1,818 / 1,955
ティアラティア獣王国第四王女アマリエーレ
しおりを挟む「……って、ん? 俺だけの声じゃなかったような……?」
そう思って、キョロキョロと辺りを見ると、姉さんが頭を抱えているのを発見した。
「教えられていなかったリクはわかるが、どうしてお前達まで驚いているのだ……気付いていなかったのか?」
「リ、リク様の従者、とご本人から言われておりましたので……まさか、ティアラティア王国の王女殿下が、傭兵であり、従者であるとは露程も思わず……」
「はぁ……まぁ、私も最初は気付かなかったが、なんとなく所作が堂に入るように見えて、そうではないかと徐々に確信を深めたから、なんとも言えんがな」
溜め息混じりにそういう姉さん。
そういえば、アマリーラさん……じゃないアマリエーレさんを王城に連れて来て、姉さんと会った時驚いてはいたけど、礼儀的な事で戸惑っている様子は一切なかったっけ。
あれは姉さんが気にしないし、リラックスモードだったからすぐに慣れてくれたとか、そんな風に考えていたけど、実際に慣れていたからだったのか。
大臣さんはアマリエーレさんと、直接接する機会が少なかったから気付けなかったんだろう。
ちなみに、宰相さんだけは姉さんと同じく驚いていなかったから、鋭い人で気付けていたのか……と思ったけど、閉じている目の瞼や眉がぴくぴくと動いているし、口を強く引き結んでいるから、驚くのを我慢したとかっぽい。
本人と、最初から知っていたであろうリネルトさんを除けば、この場では姉さんしか気づいていなかったって事だろうね
「えぇっと……本当に、アマリーラさん……じゃない、アマリエーレさん? は獣人の国の王女様、なんですか?」
「はい、間違いありません。ですが……国を出てからの偽名とはなりますが、リク様にはこれまで通りアマリーラとお呼び下さい」
大臣さん達が驚き、姉さんが溜め息を吐いているのを見てほんの少しだけ驚きが落ち着いたため、改めてアマリエーレさんに聞いてみると、肯定するように深く頷いた。
嘘や冗談を言っている雰囲気じゃないし、リネルトさんが何も言わないしで、本当なのは間違いないんだろう。
まぁ、この場で嘘や冗談を言うような人じゃないっていうのは、わかっているけど。
「でも……」
「この国では、私は獣人の傭兵であるアマリーラです。そして、リク様の忠実なしもべであろうとしているアマリーラでもあります。ですので、リク様にはそちらで呼んで頂きたく……!」
さすがに、本名がわかったのに一国の王女様を偽名で呼ぶのはどうなんだろう? と思ったけど、ズイと顔を近づけるアマリエーレさんの圧が凄い。
これは、呼ばないと納得してくれなくて駄目なやつらしい。
「じゃあ、はい、わかりました。アマリーラさん」
「はい、リク様!」
改めてアマリーラさんの名を呼ぶと、満面の笑みになり、左右に尻尾を振って嬉しそうにしながら頷いた。
猫っぽい耳と尻尾を持っているのに、まるで犬みたい……なんて考えるのは、王女様に対して失礼だな、うん。
「でも、どうしてアマリーラさんは王女様なのに、この国で傭兵を……?」
「んんっ! リク、すまないがその辺りの話は後にしてくれるか?」
「あ、はい……わかりました。申し訳ありません」
姉さんに言われて気付いた、そういえばここは俺の部屋でもなんでもなく、今はアマリーラさんから事情を聞く場でもなかったね。
後で改めて、アマリーラさん本人から話を聞こう。
けど姉さんも、興味津々という雰囲気をなんとなく滲み出しているし、俺を見る目は先に聞いたら駄目と訴えているようでもあった。
……皆揃ってから、話しを聞いた方が良さそうだね。
「して、アマリエーレ殿下の事情はさておいてだ……獣人の国への協力要請なのだが……」
「はい、女王陛下。リク様がアテトリア王国に味方する以上、協力をお約束いたします」
なんというか、王女様ってわかったからだろうか? 姉さんと話すアマリーラさんの仕草や口調が妙に優雅に見える。
多分、正体が明かされたからアマリーラさん自身も意識してそう振る舞っているのかもしれないけど……半分くらいは俺の先入観みたいなものが混じっていそうだ。
さっきの優雅なカーテシーとかいうのに、引きずられている可能性も高いかな。
「私は獣王陛下の第十子であり、第四王女ですが、陛下には私からも協力とリク様の事を伝えます。必ず、アテトリア王国にとって心強い援軍となる事でしょう」
第十子って事は十人目の子供だから、第四王女ならその上にお兄さんが六人と、お姉さんが三人いるってわけか。
子沢山だなぁ……。
それにしても、一応は国を出ているのにアマリーラさんが、獣人の国……ティアラティア王国だったっけ? その国の協力を簡単に約束してもいいのだろうか?
そう思って少しだけ首を傾げていると……。
「獣王陛下は子煩悩ですからぁ。特に下の方の子であるアマリーラさんが言えば、軍くらい派遣してくれるでしょうねぇ」
なんて、姉さんと話すアマリーラさんを余所に、コッソリとリネルトさんが教えてくれた。
子煩悩で軍を動かすのは……どうなんだろう?
あと、下の方の子と言っていて、一番下とはリネルトさんが言わなかったのは多分、アマリーラさんの下にも弟妹がいる可能性があるのか。
まぁ、今は関係ない事だけど。
「さすがに子煩悩だからって、軍を動かすくらいのお願いを聞いて、戦争に参加させてもいいんだろうか? って思ってしまうんですけど……」
「問題ありませんよぉ。アマリーラさんはぁ、リク様の意思に従いますが帝国のやり方には腹を立てていましたからぁ……」
リネルトさんの話によると、もしアテトリア王国が帝国との戦争で甚大な被害を被った……悪く言えば負けて侵略された場合、いずれ帝国の手は獣人の国にも及ぶだろうと考えていたらしい。
そして、俺が参戦する方向で動いていたのもあって、今のうちに帝国を叩いておくべきとも。
ここからはリネルトさんの推測も混じっているけど、俺がこの場ではっきりと参戦の意思を示し、帝国を叩きのめす決意を語った事で、獣人の国からの援軍という確実に勝利を掴み取るためには必要だと考えた。
さらにそこへ、女王陛下である姉さんからの協力要請で、渡りに船だったってところだろう……との事だ。
それから、アマリーラさんは戦う強さだけではないけど、力が序列を決める獣人の国において、上から数えた方が早い方だとか。
なので、そんなアマリーラさんは国を出ている今でも、ティアラティア王国内での発言力は高いらしい。
要は、国を離れている王女様なのに、その王女様という地位プラス、子煩悩な獣王様と発言力の高さから無視するどころか、獣人の国としても問題なく軍を動かせるだろうとの事だ。
獣人の国、ティアラティア王国……それでいいのだろうか? と少し思ったけど、そういえば以前完全な一枚岩の国だと聞いた。
力も含めて、人間主体の国と違う判断基準などがあるんだろう、と思う事にしよう。
それぞれの国で、国民性とか方針とか色々あるはずだし、ただの冒険者である俺がわからない何かがあるんだろうしね――。
0
あなたにおすすめの小説
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる
暁刀魚
ファンタジー
社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。
なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。
食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。
そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」
コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。
かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。
もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。
なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。
カクヨム様にも投稿しています。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる