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ヘルサルでヤンさんと合流
しおりを挟む「リク様ー最高!」
「「「「「最高!!」」」」」
「最強!」
「「「「「最強!!」」」」」
俺の言葉は聞こえないようだし、盛り上がっているので止めるに止められない。
なんだろうこれ……誰かが大きく言葉を発したら、他の冒険者さん達が追従するように復唱。
それが何度も続いていく……。
「もう、いいや……はぁ」
「ふふ、うふふふ……」
諦めて、溜め息を吐く俺を見て、さらに笑うモニカさん……そんなに面白いかな? これまでになかった反応だからかもしれないけど。
そのまま、体感で十分から二十分程、ヘルサルが近くなるまでの空の旅の間中、冒険者さんからの賛辞の合唱が続く。
俺は、隣で面白そうに笑うモニカさんの声を聞きながら、ただただ恥ずかしくて縮こまる。
ま、まぁ、モニカさんが楽しそうだから良しとしよう、なんて自分を無理矢理納得させていた。
ある程度知ってはいたけど、冒険者さん達って陽気な人が多いんだなぁ。
「はぁ、ようやく終わった……」
冒険者さん達による、よくわからない盛り上がりがありつつも、無事ヘルサルへ到着。
ヘルサル東門前でエルサから降り、他の冒険者さんが降りて来るのを待ちながら、溜め息を吐く。
冒険者さん達を運んで来る事は、昨日既に伝えていたので衛兵さん等々が待っていてくれて、センテ出発前と同じように、エルサに梯子がかけられている。
「お疲れ様、リクさん」
「モニカさん、ずっと笑っていたよね?」
「……なんの事かしら?」
俺と同じく、エルサから降りたモニカさんが労ってくれるけど……ジト目で見返すとそっぽを向いて知らんぷり。
「止めようともしてくれなかったからなぁ、モニカさん」
「だ、だって、リクさんはあれどころではなく賛辞を贈られるほどの事をしているのに、リクさん自身は全然気にしていないんだもの。リクさんらしいとは思うけど、そんなリクさんが冒険者から言われて、照れているのが可愛くって……」
さらにジト目を続けて追及すると、視線どころか顔を逸らしたまま白状するモニカさん。
まぁ、白状も何も冒険者さんを止めずに笑っていたのは、間違いない事なんだけどね。
「可愛いって……笑ってたから、おかしいかったの間違いじゃないのかな? まぁ、いいけど」
男に対して可愛いは誉め言葉では……人によってはあるのかもしれないけど、少なくとも俺はあまり嬉しくない。
でも、モニカさんから可愛いと言われるのは、他の人に言われるよりもなんとなく嬉しい……ではなく、結構気恥ずかしさを感じた。
本当にモニカさんがそう思っているかはともかく、訂正を入れつつも気恥ずかしさが勝り、これ以上の追及を止める。
追求して本気で責めたいわけでもないからね。
「っと、そうだ。――すみません」
「はっ、なんでしょうかリク様!」
誤魔化すように、というか思い出した事があったので、近くにいた衛兵さんを呼び止める。
こちらを向いた衛兵さんは、直立して命令を待つかのようになった。
「大した用でもないですし、そこまで緊張したり畏まらなくていいですけど……キューって用意できますか?」
「は、キューですか。了解いたしました、すぐに用意いたします!」
「あ、そんなに急がなくても……行ってしまった」
命令というかお願いだしとりあえず聞いてみよう、というくらいだったんだけど、すぐに敬礼して走り去っていく衛兵さん。
エルサにご褒美でおやつのキューを、と思っただけだから急いでいるわけじゃないんだけど……まだエルサからは、冒険者さんが全員降りたわけじゃないし。
小さくなってからじゃないと、キューの消費が多いからなぁ。
「あの様子だと、大量に持ってきそうな気がするんだけど、モニカさんはどう思う?」
「そうね、リクさんの言葉だと凄く真剣に受け止めていたっていうのは、すぐに走って行ったのを見ればわかるわ。多分、持てる限りのキューを持って来るんじゃないかしら? それか、他の人も動員するとか……」
「さすがに、そこまで大量に用意されてもね……エルサなら喜ぶだろうけど、これからまだ冒険者さんを運ばないといけないし。はぁ、先に数を伝えておけば良かった」
気になってモニカさんに聞くと、俺と同じ予想だった。
とはいえ、エルサにご褒美をあげるといっても多過ぎると満腹になってしまうし、食べ過ぎるとエルサが動くのも難しいからね。
……いつも、食後に仰向けになって大きくなったお腹を晒しつつ、転がって動けなくなっているのを見ているし。
仕方ないので、別の衛兵さんにさっき走って行った人を追いかけて、数個のキューを用意して欲しいと伝えるようお願いした。
俺が追いかけてもいいんだけど、そうするとこの場を離れないといけなくなるからね。
待っている人がいるから……そろそろ来るかな? あ、いた。
「リクさん、お疲れ様です」
「運んで来たのはエルサですからね。ヤンさんこそお疲れ様です」
待っていたのは、ヤンさん。
門から出てきたのを俺が発見すると同時、向こうもこちらを見つけて駆け寄り、声をかけられる。
ヤンさんからの労いの言葉に苦笑で返す……まぁ、身体的には確かに疲れてはいないけど、冒険者さん達の大合唱で、精神的にはちょっと疲れた気がしなくもないけど。
「センテからの冒険者第一陣として、二十人です。ワイバーンの方は……あぁ、もうしばらくしたら到着しそうですね」
遠目に、冒険者さん達を乗せたワイバーンの群れが、ヘルサルに向かっているのが小さく見えた。
大体あと数十分くらいで到着するだろう。
「あとこれも……ベリエスさんから、今回センテから移動してきた冒険者さん達のリストです」
「ありがとうございます。確認しますね。――冒険者ギルドヘルサル支部、ギルドマスターのヤンです! センテにいた皆様とは何度も顔を会わせましたが、一応確認させて下さい。エルサ様から下り次第、こちらへ!」
そう言って、大きなままのエルサから梯子を使って続々と降りて来る冒険者さんを誘導するヤンさん。
確認というのは大した事ではなく、冒険者カードや人数などの確認だ。
ベリエスさんから受け取ったリストと照合し、間違いがないかを把握したうえで、ランクなどに合わせて森の魔物討伐の依頼を出す予定。
そのため、リストが間違っていないか、ちゃんと冒険者さん達が揃っているかなどの確認が必要らしい。
あと、ヤンさんもセンテでの戦闘に参加していたため、センテにいた冒険者さん達は全員ヤンさんの事を知っているけど、ヤンさんが全員の事を全て把握しているとは限らないからね。
まぁ大体はギルドマスターとして、ベリエスさんと一緒に管理していたから顔や名前、ランクも知っているようだけど……主な管理はベリエスさんだったから。
ヤンさんはヒュドラーの時に魔法鎧を着たように、前線で戦ってもいたから、あの時センテにいた冒険者さん全てを把握とまでは行っていないようだ。
他にも、ヤンさんに遅れて到着したギルド職員さんに、覚えさせる意味もあったりするとか……まぁ何はともあれ、しばし確認作業だね――。
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