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冒険者移送開始
しおりを挟む「むぅ、確かに今なら……」
「侯爵様は今回だけですが、王城などで見てきた私としましては、エルサ様の意見がよくわかります」
「えっと……?」
エルサの言葉に、深く納得している様子のシュットラウルさんとマルクスさん。
そりゃまぁ、王城に魔物が押し寄せた時はには、城下町とをつなぐ橋に結構な傷をつけたけどさぁ……橋を落としたりはしていないから、全然マシな部類だと思うんだ。
……何かがある前提で考えている俺も、自分の事ながら悪い方向への信頼だなと思ってしまうけど。
「と、とにかく、俺も協力するのはいいとして、アイシクルアイネウムの方はどうするんだ? 空から見ないとどこにいるかわからないし……」
あと、エルサが言っていた魔法が使えない状態での戦闘、というのに慣れる意味もあるのは理解した。
強力な魔物がいないのなら、練習とか訓練に適しているのも確かだ。
「それは、他のに任せればいいのだわ。リクがいなくても問題なく対処できるようになっているのだわ」
だいぶ慣れてきたアイシクルアイネウムへの対処、兵士さん達に任せても大量に出て来るとかでない限り、問題ないのはエルサの言う通りか。
ずっと森の魔物と戦い続ける、というわけでもなし……数日任せるくらいなら問題なさそうだ。
数も少なくなってきているからね。
「では、明日は準備期間とし、我々と冒険者ギルドとの折衝だな。移動するにしても冒険者たちも準備が必要だろう。リク殿とエルサ様には、二日後頑張ってもらう」
「はい、わかりました」
あーだこーだと話したけど、とにかく冒険者ギルドと相談して冒険者をヘルサルに派遣、または戻して森の魔物の大半の対処をしてもらう。
輸送にはエルサも加わり、ちょうどいいのでセンテでの解氷作業や空からの哨戒を休ませて、一日で終わらせると。
さらにその後は、俺も加わって森の魔物と戦う……この時ヘルサルに行くのはリーバーに乗ってだ、エルサはモニカさん達と一緒に解氷作業の手伝いだな。
せっかくエルサは、解氷作業の手伝いで大きくなったりせず、魔力を温存していたのにいいのかな? とはちょっと気になったけど、エルサ曰く。
「一日大きくなるのは問題ないくらい、魔力も回復したのだわ。それにそろそろ、思いっきり飛びたいのだわー」
との事だ。
まぁエルサにとっての、ストレス解消みたいなものなんだろう。
速度を出し過ぎても、運んでいる冒険者さん達が怖がってしまうので、思いっきりではなく程々に飛ぶようお願いしておいたけども――。
と、いうわけで二日後……シュットラウルさん達が冒険者ギルド、というかベリエスさんと交渉して、ヘルサルへ移動する冒険者さん達が決まり、センテを包む隔離結界の出入り口に集合してもらう。
話していたよりも、移動する冒険者の数が多くなったらしく約百二十人程度だそうだ。
森の魔物は大量にいるわけではなく、さらにエルサが以前空から探ったように強い魔物も確認されていないため、危険が少ないのが理由みたいだね。
あと、センテの復興支援などではなく、そろそろ外に出たいとか魔物と戦いたい、ヘルサルの方に知り合いや親しい人などが待っているなど、冒険者さんそれぞれの個別な事情もあるみたいだけど。
ともかく、冒険者ギルドの方で希望者を募ったら、シュットラウルさん達の予想より集まったって事だね。
センテの冒険者がかなり少なくなってしまうけど、現状危険はなくマルクスさんの王軍や、シュットラウスさんの侯爵軍などもいるため、手薄になる事もない。
ヘルサルとセンテが繋がり、以前のように行き来きが簡単にできるようになれば、また戻って来るだろうし。
「朝の部の人は別れて並んで下さい! くじに負けた人は、あちらのワイバーンへ! 勝った人はこちらです!!」
声を張り上げつつ、手を振りながら冒険者さんの誘導をしているのはモニカさん。
今日は解氷作業や、アイシクルアイネウム捜索も休みになったため、こちらを手伝ってくれている。
せっかくだから休んでも、と言ったんだけど俺やエルサが動くのに、何もしないではいられないとの事だった。
ちなみに、くじというのはエルサに乗る権利を得るための物で、ヘルサルに移動する冒険者さんのほとんどがせっかくだからドラゴンであるエルサに乗りたい、と希望したために急遽作った物。
まぁ、適当に俺が作ったあみだくじなんだけど……それにしても、大体の冒険者さんがエルサやワイバーンに乗れる事を喜んでいるのは、怖い知らずというべきなのか……まぁ危険はないけど。
ワイバーンに兵士さん達が乗って空を飛んでいたり、俺がエルサに乗っているのを何度も見ているから、かもしれないけど。
「朝の部はえっと……」
「計五十人だな。全員いるのを確認したぞ」
朝の部、朝食から昼食までの間に運ぶ人達、俺とエルサやモニカさん、さらにワイバーンの前に並んでいるんだけど、その数を数えようと思ったらソフィーが数えてくれていたようで、近くに来て教えてくれる。
ソフィーやフィネさんも、モニカさんと同じく手伝ってくれていて、モニカさんは俺と一緒にエルサに乗り、ソフィーとフィネさんはワイバーンに乗って皆を先導する役目だったりする。
まぁ、ワイバーンは何度もヘルサルに行っているから、先導する必要はあまりないんだけど、今回乗る人達が慣れていないからね。
エルサに乗る人達に対してのモニカさんも同様だ。
フィネさんはワイバーンに乗る人達を、並ばせている
ソフィーもフィネさんも、二人共今回の冒険者移送が終わると一旦ヘルサルに行く事になっている。
解氷作業より、魔物を一掃する方が役に立てるだろうからという事だ。
ソフィーの方は、センテでの活動は大丈夫かなと思ったけど、準備期間だった昨日のうちに鍛冶職人さん達とは話を付けているらしい。
「ありがとう、ソフィー。それにしても、移動する人より多い気がするんだけど……」
「焦らなくても、後で乗れるというのにな。移動する冒険者が集まっているようだ。他にも、危険はないから物見遊山の者達もいるな」
「そうなんだ。まぁ、目の前で飛んで行くのを見るのは、あまり多い機会じゃないから仕方ないのかな」
最初に移動する人達だけじゃなく、周囲には別の冒険者さん……昼以降に移動する人達も含めてとか、センテの住人と思われる人達も集まっている。
要は見物人だね、ちょっとしたイベントみたいになっているのは、まだまだ平常とは言えないセンテで娯楽に飢えていたのかもしれない。
そちらは、休みのはずの兵士さん達が整理してくれている。
しっかり休んで欲しいけど、こればっかりは仕方ないし解氷作業よりは楽だろうから、いいかな。
見に来ている人達皆おとなしくしてくれているし、兵士さん達への負担は少なそうなうえ、解氷作業よりも数は少ないみたいだからね。
「じゃ、そろそろ頼むよエルサ」
「わかったのだわー!」
頭にくっ付いたままのエルサに頼むと、意気込んで俺から離れる。
まぁ、ふわりと浮かんだくらいだけど。
そのままふよふよと俺達が見守る中、少し離れた場所に移動したエルサの体が発光し、大きくなっていった――。
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