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モニカさん達とヘルサルへ
しおりを挟む「とはいえ、手放しで放っておくわけにもいかないだろうけどね」
「それはそうよね。それだけの被害もあるんだもの。まぁリクがやる必要はなくても、他の誰かに任せればいいわ。それだけであのクズはどんどん追い詰められていくはずだから……」
とはレッタさんの言。
一応、今後はほぼないだろうと予想されても、何かやって来る可能性は否定できないから警戒は必要だし、ロジーナやレッタさんからの情報で、この国に残っているらしい帝国の拠点などは潰す必要はあるけどね。
戦争になるんだ、帝国と正面から戦っている最中に国内のどこかで大量の魔物が発生、とか騒乱を起こされたらたまったもんじゃない。
そちらは、姉さんや冒険者ギルドなどにある程度任せる事にはなると思う。
……必要があれば、俺も動くし頼まれそうだけど。
それから、少しだけレッタさん達と話して情報の確認などを済ませ、終わった頃には弛緩した空気になる。
「リクさんは、明日も森に行くのよね?」
「そうだね……まぁ、レムレースがいたせいで目的が達成できた、って程じゃないから。それに、念のため見て回った方が良さそうだし」
ゆっくりした空気……カイツさんなんてテーブルに突っ伏したまま、ほぼ寝ているような状態で、モニカさんの問いに答える。
レムレースが発生する可能性はもうないとしても、念のため森に行ってもしもに備えよう、という予定だ。
今日中にもっと多くの魔物を倒そうとしていたのができなかったし、戦ったラミアウネの数の多さが気になるからね。
いくらラミアウネ自体は単体だとそこまで強くないとはいえ、あんな数と他の冒険者さんが遭遇したら、逃げる事も難しいだろうし。
「成る程ね……それじゃ、私も一緒に行くわ」
「え? でも解氷作業の方は……」
「ずっと手伝っているから、現場の人からは休めって言われているのよ。でも、休む程疲れているわけでもないし……森を見て回るなら、リクさん一人だけよりマシでしょ?」
「まぁ、それはそうだけどね」
俺一人だけで見て回るには森は広いし、探知魔法が使えない現状視界の悪いあの森では、ちょっとしたことを見逃す可能性もある。
モニカさんが来てくれるなら助かるし、俺も嬉しいけど……休めって言われているのに、休まなくて本当に大丈夫だろうか?
この場にいる皆は、カイツさんを除けばそんなに疲れている様子はないけど……。
「ずっと魔法を使ってばかりだから、むしろ体を動かした方がいいのよ。リクさんと一緒なら、ほとんど魔法を使う事もないでしょ? そういう意味では休む事にもなるわ」
「魔法を浸からず、魔力を消費しない事での休息ってわけだね。本当に大丈夫?」
「えぇ。最近、槍を振っていないからむしろその方がいいわ」
「わかった。それじゃ明日はモニカさんと……」
リーバーは二人乗りできるし、他のワイバーンに頼んで一緒に行く事も可能だからと考え、頷こうとしていたら……。
「私も行くわ。森と言えばエルフの私達の領分とも言えるからね。というより、ずっと見渡す限り氷というのも飽きたし、久しぶりに森の木々と触れ合いたいの」
「フィリーナも……まぁ、それでいいんならいいけど」
「モニカじゃないけど、エルフにとって、森の木々に囲まれた方が休息になるわ。それに私はまだまだ魔力にも余力があるのよ。伊達にエルフじゃないわ」
「それじゃ、フィリーナも……ってそういえば、今私達って言ってなかった?」
「えぇもちろん。カイツも一緒よ」
「ぐぅ……ぐっ!? ぐぅん……」
フィリーナが示した先、ほぼどころか完全に寝入っているカイツさん。
不穏な気配というか、勝手に予定を決められていたからか、一瞬体をビクッとさせて反応したけど結局そのまま寝息を立て続ける。
……カイツさん、起きて否定するところなのに……まぁフィリーナもいるから、滅多な事にはならないだろう。
「一応、カイツさんには起きた時にでも確認してね? それでも強制で連れて行くんだろうけど。とにかく、それじゃあ明日は皆で森だね……えっと、ユノ達は……」
皆で、と言ってもまだユノやロジーナ、それにレッタさんがいる。
そちらはどうするのかと思ったら……。
「私は、こっちで遊んでおくの」
「面倒だから、行かないわ」
「ロジーナ様が行かないのであれば、私も当然行かないわよ」
等々、ユノ達はセンテに残るみたいだ。
まぁ解氷作業の手伝いがユノにとっては遊びみたいな感覚なんだろうし、鬱蒼とした森の中に入るよりは楽しいみたいだからいいか。
ちなみに、俺の頭にくっ付いたまま寝ていたエルサにも後で聞くと、ユノ達と一緒にいるらしい。
エルサ自身は、ユノ達のお守りをしないといけないと言っていたけど、アイシクルアイネウムが出現した時に備えてだろう……ボソッとそれらしい事を言っていた。
ユノ達がいれば対処可能だろうけど、一応兵士さん達も守らないといけないからね。
エルサには、キューのご褒美をあげねば……。
翌日の朝、センテからリーバー率いるワイバーンに分乗して、ヘルサルに到着。
冒険者ギルドに行く俺とモニカさん以外は、獅子亭で待機とお弁当を頼みに向かってもらう。
「それじゃあ、俺は一旦冒険者ギルドに行ってくるから」
「はっ、行ってらっしゃいませ!」
「はーい。獅子亭で待っていますねぇ」
アマリーラさんとリネルトさんの返事を聞き、モニカさんと一緒に冒険者ギルドへの道を進む。
ヘルサルに来たメンバーは、予定通りの俺とモニカさん、フィリーナと森に行けるからかちょっと元気だけど勝手に決められていた事を不満そうにブツブツ言っているカイツさん。
それから、今朝出発前に追加でアマリーラさんとリネルトさんだ。
アマリーラさん達は、シュットラウルさんとの傭兵契約に関するあれこれの手続きやらを済ませて、今日から俺に付いて来るようにできたらしい。
朝宿を出発しようとしたとき、尻尾を物凄い勢いで振ってリネルトさんにペチペチ当てながら、「ようやくリク様にご一緒できます!!」と言い放った時は驚いたけど。
決まっていた事なので、とりあえず森に一緒に入る事になった。
いきなり森で魔物と戦う事に対しては、いつでもお任せくださいと、むしろ命令というかお願いされるのが嬉しい様子でもあった……これはリネルトさんもそうだったから、獣人って認めた相手にはそうなのかもしれない。
あと移動中に聞いたけど、エルフ程ではないにしろ獣人も森との親和性があるとかなんとかで、木々や自然豊かな場所だと本能が刺激されるとか。
……はしゃいで、暴れ過ぎないといいけど……まぁリネルトさんがアマリーラさんを見てくれているから、多分大丈夫かな。
ちなみに、森との親和性は獣人でも全てではなく、細かに別れる種族によって違うらしい。
よくわからないけど、おそらく猫っぽい獣人とか犬っぽい獣人とか、リネルトさんのような牛っぽい獣人とかでちょっと違うって事なんだろう。
アマリーラさんは猫っぽいけど森に行くのは嬉しい様子で尻尾をフリフリ、牛っぽいリネルトさんは落ち着いているから、そういうものかと納得した――。
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