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それぞれの希望に添える形で

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「いえ……以前は兵士になれたら、という事を考えたりもしました。ですが今は、リク様のお傍で役に立てるのなら、冒険者の方がいいです」
「わかりました。それじゃミラルカさんは、冒険者になり俺達が作るクランの一員という事で」

 アンリさんの時もそうだったけど、そのとき考えた事でクランのメンバーを増やしていってしまっているなぁ、俺。
 いやいや、今回はモニカさんとも話したし、俺が勝手に決めたって事にはならない……はずだ。
 ヒルダさん、もしくは姉さんがこうなる方向に持っていくよう、仕組まれている感も若干あるけど。

「ただ、本当に冒険者としてクランに入るのであれば、覚悟しておいてもらいたい事があります。っと、これは後々話しをしますね。今はそういう覚悟が必要だという事を考えておいてもらえれば」

 覚悟というのは、クランを作る目的が帝国との戦争に参加するためであり、所属する事はつまり、ミラルカさんも戦争に参加しなくちゃいけなくなる。
 そのための覚悟だ。
 ここではとりあえず他の女性達もいるし、後でミラルカさんの覚悟と一緒に、詳細を話してそれでもクランに入るかどうかの意思確認はするつもりだ。
 もちろん、さっき兵士になったらと考えたのと同じように、冒険者登録しても日が浅いし、経験なども不足しているだろうから、表立って戦わせるつもりは一切ないんだけど。

「は、はい! リク様のお役に立てるのなら、元々希望の一つでしたし、冒険者になる覚悟くらい何ともありません! ですがその、私なんかでお役に立てるのでしょうか……?」
「いやぁそういう意味ではなくて……まぁ今はいいかな。えっと、ミラルカさんはこれまで訓練と化を受けていないそうなので、その辺りも少し考えています。多少厳しくなるかもしれませんが」
「構いません、冒険者になり、リク様のためであるのなら苦にもなりませんから。それに、正直なところヒルダさんの使用人教育と比べたら、どんな訓練も厳しく感じないかもしれません……」

 ミラルカさんの言葉に、他の女性達もうんうんと頷いている……ヒルダさん、一体どんな使用人教育をしたんだろう。
 聞いてみたいけど、なんとなく怖いから聞くのはよした方がいい気もするなぁ……。

「ミラルカさんの意気込みはわかりました。詳細は後で話しますので、今はとりあえずこれで。使用人としてではなく、冒険者としてですね」
「は、はい! ありがとうございます、リク様!!」
「感謝される程の事ではないですよ」

 本当に冒険者になるのか、クランに入るのかはまだ正式に決まったわけじゃないんだからね。
 もしかしたら、話しを聞いて俺に感謝する気持ちがなくなる可能性もあるし……何せ、役に立ちたいという女性に対して、戦争に参加させて戦力として利用しようとしているなんて、見方によってはそう感じる人もいるだろうくらいの事だしね。

「それじゃ、ミラルカさんはこれでいいとして……えっと、ナラテリアさんと、カヤさん、でいいですか?」
「「は、はい!!」」

 今度は……と視線を向けると、俺が部屋に入って来た時と同じように緊張した様子で、気を付けをしながら返事をする二人。
 ミラルカさんは活発な印象を受ける女性だったけど、こちらの二人のうちナラテリアさんの方は、釣り目気味で少し厳しい印象を受ける女性だ……眼鏡とか似合いそうだね、ないけど。
 カヤさんの方は、先程おずおずとでも俺と話た気弱そうな女性だ。
 ただ気弱そうな雰囲気でも、ちゃんと聞くべき事は聞く度胸みたいなのは持っているんだろう、じゃないとさっき俺に質問を率先してする事はできないだろうから。

 ちなみに、八人いる女性は見た感じ全て二十歳前後というところだろう。
 マティルデさんという年齢不詳な女性がいたりはするから、見た目だけで確実な年齢を言い当てる自信はないけど……多分そう大きく違わないと思う。

「ナラテリアさんとカヤさんは、元々商売をしていたとか?」
「は、はい。と言っても、私がというわけではなく商人の旦那様に付いて、雑務をしていたくらいですが……」
「わ、私もそうです。あまり表に出て物を売るなどは得意ではありませんから、裏方ばかりやらせていただいていました」
「ふむふむ、大体聞いた通りですね」

 一言で商売と言っても、実際に行う仕事は様々だからな。
 ナラテリアさんの言っている雑務というのは多分、経理などの計算関係や在庫管理とか、そういう事だろう……まぁ、ヒルダさんに聞いていたんだけど。
 カヤさんはいざという度胸はありそうではあっても、気弱そうな印象からあまり表で売り子をするタイプではないのも、感じた雰囲気そのままだ。
 二人共、どちらかというと裏方……要は事務方みたいな仕事をこれまでやって来たと考えれば、これから提案する内容にも合っている気がする。

「先程、ミラルカさんにクランを作ると話しましたけど……そこで働く人が不足しているんです。まぁまだ準備段階なので、何が不足しているかもわからないくらいではあるんですけど」

 そう言って苦笑する。
 クランに必要な、というかクランを作る事で発生する仕事なんかは、まだ何があるのかとかまではっきりわかっていない。
 とりあえず、冒険者さん達を集めて、パーティだけにこだわらず依頼をこなしたり、色々と協力しやすくなる程度にしか考えていなかったからね。

「ただそれでも絶対に必要な仕事があるんです。俺達だけでなく、クランに所属する冒険者さん達の報酬とか管理とか……まぁ要は商品を扱って売買するわけではないんですけど、裏方が必要なんですよ」
「な、成る程……?」

 要は、事務方が必要って事だ。
 最初は冒険者ギルドの依頼に関しては、冒険者さん達が判断する事になるだろうけど、それを適正な人たちに任せるとか、さらに言えば報酬の分配など、お金に関する事もこちらである程度やる必要があるはずだ。
 それぞれの冒険者さん達だけで全てやるなら、俺が作るクランの目的はともかくとして、他でもあるらしいクランというもの自体が意味のないものになってしまうからね。
 お金に関しては、俺達のパーティで言えば基本的にモニカさんに任せている部分が大きいし、クランでも多少はやってもらうつもりだ。

 モニカさんもそのつもりみたいだし。
 けど、あくまでそれは兼任になるし、モニカさんは冒険者だからね。
 専任というわけではないし、全て任せてしまうとモニカさんがかかりっきりになってしまうだろう。
 だから、ギルド職員みたいにナラテリアさんとカヤさんの二人を雇えば、完全に解決とは言わないまでも円滑に進めるようになるんじゃないかと考えた。

 ミラルカさんの時もそうだけど、使用人として王城が雇っているのに引き抜き見たいになっているのは、はっきり明言はしていないけど問題なさそうだし。
 ヒルダさんは何も言わないし、むしろこうするように姉さん含めて仕向けられた感があるからね。
 まぁ、訓練場でお世話係を選ぶのを任せたけど、その後に姉さんとヒルダさんが話してこうなったんだろう、と今では考えている。
 それはともかくだ……。

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