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近くの村の様子見へ
しおりを挟む「助けが必要なら別だけど……エルサ、人間の方に大きな被害が出そうだったりする?」
「多少は出るのは仕方ないのだわ。けど、リクが心配するような事にはならなそうなのだわ。着実に魔物の数が減って、人間は減っていないように見えるのだわ」
「成る程」
なら、魔物を倒して行って予想通り有利に戦いを進めているって事だね。
「助けが必要でないのなら、ワシらは行かなくていいじゃろうの。冒険者が堂かもわからんが、もし冒険者なら知らぬ者が横から割り込んでもあまり良い事にならん。手柄を横取りされたなどと言われる事もあるしの」
「そうですよね」
突発的に遭遇して戦闘になったならともかく、正式に依頼を受けた冒険者なら特に、魔物討伐だと討伐数なんかも報酬に加味される要素だから、邪魔をしたと思われる可能性がある。
危険だと思って助けに入ったら魔物を横取りしたとかでトラブルに発展した、なんてのもよく聞くからね。
順調に魔物を倒して行っているのなら、積極的に介入しない方が良さそうだ。
「もし魔物の方が優勢じゃったら別じゃがの。自分達以外の誰かを助ける戦闘というのも良い訓練になるじゃろうが、今回はそうではないようじゃ」
「そうですね。じゃあ、あちらの魔物はその人達に任せるって事で……」
大丈夫そうという結論で、余計なお世話にならないよう割り込むのをやめる事にする。
魔物を発見したのか、と話が始まった時から戦闘態勢に入っていた、モニカさんやアマリーラさん達にもそう伝えた。
アマリーラさんが特にやる気で、少し残念そうにして尻尾が垂れていたけど……俺やモニカさん達の実践訓練って側面もあるから、アマリーラさんが張り切るのは控えて欲しいところだなぁ……。
「じゃあ、次はまた別の魔物の集団を探しに……」
「リクさん、ちょっといいかしら?」
「うん? どうしたのモニカさん?」
別の魔物の探しに行こうとしたところで、モニカさんに話しかけられる。
「ここから少し北西に行った場所に、確か村があったと思うの。地図で見ただけだけど……確か、以前依頼で魔物討伐を受けた場所よりも南の位置で、近い場所だったからなんとなく覚えているわ」
「村かぁ。そういえば、キマイラと戦ったのもこの近くだったっけ。フィネさんと初めて会ったのも底だったね」
モニカさんが言っているのは、リーバー達とは違う王都を襲撃したワイバーンの素材を回収するついでに、魔物討伐の依頼を引き受けた時に行った村の事だろう。
山奥にあった村で、その時付近の地図を見て確認していたし、なんとなくそれで覚えていたんだと思う。
モニカさんが気にしている村は、王都から街道を西に向かった先にある街の中継地点のようなもらしく、もしかしたらエルサが発見した魔物と戦う人達も、そこからか街の方から派遣されて来た冒険者さんなり兵士さんなりって可能性もあるね。
完全にという程ではないけど、緩やかに分断されている状況のため、王都は王都、街や村は街や村でそれぞれ対処に動いているわけだし。
あとそれとは別に、王都西の街道付近にキマイラが棲み付いているため、討伐をとの依頼も受けたりもしたっけ。
無謀にも、そのキマイラに挑もうとして俺達と出会あったのが、フランク子爵……そろそろ伯爵と呼んだ方がいいかもしれないけど、その人の息子であるコルネリウスさん。
そのコルネリウスさんが率いていたのが、フィネさんだったね。
「……その節は、コルネリウス様が大変ご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした。あの時リク様がいなければ、私もコルネリウス様も、そしてカルステンも生きて戻れなかったかもしれません」
「あーいえ、そういうつもりで言ったんじゃありませんから、気にしないで下さい」
アマリーラさん程ではないけど、小柄な体をさらに縮こませて頭を下げるフィネさん。
まぁ確かに、Aランク相当のキマイラを、Bランクのフィネさんがいたとはいえ、コネも含めてCランクのコルネリウスさんともう一人、カルステンさんの三人で討伐するつもりだったという、どう聞いても無謀としか感じられないものだったからね。
かなり危険……という言葉で済ませられない状況だっただろう。
謝られる必要はないけど、フィネさんの言葉は決して大袈裟じゃない……しかも、一体ですら無理無茶無謀なのに、キマイラは複数いたし……。
ちなみに、カルステンさんというのはフィネさんの同僚で、魔法をメインに使うタイプの冒険者だね。
「とにかく、モニカさんの言うその村の方に様子を見に行ってみようか」
「えぇ。空からだと実感が薄いけど、近い位置に魔物の集団がいるのが少し気になって……一応様子を見ておきたいの」
「うんそうだね。もし別の魔物なんかがいたら、排除しておかないといけないし」
王都を囲むように分布されている魔物の集団だけど、一集団としてはともかく全体を誰かに統率されているわけではないので、その移動先などは自由だ。
村や街のある方へ向かっている集団もいるらしいし、それらの脅威を取り除くのも俺達の仕事の一つだしね。
もし村の近くに魔物の集団が他にいたら、倒しておかないといけないからと、モニカさんの案に乗る事にした。
「……ここはとりあえず無事、かな?」
「そうみたいね。良かったわ、魔物に襲われてなくて……もしかしたら、近くに魔物が迫っているとわかって、打って出たのがさっきエルサちゃんが見つけたのかもしれないわね」
少しだけ移動して、モニカさんが気にしていた村を空から遠目に眺める。
見る限り特に何もなく平穏そのものに見えるから、魔物には襲われていないんだろう。
はっきりと見えないけど、村を囲む柵の外側に人と思われる姿があるようだから、警戒はしているのかもしれず、本当に平穏と言えるかは微妙かもしれないけどね。
「……そうでもないのだわ。危険かもしれないのだわ」
「エルサ?」
モニカさんとホッとしたのも束の間、少し訝しがるエルサの声。
「魔物が近付いて行っているようなのだわ。このままだと、あそこが襲われる可能性があるのだわ」
「そうなの? でも、見る限りじゃ魔物の姿は見えないけど……いや、向こうのかなり離れた場所に、何かいるような……?」
エルサの言葉を受けて、にわかに警戒態勢に入る皆。
その言葉を確かめるように、周囲を見渡すと村の南に集団と思われる何かが薄っすらと見える。
遠すぎて、それが人の集団なのか魔物なのか、はたまた生き物かどうかすらわからない……さすがに遠すぎて動いているのすら見えないし。
「違うのだわ。あれももしかしたら近付いているかもしれないけどだわ、そっちとは逆の方にいるのだわ。結構近いのだわ」
「逆? って事は……」
「あっちは森ね。魔物の大きさとか種族にもよるけど……さすがに森の中にいるとこちらからは見えそうにないわ」
村の北側、そちらは森が広がっていて空から魔物がいるかどうかの確認は難しい。
その森は山へと続き、以前依頼で魔物討伐を受けた村に続いているはずだけど……あちらはまだまだ遠い。
ともあれ木々に邪魔されて、エルサが言うような魔物がいるかどうかは俺達じゃわからないね――。
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