エルサには大体の事が伝わってしまう
しおりを挟む「……やっぱり違うのだわ。そういえば昨日、寝ている時に妙な感じだったような……? あ、モニカが来たのだわ」
「寝ている時って……えっと、うん。エルサがドライヤーもどきで寝始めたくらいに、モニカさんが訪ねてきたよ」
ほとんど寝ていたと思ったけど、モニカさんが来た事くらいは記憶にあるようだ。
というか、寝ていて妙な感じとは一体……?
「んー……だわ。だわだわ、成る程だわ」
「だわが多いな……」
何やら、俺の頭にくっ付いたままで考え込んだと思ったら、納得した様子で声を出すエルサ。
だわだわっていうのは、もしかしてふむふむと言いたかったのだろうか?
「リクから流れてくる記憶があったのだわ。詳細はわからないけどだわ、昨夜のリクに何があったのか、少しはわかったのだわ。はぁ、ようやくなのだわ……」
「ようやくって……というか、寝ている間の事でもわかるのか」
契約で流れて行ってしまう記憶とかは、俺にはどうしようもない。
止めようと思えばもしかしたらできるのかもしれないけど、エルサに対して隠し事をする気もないからね、別に流れたからって俺から記憶が失われるわけでもないし……恥ずかしさはあるけども。
とにかくエルサに話を聞いてみると、寝ている間の事。
つまり昨夜モニカさんと二人で話していた内容や、俺の感情だとかが、はっきりとや全てではないけどエルサにはわかったらしい。
特に、俺の激しい鼓動とか想い、誓約のような約束などは深く記憶に刻まれているから、エルサにもわかってしまったんだとか。
そしてそれが緊張やら何やらがない交ぜになって、限界にまで達した時、多くが寝ているエルサに対して一気に流れ込んだのだと。
これまでなかったはずの、エルサの寝言や行動、体を起こしていたのはその影響でエルサ自身は夢の中での事だと感じていたみたいだ。
……あの時、俺とモニカさんを驚かせたのは記憶や感情が流れたのが原因だったのか。
謎とも言えない疑問が解けたけど……エルサはキューとか言っていたような?
寝言というか叫びの内容は、俺とは関係なさそうだったんだけどな。
エルサの深層心理で求めていたから咄嗟に出た、とかかもしれないけど。
もしあれがなかったらあの時俺はモニカさんと……恥ずかしさを我慢して考えると、邪魔をされてエルサを恨む気持ちと、むしろ助かったと思う気持ちの相反する二つの感情が湧き上がる。
でも、決定的な言葉を二人とも言っていない状況で、雰囲気だとかに流されなくて良かったかもしれない、とも思うから心の中だけで感謝しておこう。
悔しくもあるから、口にして伝えないけどね……エルサにはもしかしたら、これも伝わっているのかもしれないけど。
ともあれ、詳細まではエルサに伝わっていないながらも、ある程度察した様子でちょっとしたからかいを受けながら、部屋を出て食堂へ向かった。
何度もエルサが言っていた、ようやくだとか気付くのが遅すぎるだとかは、昨夜意識をする事でわかるようになっていたから、俺には反論できないし甘んじて言われ続けるしかない。
随分と、モニカさんには苦労を掛けていたみたいだからね――。
「あ、リクがやっと起きて来たの! お寝坊さんなのー!」
「昨日から、ほとんど一日寝ていた私やユノが言う事じゃないわね……」
「あぁ、ユノ、ロジーナ。おはよう」
食堂に入ると、真っ先にユノが反応してくれて、ロジーナが溜め息を吐くように突っ込んだ。
中にはモニカさんやユノ、ロジーナだけでなくソフィーやフィリーナ、フィネさんもいるいつものメンバーが揃っていた。
シュットラウルさんは忙しくて、この食堂に来る余裕はないだろうし、ロジーナはいつもという程一緒にいたわけではないけどね。
あと、カイツさんは……多分ワイバーンの所だろうなぁ。
それはともかく、元気なユノの声を聞き明るい表情を見て、ホッと一安心。
意識を取り戻してから、ずっと寝ているのを見ているからエルサから大丈夫と言われていても、やっぱり心のどこかで心配していたんだろうね。
あと、その無邪気な笑顔を見るのが、なんだか懐かしい気がするのは俺に意識があったかはともかくとして、実際に十日以上も離れていたからだと思う。
「ユノもロジーナも、元気そうで何よりだよ」
「うん。元気なの!」
「まぁ、しばらく魔法とかは使えないでしょうけどね」
料理が並べられているテーブルにつきながら、元気な様子のユノ達に声を掛ける。
ユノは溌剌とした笑顔で、ロジーナはやや不満そうに顔を背けて答えた。
俺が意識を飲み込まれている時、凄く頑張ってくれたらしいけど、特に問題ないようで良かった……って、ん?
「魔法って、ロジーナは元々魔法を使っていなかったと思うけど?」
調べてみれば、魔力はあるんだと思う。
人間とほぼ同じ体という事は、人間と同じく魔力があるわけで……この世界、どういう理屈か俺にはわからないけど、生き物は基本的に全て魔力を持っていて、なければ生きられない。
人や魔物を含む動物だけでなく、草木などの植物でも魔力はあるくらいだからね。
でも、魔法はユノもロジーナも使っているようには見えなかった。
武器を持っているもっていないにかかわらず、尋常じゃない強さだったし他の人が真似できないような事もやってのけていたから、それが魔法と言われれば妙に納得してしまいそうではあるけど。
ただ、人間やエルフ、俺みたいなドラゴンの魔法といったものは使っていなかったはず。
あれ? そういえばユノがこちらの世界に現れた時、『まだ』使えないみたいな事を言っていたような……?
「もう少しで使えそうだったの。体も馴染んで、魔力も行き渡っていたの。でも……」
「リクがあんなものを呼び出すから……私とユノで、無理矢理こじ開ける必要があったんじゃない」
あんなもの、というのは緑の光……植物の事だろう。
俺の力を使う事で、どれだけ傷付けてもすぐに再生して内部に入れないらしく、そのためにユノとロジーナが協力してくれたんだとモニカさん達から聞いた。
あれが原因で、魔法を使えなくなったって何をしたんだろう? 俺は直接見ていないからわからないけど……意識を取り戻した時、周囲を綺麗な光の粒子が舞っていたのだけは覚えている。
じっくり調べられなかったけど、あれは凄く密度の高い魔力のようで、別の何かのような感じがした。
「そういえばあの時、しばらく動けなくなるみたいな事を言っていたような? ユノちゃんとロジーナちゃんが、協力して綺麗な光に圧倒されたけど。それと何か関係あるの?」
「関係どころか、あれが原因よ」
「私一人じゃ無理だったから、不本意ながらロジーナと協力したの」
「不本意なのは私も同じよ……まったく、どうして私がユノとあんな事を……手を繋いで、声を合わせて詠わないといけないなんて」
「あぁしないと力を繋げられなかったの、仕方ないの」
モニカさんのふと思いだしたような疑問に、ユノとロジーナが不満そうに答える。
やっぱり、表面上はユノもロジーナも仲が悪いのは相変わらずみたいだね……それでも、協力して助けてくれた事は嬉しいな――。
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