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冒険者さん達をエルサに乗せる
しおりを挟む「ここまで大きくなるのも、久し振りかな? 翼は、まだ六枚なんだな」
「これでも本来よりも多いのだわ。でも早く前みたいに十枚になりたいのだわー」
大きくなったエルサは、日頃俺達を乗せる時よりさらに大きく、軽々とセンテの外壁を越えるくらいになった。
翼は最大で左右五枚ずつの計十枚だったけど、まだ魔力が満たされているわけではないためか、左右三枚ずつの六枚。
それでも、エルサ自身の魔力総量よりは多く回復しているようだ。
今更ながらに、エルサ本来の魔力よりも多い魔力量を保持していても大丈夫なんだろうか? 魔力貸与されたアンリさんみたいな事にならないか、少しだけ心配だ。
これまで大丈夫だったから、問題はなさそうだけど……。
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
「お、おっきい……」
「これが、ドラゴン様……」
「神々しさすら感じます……」
等々、エルサが大きくなった事で大きな歓声と何故か大きな拍手が沸き起こり、時々個々の感想が聞こえて来る。
極上のモフモフを身に纏ったエルサが大きくなると、確かに神々しい気がするのは確かだ。
近くにいる本物の神様のユノやロジーナよりよっぽど……なんて考えると、怒られそうだ。
ちなみにユノとロジーナは、レッタさんと一緒にルギネさん達リリーフラワーの所へ行っている。
話し合いで俺のクランに入る、と意見がまとまった場合に色々な事を話しておく必要があるためだとか。
レッタさんもそうだけど、ユノやロジーナなどアンリさんの暴走に備えて俺の近くにいる事が増えるなら、伝えておいた方が良さそうな事はいっぱいあるからね。
リリーフラワーは、今回のヘルサル移動には参加せず、話し合いに集中するようだ。
反対にトレジウスさん達のパーティは、俺達へのアピールチャンスとばかりに参加しているらしいけど……まぁルギネさん達は直接誘っているわけで、アピールする必要はないからね。
「早く乗るのだわー。さっさと飛びたいのだわ!」
「はいはい。意気込むのはいいけど、あまり速度は出し過ぎるんじゃないぞ? あと、飛び上がったら結界も忘れずにな?」
「もちろんなのだわ。リクとは違うのだわー」
俺も、必要な時は結界を忘れたりしないんだけどなぁ……まぁそれはともかく。
姿勢を低く、犬とかで言う伏せの体勢になったエルサ。
それでも、ちょっとした高い建物くらいあるけど。
そこに、並んでいた冒険者さん達に乗ってもらうよう、誘導する。
「んっと。エルサ、痛くないか?」
「全然平気なのだわ。何も感じないくらいなのだわー」
「なら良かった」
このままでは、大人数に乗ってもらうのは時間がかかる……よじ登らないといけないからな。
なので用意してもらっていた、かなり高めの梯子を二つ程エルサの体にかける。
念のた体重をかけたけど、エルサにはいた見どころかほぼ何も感じられないようだ……まぁ、至高の分厚いモフモフがあるからな、うん、いい感触だ。
それがなくても、エルサがはしごをかけて体重を乗せたくらいで痛くはならないか。
「はーい、皆さんゆっくり焦らず登って下さい! もし落ちても、受け止めますので安心して登ってくださいねー!」
モニカさんの声に従い、冒険者さんが続々と梯子の下に集まって、二つあるそれぞれの梯子を使って順番に登っていく。
とはいえ、梯子の下で本当に登っていいのかと躊躇する人もいるようだ。
「うーん、やっぱり実際に乗るとなると少し躊躇する人はいるなぁ。ワイバーンの方は、皆意気揚々と乗っているけど……高い所は苦手なのかな?」
「いや、単純にエルサに対して気後れしているだけだと思うぞ?」
「ソフィー。そっちはどう?」
「こちらは既に全員ワイバーンに乗り込んだぞ。いつでも飛べる」
首を傾げていると、ワイバーンに乗る人達の誘導をしていたソフィーがこちらへ来た。
ちらりと見てみると、ワイバーン達の方では既に全員が乗り込んでおり、同行する兵士さん達も含めてそれぞれ二人乗りの状態で待機している。
全体数としてはあっちの方が多いけど、こちらははしごで登らないといけないから、やっぱり少し時間がかかるか。
ちなみに、エルサに乗る人の数は俺やモニカさん以外に、冒険者さんが二十人。
ワイバーンは全てではないけど、大半に出てもらって四十体にそれぞれ冒険者さんと、同行の兵士さんが分譲する。
冒険者さんは、三十人だな。
朝の部はこれで計五十人、他に昼の部と夕の部の三回に分けて運ぶ予定になっている。
昼の部にはワイバーンは休憩と移動速度の関係により不参加で、エルサのみ人を運ぶため、二十人が限界。
夕の部に再びワイバーンも参加して残った人達を運べば、合計約百二十人運べる見込みだ。
エルサはフル稼働に近いけど、それだけ空を飛べるとあって、俺達のような乗り慣れた人以外が乗る事にも前向きだ。
まぁエルサ自身が運ぶと言い出した事でもあるからな。
あと、もちろんというかエルサらしく、食事以外におやつのキューを多めに要求された。
ヘルサルとセンテで到着時にそれぞれで食べたいとか……ヘルサルに着いたら用意してもらわないとな、センテでは既に用意してもらっているけど。
「はい、皆さん乗りましたね? それじゃあ、浮かび上がるので落ちないように注意して下さーい!」
冒険者さん達が全員エルサの背中に乗り、俺とモニカさんも同じく乗る。
梯子を外してもらい、モニカさんが冒険者さん達に注意を促す。
「はーい」という声がそこかしこから返って来る以外に、「おぉ、これは素晴らしい」とか、「柔らかい……」等々、エルサのモフモフに直接触れて感心とも感動とも言える感想を漏らしている人も、ちらほらといた。
……俺の事じゃないけど、なんだか少し誇らしい。
以前、ヴェンツェルさんからの頼みで兵士さん達を、エルサに乗せて飛んでもらった事があるけど……あの時よりもまとまりがないのは、冒険者さん達だからか。
兵士さんみたいに、集団行動をみっちり訓練されているわけじゃないからね。
それでも何人かは、近い経験でもあるのかこちらの指示に従いつつ、周囲に合わせるようにしている人もいるみたいだけど。
なんにせよ、多少まとまりがないくらいで騒ぎすぎるとか、迷惑をかけるような人はいないので安心だ。
「お、落ちないように、というのはどう注意すればよろしいのでしょうか……?」
そんな中、おずおずと手を上げた男性の冒険者……というかトレジウスさんからの質問。
手綱や鞍、鐙がある馬とは違ってエルサの背中では自由に座るだけなので、逆に不安なんだろう。
トレジウスさんは、エルサに乗る前の梯子の下で躊躇していた人の一人でもある……パーティメンバーであろう、仲良さそうな他の冒険者さんに背中を押されたうえ、梯子を登り始めるとお尻を叩かれていたけど。
「そうですね……もしバランスを崩しそうなら、エルサの毛を掴んで下さい。他に掴む物はありませんが、それだけでも大分違うと思います」
個人的には、バランスを取るためにエルサのモフモフな毛を掴むのは、あまり勧めたくはないけど仕方ないけど、不安解消のために落ちないようアドバイスをする――。
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