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決着の最後はあっさり風味
しおりを挟む「っと! さて、レムレースは……?」
爆風も止み、視界が晴れて行く中でレムレースの方へ視線を向ける。
魔力弾がどうなったのか、ずっと追えていなかったからどうなったのかわからない。
当たったのは確実だと思うけどね……追撃の魔法が来ないから。
「……自分でやっておきながら、物凄い威力だ」
俺が魔力弾を放った場所、そこはレムレースの魔法が炸裂して滅茶苦茶になっているけど、そこから真っ直ぐレムレースへと地面が抉れているのがはっきりわかる。
幅数メートル、深さも数メートルの道ができ、その先にいるレムレースは……。
「倒せた、でいいのかな? まだちょっと黒いもやがあるけど……」
完全に消し飛ばした、というわけではないし期待していなかったけど、形作っていた体は霧散し、黒いもやがいくつか空中に浮かんでいるだけになっていた。
こうなったら、追撃の魔法なんか放てないよね。
ともあれ、予想外だったけど一撃でレムレースを倒せたと思って良さそうだ。
「ふぅ、とりあえずなんとかなったかな。まぁ、見晴らしがかなり良くなっちゃったけど」
見晴らしというのは、レムレースとの戦いで荒野のようになってしまった周辺……の事ではない。
そちらも確かに見晴らしがよくなったけど。
そうじゃなく、凍てついた大地のある方、そちらに残っていた木々が抉れた地面の道が続くように、ぽっかりと穴を開けているようになっていた。
さらに、遠目だからはっきりとは見えないけど、かなり遠くの方まで地面の氷すら抉って、破壊していた。
「もしかしたら、ちょっとだけ解氷作業的なお手伝いになった、かな? それなら、やり過ぎかもって威力が出たけど結果オーライだね」
これまで何かをやればやり過ぎて失敗する事が多かったけど、今回のこれはかなりいい感じで、求める以上に最良の結果が出たんじゃないだろうか?
なんて、数キロ単位で荒野にしておきながら、楽観的に考える。
……荒野にしたのは大半がレムレースの魔法で、俺は木を斬り倒しはしたけど、そこまで悪いわけじゃないし。
「って、ん? あれは……! くっそ、まだだったか!」
抉れてできた道を見ていて、よく見ていなかった俺が悪いんだけど……いつの間にか、レムレースだった黒いもやが別の場所に移動し、集まりつつあった。
完全に、全てを消滅させるまで倒せたとは言えないのか!
実際に言っていないけど、脳内で「やったか!?」なんて叫んでフラグを立ててしまった、に似た状況だ。
いや、それにしてはかなりレムレースには痛手を負わせているはずだけど、それはともかく。
集まってまた復活されたら面倒だと、走って黒いもやが終結を始めている所へと急ぐ。
が、油断していて剣魔空斬や魔力弾の準備をしていなかったので、離れた場所からの攻撃ができない。
そのためか、到着が遅れ、直接剣を叩きこもうとした俺を嘲笑うかのように、再びレムレースからあの甲高い耳障りで不快な音が発せられた!
「KIKIKIKIKIKIKIKII!!」
「くぅ!」
耳をつんざく音に、思わず走っていた足を止めて剣と鞘を落として両耳を塞ぐ。
これまで以上に魔力を求めているからか、これまで以上に激しく大きな音……顔をしかめながら空を仰ぎ見るように無意識に動いてしまう。
この音、無防備に他の誰かが聞いたら、音で鼓膜が破れたり、意識を失ったりするんじゃないだろうか? 光のないスタングレネードみたいに。
意識を失ってしまえば、そこからゆっくりと魔力を吸収できるわけで、それはそれで凶悪だ。
なんて考えながらも、音に耐えて薄っすらと目を開けたら、豆粒ほどにしか見えない程の高度にいるリーバーが、どこかへとフラフラ飛んで行くのが見えた。
多分、向こうにも音が届いて堪らず離れたんだろう、それがリーバー意思か危険を回避するための無意識かはわからないけど。
「くっそ……このままじゃまた復活されて!」
音が染み込み、魔力が抜き取られ、俺の魔力を使って再びレムレースが復活。
魔力弾があるにしても、ホッと安心したのにまた戦わなきゃいけないのか……そう頭の中を駆け巡ったけど。
「あ……れ? 音はうるさいけど、これまでみたいな感覚がない?」
レムレースから発せられる音は続いているのに、体から魔力が抜き取られる間隔がない。
それどころか、これまで耳を塞いでいた手すら貫通して、脳内に直接届いていたような音が、かなり緩和されている事に気付く。
いや、音自体はこれまでで一番大きくて、うるさいんだけど……無理矢理染み込んでくるような感覚が一切ない。
「KIKIKIKIKI……KIKIKI……KI?」
「えーっと……」
声ですらない音なのに、その時のレムレースの感情をはっきりと読めてしまった。
つんざく音が、やがて止み、そうして呟かれるような音からは、「あれ?」と言っているような雰囲気が感じられたんだ。
感覚頼りだけど、多分魔力を吸収しようとしてできなかったってところか。
「とりあえず、なんかわからないけど……お疲れ様って事で」
音が止んだため、耳を塞ぐ必要がなくなり、落とした剣と鞘を拾っててくてくとレムレースらしき、黒いもやの集合体に近付く。
大体、拳二つ分くらいの大きさにまで縮小したそれは、先程まで魔法の連続使用していたのとは別の生き物のようですらあった。
形に依るところが多かったけど、魔物的な迫力や威圧感も一切ない。
ただ、そこにある色の付いた空気みたいな感じ……抜けた雰囲気が流れるこの場のせいだろうけど。
「KI……」
あ……みたいな音を残して、剣と鞘によって斬られ、潰されるレムレースだった黒いもや。
数秒後には、音どころかもやすら完全に消滅して、周辺は静かすぎて逆に耳が痛くなるほどの静寂が訪れた。
「えーっと、とにかく……レムレースを倒したぞ! やったー!」
木々のざわめきすらない荒野となった場所で、一人拳を突き上げて喜ぶ俺。
だって、なんとなく静寂に耐えられなかったし。
誰かに見られているわけでもないから、気にする必要はないんだけど……何も音がないと、逆に不安だったからね。
「はぁぁぁぁ……疲れた。まさかレムレースとこんな戦い続けるなんて。よっこいしょっと……」
大きく息を吐き、一人呟きながら適当な地面に腰を下ろして地面に手を付けて体を支える。
とりあえず息切れとかはないけど、動き続けて、魔力を使い続けたからか、全身が重く感じる。
体力的な事以外にも精神的な疲れもあるんだろう。
各種様々な属性の魔法を、連続で使用されていたのに対処するため、ずっと気を張っていたからね。
魔法の属性を見極めて、対処法も考える必要があったし、避けきれなかったのもあるけど。
風の魔法とか特に、歪みを観察しないと迫っている事すらわからない事もあるし……気を付けないと、体の一部とサヨナラなんて可能性もあったわけで。
直撃に近かった土の魔法を受けた横腹とか、ズキズキはするし、浅いながら怪我をした部分の痛みが押し寄せてはいるけど、なんとか無事と言えるかな――。
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