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複数の物を作ってもらう
しおりを挟む「冒険者なら、身を守るためとして買う人もいるでしょうけど……」
武具とか、ちょっといい物になるとそれくらいの金額になる物も多いからね。
……魔法効果のある物になると、金貨十枚以上とかざらにあるし。
「それで作るとなると、できた物の価格も相当な事になりそうですね」
「はい。しかも、価格の例を出したくらいの物で、試作でリク様に渡した物と同じ大きさの物程度しか作れないかと」
「それは……相当な量になって、相応の値段になりそうです」
それこそ、魔法効果のある武具と変わらないくらいの値段になるんじゃないだろうか?
そうなると、俺はともかく他の人が買えなくなってしまうなぁ。
まぁ最低限、俺やエレノールさんが満足する物ができればと考える事はできるけど、一応販売して広くモフモフを楽しんでもらう、というのも頭の片隅にあるわけで。
お金持ちくらいしか買えないような物だと、広く知ってもらう事はできないのではないだろうか?
「それでも、一部の貴族などはリク様が作った物というのであれば、こぞって買い求めるとは思いますが……」
「え、そうなんですか?」
「はい。全てがそうではないとは思いますが……リク様関連の商品は現在、飛ぶように売れています」
「それ、全部俺が承認した物ですらないんですけどね」
多分、人形みたいなまんじゅうとか、王都で見かけた俺を模した物だろう。
面白がって、モニカさんやソフィーが買った事はあるし、ユノもおやつとしてよく買っている。
味は悪くないし、馬鹿にする意図は感じられないから、文句を言う気にはなれないし言うつもりもないんだけど……この世界で、肖像権を持ち出すのはね。
ただかなり美化されているし、商魂たくましいなぁとは思うけど。
まぁ悪い商売に使われているようなら、さすがに抗議するつもりだし、一応その辺りの取り締まりは姉さんにお願いしていたりする。
姉さん自身が、俺関連の商品が出る事を喜んでいるんだけども。
「貴族が買えば、それもリク様自身が作った物となれば、評判にはなるかと存じます。まぁ、手は出ない人が大勢にはなるでしょうが……」
「ふぅむ、そうですよね……なら、こういうのはどうでしょう?」
完璧を求めたモフモフな新素材、その大きさを変えて作る。
ぬいぐるみとかと同じで、大きければ高価格になり、小さければ低価格になるわけだ。
最小限として、今回試作として持って来てくれた、握れる程度のボールサイズの物がいいかな。
これなら金貨数枚程度になるとしても、絶対お金持ちにしか手が出ないという程じゃない。
それと同時に、新素材の低価格化の方も少しだけ考えてみたりするのもいいかもしれないけど……こちらは、俺とエレノールさんが話し合ってどうにかできる問題ではないので、話し合いや考える程度。
とりあえずは、求める物を完成させるようにするのが目標だ。
あとは、現状の素材のままの物もそのまま作る事。
これは俺達の求めるモフモフ以外にも、フカフカの方がいいという好みの人がいるかもしれない事での需要と、こちらは低価格にできるので、入り口としては悪くないかと思ってだね。
「成る程、さすがリク様です。私は、完璧な物を世に出す事しか考えておりませんでした」
「まぁ、エレノールさん自身は、商売の事を考える人じゃありませんからね。それは、俺もなんですけど……」
完璧主義に見えるエレノーラさんは、柔軟と言って自画自賛するつもりはないけど、いろんな可能性を探るのは苦手そうだ。
モフモフを追求するためならともかくとして。
俺だって、別に知識があるわけでも商売に詳しいわけでもない。
ただ単に、こういう事もできるかなぁと案が浮かんだくらいで……。
「あと、エレノールに全て任せっきりになるので、かなり負担がかかると思いますけど……」
一番の問題は、費用ではなくエレノールさんへの負担だ。
俺は基本的にお金を出して待つだけだから、適当な事を言えるけど……実際に作るエレノールさんは、手間などもかかるから色んな種類をとは考えられなかったのかもね。
「いえ、問題ありません。モフモフの追及をするためならば、この程度。全身全霊で取り組ませて頂きます」
「いや、そこまで意気込まなくても……無理はしないで下さいね?」
俺が言っても、無理や無茶をしそうなので、他にも誰か巻き込んで協力してくれる人がいた方が良さそうだ。
まぁ、そんな人に心当たりがないから、現状はエレノールさんに任せたままにするしかないんだけど。
覚えておいて、もし誰かいそうなら紹介するようにしようかな……そんな人がいるかどうかはともかくとして。
ともあれ、そうして追加の費用はいずれ冒険者ギルド経由で渡すとなり、新素材と現素材も含めて複数種類の物を作る事で話は決まった。
色んなモフモフが出来上がりそうで、俺としては楽しみしかない。
完全に、俺とエレノールさんのモフモフに対する欲望が詰まった計画になっているけど……誰にも迷惑をかけていないから、いいよね、うん。
個人的な趣味の延長、という事で。
「随分話し込んでいたみたいね、リクさん?」
「まぁ、ちょっと面白い事になりそうかなって。少しだけお金がかかりそうだけど……これもモフモフのためだから!」
「はぁ……リクさんはエルサちゃんのモフモフだけに執心、だと思っていたんだけど……」
なんて、溜め息を吐くモニカさんに苦笑しながら、エルサがキューを食べるのを見守る。
エレノールさんと白熱? した相談が少しだけ長引いた間に、ヤンさんは冒険者さん達の確認を終え、街の中へ誘導。
他のギルド職員さんが、俺から離れたエレノールさんと一緒に、ワイバーンに乗って来る冒険者を待つ事に。
さらに、冒険者を降ろし終えたエルサが小さくなっていて、モニカさんに抱えられてキューに夢中になっていた。
小さくなったら俺の所に来るかと思ったんだけど、何やら不穏な話をしている気配をエルサが感じ取ったらしく、近付かないようにしたらしい。
……変な藩士はしていなかったつもりだけどなぁ……まぁあそこでエルサが来たら、モフモフ談義になる可能性もあったから、それで良かったのかもね。
ちなみに、エルサが食べているキューはちゃんと後を追ってもらった衛兵さんが伝えてくれたらしく、五本程度だ。
大量に持ってこられなくて良かった。
キューなどの費用は、俺じゃなくてシュットラウルさん持ち。
かなり細かい事で微々たる物だけど、冒険者さんを移送するための費用の一つって事らしい。
「さて、エルサもキューを食べ終わったし、センテに向かおうか」
「そうね。エルサちゃんを見ていたら、私もお腹が空いたわ」
「お昼もいっぱい食べるのだわ~」
「食べ過ぎて、お腹を壊したり動けなくなったりするんじゃないよ、エルサ?」
「もちろんわかっているのだわ」
キューが食べ終わるのを待って、俺とモニカさんは再び大きくなったエルサに乗り込む。
日も高く、センテに戻る頃には昼食時前後でちょうど良さそうだ。
センテに戻っても、さらにお昼をたらふく食べようとしているエルサに、一応の注意をしながら、センテに向かって移動を開始した――。
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