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獅子亭で考えていた事の相談

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「おぉ、リク。モニカ達もお帰り」

 獅子亭に入ると、もう遅い時間で店の営業が終わっていたから、マックスさんやマリーさんなどお店の人達に迎えられた。
 ソフィーやフィネさんもいるね。
 テーブルの上には手が付けられていない料理が大量に置かれているので、俺達が来るのを待ってくれていたんだろう。
 今日は夕食を獅子亭で食べるとは言っていなかったけど、来ると予想していみたいだね。

 もし俺達かこちらに来なかったら……と待ってくれていた人達に挨拶をしながら聞くと、ソフィーが「食べられる場所にいるのなら、こちらに来るのは当然だからな」と言っていた。
 まぁ、確かに料理が美味しいからできるだけ獅子亭で食べたいという気持ちもわかるけど。
 ソフィーは以前本人も言っていたように、獅子亭のファンだからだろうね。
 なんいせよ、俺達のための料理を用意してくれて、それが無駄にならなかったんだからいいか。

「ソフィー達から聞いているが、無事に行方不明の冒険者は見つかったようだな」
「はい。戻ってこなかった理由……というか、戻れなくなった原因はともかく、森に留まろうとした理由もわからなくもなかったです。まぁ、何事もなくとまでは言えませんでしたけど」

 休憩しておしゃべりに夢中になって気付いたら、日が落ちていた……だからね。
 そこはもうちょっと気を付けて欲しかったと思うけど、それからは無理をせず闇雲に森から出ようとしなかったのは悪くない判断だったと思う。
 結局、ラミアウネに二人程襲われてしまって危険だったから、正解とは言えないのかもしれないけどそれは結果論だからね。

 五人の女性冒険者さん達は、戻って来てから捜索にあたってくれた冒険者さん達や、冒険者ギルドの職員さん達に捕まって、色々と言われていたみたいだけど……心配させてしまったんだから、甘んじて受けておいて欲しい。
 ちなみに、ソフィーやフィネさんも捜索してくれていたんだけど、リーバーがワイバーンを連れに一旦戻った時に発見されたとわかって安心し、先に獅子亭へと戻ったみたいだね。

「まぁ、こういう大規模依頼……複数の冒険者パーティが参加する依頼では、必ず逸脱した奴が出るもんだ。それが五人……パーティ一つだけだったか。それで済んだのは少ない方だろう」

 テーブルにつき、皆で一斉に食べ始めながらマックスさんが言う。
 冒険者は、それぞれのやり方みたいなのもあって、パーティ単位でも少人数の行動が多い。
 我が強いというのか……とにかくまとまらずに、いくら注意していても問題が起こるのが通常だとマックスさんは言っていた。
 それが今回の女性冒険者が戻って来ないというだけで済んだのは、センテでの事があって、俺も参加するから、ある程度統率が取れていたんだろう、というのがマックスさんの見方みたいだ。

「リクは、少し注意しておいた方がいいだろうな」
「俺がですか?」
「あぁ。クランを作るんだろう? それなら、複数のパーティをまとめる立場になるわけだ。今回のように、大規模依頼を受ける事もあるだろうし、クランを作る目的が目的だからな……俺はこれまでクランに入った事はないし、この国は比較的冒険者がやりやすく、国の兵士との連携もあるから必要はなかったんだが。ただ、クランを率いている冒険者は見た事があるからな……」
「中々、大変そうですね……」

 もちろん、マックスさんに言われなくてもクランを、多くの冒険者さん達をまとめるのが簡単だとは思っていなかったけど。
 それでも今回の事があって、複数の冒険者、複数のパーティをまとめる事が大変なのだと実感できた。
 帝国とのいざこざがなかったとしても、クラン所属のパーティに依頼を割り振る事だってあるみたいだし、それで不相応な依頼を受けさせて大きな被害を受けるなんて事は、絶対に避けたいからね。
 なんて考えつつ、個性も当然あって訓練で統率された動きをする事を重視する兵士とは違う、冒険者さん達の扱いなどなどをマックスさんやマリーさんから聞きながら、食事を進めた。

「あ、そうだ。森の中でモニカさんとも話したんですけど……って、昨日も言いましたが、お弁当についてちょっと……」
「ふむ、その話か……」

 食事の終わり際、どうしても俺としては諦めきれない街の外での美味しい食事について、マックスさん達に話す。
 やっぱり、美味しい食事というのは心も体も元気にしてくれるからね。
 とはいえ、昨日既に獅子亭でお弁当販売をするという提案に対し、マックスさんは難色を示していたので、強引にやってもらうなんて事は考えていない。
 それはあくまでも提案として、もしかしたらお昼の獅子亭の混雑が多少改善されるかも? という意見でとどめておく。

 本題は、俺が作るつもりのクランで所属してくれた冒険者さん達……一番は俺やモニカさん達にだけど、皆の食事を充実させるためだ。
 クランに食堂を作って、お弁当も作ってもらえればってわけだね。
 それらの話を、マックスさんのみならず獅子亭にいる皆、マリーさんやリリーフラワーの人達にも話した。
 リリーフラワーのこだわりを持つ魔法担当らしい、ミームさんだけは「干し肉は絶対」とか呟いていたけど……ま、まぁ、需要があるならというか日持ちする食べ物として干し肉を用意するのは、悪くはないかもね。

「成る程な……冒険者ギルドと似たような事をするわけか。規模はまだわからんが、リクが作るのなら小さな冒険者ギルドくらいにはなりそうだ」
「さすがにそこまでは……でも、所属してもらうんですから、少しくらいは特典のようなものがあってもいいのかなって」

 クランの総人数はまだ決めていないけど、多すぎる人数は管理もできなくて俺が把握するのも難しくなってくる。
 選別した少数精鋭とかにするつもりもないけど、ある程度上限人数は設けるつもりだ。
 そしてその中で、クランに作った食堂では所属している人に安く食事してもらう、またお弁当も安く提供するようにと考えている。
 これは、冒険者ギルドでもやっている事だね。

 冒険者ギルドは支部でもある程度の規模になれば、その建物内で食事が提供される。
 ブハギムノングのように、冒険者がそもそもほとんどいないような場所などにはないみたいだけども。
 実は誰でも利用して食べられるらしいんだけど、質より量が優先されるメニューが多い事と冒険者登録をしている人には割引されるから、もっぱら利用者は冒険者だ。
 それと似たような事……というか同じような事をしようってわけだね。

「それでまぁ、安く食べられるとしてもできれば美味しい物を食べたいじゃないですか?」
「まぁ、それはそうだな。おそらくリクのクランに所属する冒険者は、一定以上のランクだろうから、安くても美味いとはいいがたい物を好んで食べたりはしないだろう」

 目的が目的だから、最低限Cランク以上ってところだろうけど、ちゃんとお金の管理ができている冒険者さんなら、ギルドの格安料理を食べなくても暮らしていける。
 まぁ、装備にお金をかけたり、浪費したりすれば別だし、そういう人は多いみたいだけどそれはともかく。
 安くて美味しい物を提供すれば、それはクランに所属する特典になるんじゃないかって考えたわけだ――。


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