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剣と鞘と拳の連続攻撃
しおりを挟む「斬るよりも、多く削れてる……かな?」
十字に別れたレムレースだけど、横薙ぎに発した鞘の剣魔空斬は斬り裂くというより抉るや、削るという方が近そうに見えた。
斬れて体を分かたれるというよりも、当たった部分を削り取った感じだね。
成る程、やっぱり線よりも面で対処した方が、魔力の塊であるレムレースに効果があるのか……少し前に、頭から追い出した戦法を再び想起させる。
「KIKIKIKI!!」
「いっつぅ……!!」
再生したレムレースから放たれる魔法。
今度は、正面から土の塊がいくつかと、打ち上げられて山なりに俺へと収束する炎と氷の礫(つぶて)。
それらを、剣魔空斬で反撃しながら打ち払い、踏み込もうとしたところで腕に鋭い痛みが走った。
気付かなかったけど、時間差で迂回して横から風の魔法が飛んで来ていたらしい。
「くっそ……! 予想以上に狡猾だ」
ヒュドラー戦の時は、ただひたすら魔法を無差別に撒き散らすだけに見えたのに、今は的である俺に対して色んな種類の魔法をいろんな角度、方法で打ち出してくる。
レムレースが個体としては小さいからなのか、それとも俺一人だからなのか……まぁ、前回倒した時は兵士さん達とか多くの人目掛けてだっただろうし、ユノ達との時はヒュドラーと連携するためか、距離を取っていたのもあるかもしれない。
それこそ、以前はレッタさんがある程度大まかにでも指示していたから、ってのもあるのかな。
「せっ! はぁ! これで!」
「KIKI!?」
次々と打ち出される魔法、剣魔空斬で反撃してもすぐに再生され、あまり力を削いだ感じはない中、レムレースへと飛び込む。
しばらく俺が近寄ろうとしなかったので、レムレースにとっては予想外だったんだろう……それでも、魔法の弾幕が凄くていたる所に被弾したけども。
魔力を通した剣と鞘で、炎の塊を打ち払い、風の刃を弾く。
さらに続く氷と水の塊を、剣魔空斬でレムレースごと斬り裂きつつ、鞘の剣魔空斬で弾いて再生を始めたレムレースに飛び……。
「おっと! さっきと同じ事はしないよっと!」
レムレースまであと数歩程度の距離になったところで、大きくジャンプ。
俺を寄せ付けないための魔法弾幕の中に、土がないのに気付いたからだ……さっきみたいに、表面上はわからないように落とし穴を作られていたら、せっかく痛いのを我慢して突っ込んでいる意味がないからね。
「こなくそぉ!」
「KI、KIKIKIKI!!」
数メートル程のジャンプ中、剣と鞘に再び魔力を流し込みつつ、レムレース目掛けて飛び込む。
剣魔空斬を打てるほどの魔力を流すには時間が足りないけど、斬ってダメ―ジを与えるくらいの魔力なら……!
レムレースの頭上から、飛び込んだ勢いのまま真っ直ぐ縦に一文字斬り。
それと共に着地し、足を地面に踏み締めて剣と鞘の逆袈裟斬りで斜め十字斬り。
「まだ、まだぁぁぁ!!」
何度も何度も、剣と鞘に流した魔力がなくなるまで、ひたすら剣で斬り裂き、鞘で弾く。
数秒程、呼吸すら忘れてただただ目の前のレムレースに打ち込んでいく。
レムレースの唯一と言っていいかわからないけど、弱点というか特徴として、再生している時は竜巻に包まれていなければ、連続で攻撃を与え続けていれば反撃されない。
多分、体を形作る再生をするのが優先なんだろう。
それこそ、二つの目のどちらかが完全な形になっていない時は、動かないというかレムレースという個体と言えない状態なのかもしれない、とこれまで戦っていてなんとなく考えていた。
急所でそこを攻撃すれば倒せる、といったものではないけど、何度か剣魔空斬で魔法を斬り払いながら攻撃した時、他の場所だとゆっくり再生しながらも攻撃がきていた。
それに対し、目の部分を斬ると攻撃が止んで再生が早まるようだったから。
つまりそれは、連続で攻撃し続ける限り、目がちゃんとした形を作らない限り、防御や回避を考えずに動けるという事でもある。
「ぐっ……はぁ、はぁ!」
とはいえさすがに、俺だって永遠に攻撃を続けられるわけじゃない。
呼吸を忘れて動いていた事もあり、レムレースが細切れになったくらいで止めざるを得なかった。
もう少し続けたかったけど、剣と鞘に流した魔力もほぼなくなって来たから、仕方ない。
流した魔力がなくなれば、それこそどれだけ攻撃しても意味がなくなるだろうし。
呼吸を整えながら、再生を開始、竜巻を発生させる前にもう一度攻撃が再開できるかどうか……と、剣と鞘に魔力を流そうとして、止めた。
「魔力を通す余裕がなければ、通さなくてもいい方法で攻撃すればいいよね……っ!」
剣と鞘をその場の地面い突き刺し、拳でレムレースへと打ち込む。
「KIKI!?」
「お? 正解だったみたいだ! たぁ!」
細切れになって、黒いもやみたいなのが無数に浮かんでいる状態のレムレースの、どこから音が発せられるのかわからないけど、驚いているようなニュアンスを感じたから、拳でというのは間違いじゃなかったみたいだ。
俺が撃ち込んだ拳は、十センチ程度の無数のもやに分散したレムレースの一つを、弾けさせて霧散させていた。
前に連続で斬った時、線が駄目なら面でと考えたけど……つまり、レムレースに触れる面積が広ければ広い程いい、というわけみたいだ。
当然ながら、魔力が一切ない物で触れても効果はないけど、俺の体というか拳は常に魔力が纏われている状態だ、少なくとも戦闘時は。
大量の魔力のおかげで、俺が意識しているしていないに関わらず、魔力が漏れているくらいだからね。
つまりは天然の次善の一手に近い状態ってわけだ……制御されていない雑な魔力だから、威力としては次善の一手の方が高いんだろうけど。
これなら、わざわざ剣や鞘などの物に魔力を流さなくていいから、そのための準備に必要な時間を短縮できる。
俺自身も、魔力を意識せずに済むから一石二鳥だ。
「おらおらおら……ってか!!」
以前に読んだ事のある漫画の真似をしつつ、漂う細切れレムレースの黒いもやへと左右の拳を撃ち込んでいく。
とはいえさすがに、あの漫画のように無数の拳があるように見える程ではないし、俺自身格闘を習った事があるわけでもないので、傍から見ると不格好でただ拳を打ち付けるだけ、というものだろうけど。
構えとか適当だし……多分習えば、もっと鋭く、早く拳を打ち出す事もできるんだろうけど、今はとにかくレムレースにダメージが入る状態でこちらから攻撃をし続けられればいい。
ただ、ほぼ空気を殴っているような状態で、何かに当たるような感触や衝撃もないため、反動を利用できないのが難しいところだ。
剣でも同じような感じだったし、今更だけど。
あと、蹴りとかも使えばもっと効率は良かったのかもしれないけど、そちらは靴を履いているためそこに魔力を流さないといけないので断念した。
まぁ適当な見よう見真似の動きで、拳と足を混ぜたらもっと不格好で、逆に攻撃する連続性が薄くなっていたかもしれないからね。
ちなみに、拳で殴るのではなく握りつぶしたらと思ってやってみたけど、ほとんど効果がなかった。
どうやら一定以上の衝撃か何かがないと、魔力を纏っていても意味がないようだ――。
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