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緊急の救助活動
「すみません、先に行かせてもらいます!」
「申し訳ありません、頼みます!」
「はい!」
走る速度の問題で、少し遅れ気味だったのでアルネと同じく俺達が先に行く事にした。
アマリーラさん、リネルトさんはさすがの身体能力というべきか、走る俺に付いて来ているけど……中隊長さんには早すぎたみたいだ。
まぁ、中隊長さんは重い金属の鎧も着ているからね。
ともかく、黒煙を目印にアマリーラさん達と一緒に走り続ける。
場所は王城の南、市街地というか大きな通りから外れた、住居が立ち並ぶ場所だ……!
「……これは!」
「早く、火を止めろ! 水を掛けろ!」
「崩れるぞ! 離れろ!」
数分程度だろうか、到着したその場所は煙が辺り一帯を包み込み、複数の家が燃えて混乱を極めていた。
近くに住んでいる人か、駆け付けた人かわからないけど、水をかけて消火をしようとしている人、激しく燃えて建物の倒壊から逃れる人、茫然と眺める人等々がいた。
怒号が飛び交い、動き続ける人もいるけど統率が取れる人がいないためか、皆バラバラで有効な手段が取れていないように見えた。
突然の事で混乱しているんだろうから、当然かもしれないが……。
「いったい何が……! すみません、何が起こったんですか!?」
飛び交う怒号に負けないよう、声を張り上げて呆然と燃える建物を見る人に声をかける。
体を震わせているその人は、俺の声でようやく思考を取り戻したかのようにハッとなった。
「と、突然、とんでもない爆発が……爆発が起きたんだ!」
「爆発……」
爆発が、爆発が……! と叫び続けるその人の言葉で、少しだけ状況がわかった。
おそらく、爆発により衝撃と共に爆炎が巻き起こり、建物を倒壊させさらに火の手を上げたのだろう。
混乱している現場で正確な情報は得られないから、それが人が爆発したからなのか、それとも別の何か七日まではわからないけど……とにかく今は、この場所をなんとかしないといけない。
「魔法が使えたら、なんとでもなったとは思うけど……!」
それこそ、大量の水を発生させて辺りに降り注がせて消火する、とかもできただろう。
建物がさらに倒壊する恐れがあるため、単純に水をぶっかけるのは危険かもしれないけど……その場合は、水を操る能力に長けた水の精、ウォータースピリットのウォーさんが呼び出せれば何とかしてくれそうでもある。
けど、今の俺にはできない……。
「くそっ! どうすれば!」
思わずそう叫んでしまう。
周囲の状況からの影響もあるんだろう、俺自身も焦って何をどうしたらいいのか思いつかない。
「落ち着くのだわリク。ここで、混乱して焦って考えても何もならないのだわ」
「エルサ、そう……そうだね……うん。ありがとう……」
立ち込める煙のせいで、深呼吸をするとまではいかないけど、エルサの落ち着いた静かな呼びかけで少しだけ落ち着く。
焦る気持ちはまだまだあるけど、どうしたら、どうすれば、と考えるだけでまとまらない状態は脱出できたと思う。
「アマリーラさん、ここでは火事が起きた際にどういう対処をする事が一番多いですか?」
「……はい。既に火の手が回っている建物を破壊し、周囲へ燃え広がるのを防ぐ事が最優先でしょうか。その後、または同時に燃えている場所の消火に当たる事が多いかと」
「成る程……」
建物には当然消火器なんて物はないだろうし、対処法としては昔の日本とそう大きく変わらないようだ。
密集している事が多い住居群で、隙間が少ないから一度火の手が上がれば際限なく燃え広がるかの世がある。
消防隊の江戸時代で有名な火消というのは、火事が起きている場所を報せると共に、消火活動をしつつ周囲に燃え広がらないよう建物を破壊。
さらに、逃げ遅れた人の救出などを行っていたらしい……と何かで聞いた覚えがある。
それが本当に正しい歴史かはわからないけど、とにかくそれと同じような火事の対処法になるわけだ。
「それじゃ、アマリーラさんとリネルトさんは、逃げ遅れている人がいないかの聞き取りと、倒壊するかもしれに危険な建物近くの人を非難させてください! 一人でも多くの人を助けるんです!」
「はっ! 身命に賭けて、リク様のご命令を遂行し、無駄な命の消費を食い止めて見せます!」
「了解しました!!」
まずは閉じ込められている人の把握、それから今も音を立てて崩れる建物から逃げる人がいる。
それを助けるのをアマリーラさん達に一任。
リネルトさんはいつもの間延びした口調ではなく、はきはきとした声で応えてくれる……ヒュドラー戦以来だけど、それだけ切羽詰まった状況だと理解しているんだろう。
「エルサは、とにかく水を魔法で! 直接建物に当てたら危険だから、少しずつ……周囲に撒くようにお願い!」
「わかったのだわ!」
魔法が使えない俺の代わりに、エルサに魔法で水を出してもらう。
くっ付いていた頭を離れ、魔法の準備に入るエルサ。
直接建物にぶつけると、ただでさえ燃えてもろくなっているから更なる倒壊を招く恐れがあるから、イメージとしてはスプリンクラーのように水を撒く作業を頼む。
消防車のように勢いよく水をかけて消火したいけど、まだ建物近くには多くの人がいて、しかも倒れている人もいるからね。
煙を吸って動けなくなったか、爆発に巻き込まれて怪我をしたのか……それとも燃える建物や周囲の混乱に、頭が働かず体を動かせていないのか……。
助けに行かないと……でも、アマリーラさん達も動いてくれているけど、燃えている範囲と建物の数、それに混乱する人々と動けない人……。
手が足りない……!
「優先順位を決めないと……全てを救えるなんておごりは捨てなきゃ。魔法の使えない俺にできる事なんて、限られているんだから。まずは、アマリーラさんと達のように、倒壊しそうな建物付近にいる人の非難を促して……」
湧き上がる焦りを抑えつけ、自分を落ち着かせるようにゆっくり口に出しながら考える。
それと同時に、一番近くで動けなくなっている人の方へと足を向ける。
よし、エルサは離れたけど大丈夫、落ち着いている……。
「大丈夫ですか!? ここは危ないので、すぐに離れて下さい! 歩けますか!?」
「は、はい……な、なんとか……」
倒れて人を助け起こし、歩けるかの確認をして避難してもらう。
幸いその人は、突然の事に腰を抜かした程度だったんだろう、爆風か何かで多少の擦り傷くらいはあったけど、よろよろしながらも歩いて自力で避難するため離れて行ってくれた。
次は……。
「あ、足が……」
「大丈夫です。落ち着いて、俺が運びますから!」
落ちて来る建材に巻き込まれたのか、足に大きな裂傷を負って立つ事すらできない人を抱え上げ、場所を移す。
駆け付けた人だろう、比較的冷静で逃げる人などの手助けをしている人を見つけ、その人に任せる。
数分程度だろうか、その後も人を運ぶ、声をかけて非難を促す、立つ補助をする等々、救出作業を続けるけど……やっぱり人の手が足りない!
わかっている事を叫びたい衝動に駆られながらも、救助する手や動きは止められなかった――。
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