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反撃のリク
しおりを挟む「ロックオン……ってところかなっ!」
急ブレーキをかけ、速度がかなり緩んだアクリスに対し、先程と同じく後ろから追いかけて急所を一突きして倒す。
走りながらだから、がっつり集中して意識を溶け込ませるよりも時間がかかったけど、少しずつ魔力察知をして急所を探していた。
一度急所に狙いを定める、どこにあるかを察知できればロックオンしたのと同義なのか、多少集中がそがれて他に意識を向けても、しばらくはその箇所がわかる。
まぁ単純に俺がその場所を覚えたから、っていうのもあるだろうけど。
ただ、個体差なのか急所はそれぞれが全く同じ場所にあるわけではなくて、数センチくらい微妙なズレがあるため、ちゃんと個別に調べないといけなくてちょっと厄介だ。
とはいえそれもほぼ終わり、あとは……。
「こっちの番だ! ってね!」
群れ全ての急所を探り終え、魔法のタイミングなども魔力の動きから大体わかった。
いつまでも逃げているわけにもいかないしと、こちらから反撃に出る。
今度は魔法を使ってこちらを狙う集団に向かって一直線。
アクリスもそれを黙って受けるわけではなく、魔法と共に正面からアクリスが俺目掛けて突進!
だけど、その突進をいなして流し、降り注ぐ魔法を掻い潜り、その奥にいるアクリスの角を掴んで別のアクリスへと投げ飛ばし、怯んだアクリスの急所を一突き。
さらに別のアクリスが迫るのを、突き刺した急所から剣を抜く動作と一緒に避け、横から飛んできた土の槍を掴み、体を回転させて勢いを殺さずむしろ加えて急所目掛けて投げ返す。
魔力察知で急所をロックオンしたからって、俺の攻撃全てがそこに追尾するなんて事はないけど、狙いは正確だ。
特にアクリスは、走って逃げながらの観察で魔法を使う時は必ず動きを止めているとわかっていたから、追尾する必要もない。
魔法を使うさい、タメのようなのが必要なんだろう、走るどころか少しの間動かなくなる。
その長さで、魔法の形……土の槍だったり塊だったり、その大きさや形が変わるみたいでもあった。
貫通力がありそうな土の槍の、切っ先が鋭ければ鋭い程、また土の塊は大きければ大きい程、タメに時間がかかるようだからね。
それでも、一秒から二秒の差くらいだけど……一瞬の動きが生死を分ける戦闘においては、その一瞬が大きな隙になるってわけだ、多分。
そうして、その隙をついて、時には魔法を無理矢理掴んで投げ返しながら、アクリスの群れの中心部に入り込んで戦う。
魔法を掴むのは、炎とか風、それに水系の魔法でなくて良かったと思う……炎だと触れるだけで当然熱いし、風や水だと掴んで投げ返すとか無理だしね。
氷なら掴めるかもしれないけど、絶対冷たいし、下手したら手がしもやけになっちゃう。
ともかく、群れの密集度が高い中心に入り込めばこちらのもの。
アクリス同士がぶつかる可能性もあるため、どういう意思疎通をしているのかはわからないけど、連携ができるからこそ突進ができなくなる。
あとは降り注ぐ魔法を掻い潜りながら、ロックオンした急所を貫いて数を減らしていくだけ。
油断はもちろんできないし、するつもりはないけど、こうなるともう作業の感覚が強いよね……。
「よし、あと三体……! はぁ!」
魔力による防御力が著しく低下しているため、土の魔法に一度当たったら台無しになるだろうと、細心の注意を払いながら、次々とアクリスの急所を貫き続けてしばらく。
もう片手で数えられる程……動いているアクリスが残り三体に。
そのうち一体の急所を貫いた。
「うぉっと! うーん、まぁ頑張った方、かな?」
剣をアクリスの急所に突き刺した瞬間、入り込んだ剣身を残して根元から錆びた剣が折れた。
土の魔法を払い落とすのにも使っていたし、魔力を少し多めに流してはいたけど……それでも二十体前後のアクリスを倒していたからね。
元々限界近いというか、錆びて限界を通り越していた剣だから、こうなるのも仕方ないか。
さすがに成果はちゃんと出しているから、ここで折れてもエアラハールさんに怒られたり……しないよね? なんて考えつつ、折れてほぼ柄だけになった剣を、アクリスが放った土の塊に投げてぶつける。
「一応、予備にもう一つ持ってきてよかったぁ……まぁ最悪拳でって方法もあるし、数も少ないからなんとかなっただろうけど」
それに向こうの魔法を利用する方法も使えるから、剣がなくなってもなんとかなる。
と考えている先から飛んできた土の槍……速射を優先したのか、槍というより棒に近い尖っているかどうかも怪しい物を掴み、投げ返す。
飛んで来る魔法の数も、アクリスが減るにしたがって少なくなっているから、対処がしやすくなったなぁ……魔力感知ができているおかげで、どこから飛んで来るのか見なくてもわかるのも大きいか。
「さてこれで後は一体だけに……って、えぇ!?」
投げ返した土の槍、というか棒が急所に当たれば残るアクリスは一体だけ……と思った瞬間、俺が投げ返した物が、地面からせり上がった土の壁に阻まれた。
壁と棒、両方が砕けて地面に落ちる。
こんな事もできたんだ……土の壁は薄かったから、弱い攻撃を防ぐくらいしかできないだろうし、有用性は低かったから使ってこなかったんだろうけど。
でも、なんで今ここで……?
「あ! 逃げた!?」
疑問に思いつつも、それでも止めを刺さなきゃと動こうとしたら、突進してくるのと同じ勢いで別方向へと走るアクリス。
ユノ達のいる、畑がある方向ではなく、でたらめな方向というか何もない方へ向かってだ。
どこへ向かうとかの目的意識というより、ただただ俺から逃げるという意思を感じる。
「でも、逃がさな……くっ!」
追いかけようとする俺の前に、残っていたもう一体のアクリスが立ちふさがる。
それと同時、一秒にも満たないタメで目の前にせり上がる土の壁。
これは、攻撃用の魔法よりもタメは短くて済むのか……。
簡単にぶち破れそうではあるけど、いきなり視界が塞がれたために二の足を踏んでしまう俺。
その間だけで、魔力感知から外れる逃げて行ったアクリス。
二体になった時点で、どちらか片方だけでも逃がして生き残らせようってところなのか……変なところで知恵が働くんだなぁ。
なんとなく、アクリスに対して人間っぽさを感じてしまった。
「逃がしたらどこに行って、何がどうなるかわからないし……くっ! このぉ!」
逃げたアクリスがその後どうなるか……冒険者さんや兵士さんに見つかって討伐されるならまだしも、どこかの畑や村に辿り着いて、多少なりとも被害をもたらしたら俺の落ち度だ。
そう考えて目の前の土の壁を破り、邪魔するアクリスをまず先に倒して追いかける!
でも焦っていたからか、こういうのは考え通りに上手くいかないものらしい、壁を体当たりで粉砕した俺の眼前には、立ちふさがるアクリスが魔法の塊を放っていた。
視界を塞いで俺を戸惑わせているうちに、次の魔法を準備していたんだろう……中々上手い――。
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