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点在する魔物集団の分布
しおりを挟む確かに、アルケニ―達のように王都に来るまでの間に発見した魔物達には、レッタさんの魔力誘導でどうにかできるなんて事はなかったみたいだからね。
通常の魔物とほぼ変わらず、多少動きを鈍らせたり、移動する先などをある程度大まかに誘導する程度のものなんだそうだ。
しかも、一度に誘導する数が多ければ多くなる程、その効果も薄まるしレッタさんへの負担も大きくなると。
「それじゃあ、今王都の周辺にいる魔物達が帝国の仕業なら、どこか無害な場所へ向かわせるなんて事もできないわね」
「それは虫のいい考えね。期待させちゃって悪いけど、できないわ。そうね……できるとしたら、戦闘中に動きをほんの少し動きを鈍らせるくらいかしら。微々たるものだし、数が増えるとほとんど意味をなさないけれど。あとはそうね、移動先を大まかな方向として誘導するくらいかしら」
「……なら、王都や村、街とか人のいない方に魔物を動かせば、差し当たって被害は減らせられるんじゃないかしら?」
「まぁ無理じゃないわ。けどそれは、その魔物達が明確な目的を持っていない場合のみね」
「明確な目的?」
クズ皇帝に関する事以外は、基本的に淡々と話して無表情に近いレッタさん……あ、ロジーナの時もクズ高地とは対極的だけど、表情がコロコロ変わるか。
ともかくそんなレッタさんが、難しい表情をして教えてくれた。
「明確な目的は意思とも言えるわ。それがどんな理由で植え付けられたにしてもね。つまり、帝国が放った魔物であるなら、それは何かを狙っての事。例えばそうね、集団で近くに来た人間を襲えとか……近くの村や街を襲えとかね。この王都周辺を囲むように点在しているのなら、目標はここって可能性が一番高いかしら。目指しやすい目標だし」
「まぁ、かなり離れていても王城が薄っすら見えるくらいだから。漠然とでも目指すだけでも、十分だね」
どのように魔物に対して目的を与えるのかはともかく、とりあえず薄っすらとでも見える王城はいい目印にはなる。
王城だけでなく、王都は巨大な都市だし帝国が破壊工作をしているのを合わせると、陥落とまでは言わずとも被害を出すように狙っているだろう事は想像に難くない。
「そんな魔物達に対して、横からほんのりこっちに行くように……なんて諭しても無駄な事だわ」
「ほんのりって……魔力誘導はそんな感じなのかもしれないけど」
感覚的にわからなくもないけど、なんとなく話の内容にそぐわない気がするのは俺の気のせいか……。
「成る程ね。まぁ試してみる価値はあるかもしれないけど、帝国が仕組んでいる事ならほぼ無駄かもしれないと」
「そう言う事」
「じゃあ結局、それぞれの魔物を倒して行かなきゃいけないわね。りっくんがある程度潰してくれて、本当に助かったと思うべきね」
「まぁヘルサルから王都の道中で、見渡せる範囲にいた魔物は殲滅したから、数は減っているはずだよ。結構いたし、おかげで戻って来るのが遅くなっちゃったけど。あ、とは言っても集団じゃないような、危険そうじゃない魔物とかはそのままにしてるけど」
王都への移動中、発見した魔物は全てが集団だったというわけじゃない。
大抵エルサが発見して、俺達が戦うかどうかを判断していたんだけど、街道から外れた場所の上空を飛んでいたから、それなりに魔物が散見された。
単独だったり、数体程度の魔物は基本的に見逃していた。
じゃないと、王都に戻って来るのはあと数日は遅くなっていただろうし。
さすがに、理由がない場合を除いて見つけた魔物は全て殲滅なんて戦闘狂じゃないし、そんな魔物に対して憎しみを持っているわけでもないから。
「んー、ちょっと待って。ヒルダ、王都周辺の地図を持ってきてもらえるかしら? できるだけ、広範囲に見れる物を」
「畏まりました」
俺に手をかざして待ったをかけた姉さんが、ヒルダさんに地図を持ってきてもらう。
人が包まれるほどの大きさがある地図を、皆の前にあるテーブルに広げて覗き込む。
中心にあるのが王都として、その周囲の地形などが書き込まれている地図だ。
縮尺はわからないけど、大体ヘルサルと王都の距離その半分程度までの範囲ってところだろうか……結構広くまで見る事ができる。
「マティルデ、報告にあった魔物の集団は……」
「基本的に、南西に多くいます。そこから流れたのかなんなのか、東側にも多くいました。王都北方面にもいるはずですが、数としてはやはり南側の方が多いです」
小さな駒のような物をヒルダさんが一緒に持ってきて、それを使ってマティルデさんが知っている限りの魔物の集団の位置を地図の上に示していく。
おそらくマティルデさんが冒険者さん達を使って、まず討伐するより先に把握するために調べさせたんだろうね。
それによると、王都の東西南北で特に南側にいるのが多いのがわかる。
南に対して、他の方角にはその半分以下といった程度だろうか。
特に南西には多く、一番密集している所には重なるようにして駒が置かれていた。
南東……東南東くらいかな? ヘルサル方面には南西の次に駒の数が多いように見えるね。
「これを見ていると、一斉にその場で発生したのではない限り、南西から来た魔物が東に流れて行きつつも、王都を包囲しつつあるように見えるね」
「そうね。実際、魔物達は徐々に王都へと近づいてきているそうよ。全てではないのだけれど……私が、りっくんに早く戻って来るよう言ったのがわかったでしょ?」
「確かに……」
もしもに備えて、俺に近くにいて欲しかったとか、全てではないけど魔物の討伐wを頼みたかったとかだろう。
さらに王都内だけでなく国内で破壊工作が起こっているんだから、俺に早く戻って来るよう連絡をしていたのも納得だね。
「その場で、という事ではないけれど、全てが南西からというわけではないはずよ。隠していた研究拠点は……ここね。魔物が出てきたのならもう潰れているはずだけれど。それと、魔物を復元させるだけしておいて放棄していたのが、ここと……ここ。あとは……」
「本当なら、これだけ国の内部に食い込んでいたのね。拠点も、人も……」
「まぁ信じる信じないは勝手だけれどね」
マティルデさんに続いて、今度はレッタさんが帝国が作ったとされる拠点や研究施設の場所に、駒を置いていく。
俺達が行った事がない北西に研究施設があったようだ。
他にも東西南北様々な場所に、魔物を復元させていた拠点が合計八カ所程……ただ帝国に近いからか、南西だけで四か所あったから、マティルデさんが調べた魔物の分布とも当てはまる。
これは、姉さんが唸るのも仕方ない気がするなぁ。
それだけ、知らず知らずのうちに帝国からの侵略行為とも言える工作をされていたという事だから。
「えーと、私達が通ったのはここだから……」
さらに今度は、モニカさんを始めとした俺と一緒に来た皆の中で地図がわかる人が空を飛んで通って来た部分と、殲滅した魔物の集団の場所を記していく――。
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