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嫌われマリナの日常

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休日の朝。
リビングで宿題をしていると、廊下から怒りがこもった大きな足音が近づいて来るのがわかった。

ドンッ ドンッ! ドンッ!! ガチャッ!!


「マリナッ!また私の化粧品を勝手に使ったわねっ!?」

乱暴にドアが開けられた瞬間、鬼の形相となった母が顔を出し、部屋中に怒声が鳴り響く。

「っ!?わ、わたしじゃないっ!知らないよっ!!」

「嘘を吐くんじゃないわよっ!!この化粧水っ!こんなに減ってっ!これ高かったんだからねっ!?」

中身が半分ほど減った化粧水が、目の前に突きつけられる。
…だが、それは初めて見るもので、使った覚えは全くなかった。

……第一、わたしはこれまで、母の化粧品を勝手に使ったことは“一度も”ない。

「レイナだって、あんたが使ってるの見たって言ってるのよっ!」

「そうだよっ!レイナ、おねーちゃんがきのう、つかってたのみたもんっ!」

母の後ろからひょこっと現れた年の離れた妹が、わたしを指差しながら答える。

「わ、わたしじゃないっ!絶対レイナが使ったんだよっ!」

「レイナが嘘つくわけないでしょっ!!あの“嘘つき”の血が流れたあんたがやったに決まってるわっ!」

「レイナがうそつくなんて、おねーちゃんひどいっ!!」

「嘘つきのマリナにはお仕置きが必要ねっ!今日はどんな罰にしようかしらっ!」

…やっぱり。
また“いつもの”流れになってしまった。

母が言う“嘘つき”は、わたしと血の繋がったお父さん“だった人”のことだ。

わたしを産んだ後、お父さんは他の女の人と付き合い始め、それが母にバレて喧嘩別れしたらしい。

その後わたしは母の方に引き取られ、物心つくまでは普通に生活していた。

……わたしの“普通”が壊されたのは、母が別の男の人、現在の父と結婚し、妹が生まれてからだ。

母は妹に溺愛し、その反面わたしには冷たく接する日々が続いた。

そしてわたしへの扱いはどんどん酷くなっていき、母のストレスの矛先として、お仕置きされる日々が始まる。

そんな様子を長年見てきた妹は、イタズラのツケをわたしに押し付ける、生意気な性格に育っていった。

「マリナ、聞こえないのっ!早く着てる服を全部脱ぎなさいっ!!」

「……はい」

こうなった以上、ここで逆らえば“もっと酷いお仕置き”を与えられるだけとわかっているわたしは、渋々従うしかない。

持っていた鉛筆をテーブルに置き、立ち上がると、2人の目の前で脱衣を始める。

シャツ、スカートと順に脱ぎ、ブラのフォックを外す頃には、目の前の景色がぼやけ出す。
この視界の状態でも、目の前の2人が嘲笑った表情を向けてきているのは判別できた。

ブラを脱ぎ、小ぶりの胸があらわになる。
震えながらショーツに手をかけると、そのまま一気に下に下ろす。
脱いだ服を綺麗に畳み、気をつけの姿勢になった。

「もう中学生になったって言うのに、胸も小さくて、お股も子供のままじゃない。…誰に似たんだか」

「っ…」

気をつけの手にぎゅっと力を込めながら、必死に耐える。
…大体、胸が小さいのは母だって同じだろうに。

「じゃあ四つん這いになりなさい。今日は定規でお尻百叩きにするわ」

「…はい」

テーブルの上に置いてあるステンレス製の長い“お仕置き用の定規”を手に取った母の命令に、わたしは従うしかなかった。

「わー、おねーちゃんのおしりのあな、みーえたっ!はっずかしー!」

「…いやぁ」

妹の煽りにピクッと身体が反応し、全身を震わせながら耐える。
涙が頬を伝い、床にポタッ、ポタッと垂れる音が虚しく響いた。

素っ裸で屈辱的な姿勢を取らされ、更には無防備なお尻を恐ろしい道具で叩かれる。
この年のわたしには、恐怖心よりも恥ずかしさで顔が真っ赤に染まっていった。

「じゃあ始めるわよ」

「お、お仕置き、お願いします…」

母はわたしの斜め後ろに片膝立ちとなり、定規を持った腕を大きく振り上げた。

わたしは決められたお願いの言葉を嫌々口にし、ギュッと目を瞑る。

バヂンッ!!

「いっだいっ!!」

定規が当たった場所に来る強烈な痛みと、その後に来る熱さから、わたしの姿勢が崩れそうになる。

バヂンッ!!

「ああ゛っ!?」

痛みと熱さが引かない同じ部分を打たれ、悲痛な声が漏れた。
ピッタリと張り付いた定規がお尻から離れると、そこはズキズキと熱を持ち、ひどく腫れていることがわかる。

全身から流れる汗が、床を濡らしていく。

バヂンッ!!バヂンッ!!

「あ゛っ、ん゛っ!!」

今度は反対側のお尻を連続でぶたれ、新たに2箇所、定規の痕が作られてた。

「あんたが化粧をするなんて、何年も早いのよっ!まだまだ子供の身体のくせにっ!!」

バヂンッ!!バヂンッ!!バッヂィィンッ!!

「いっだぁぁいっ!!だからっ!わだじじゃないのにぃぃっ!!」

「まだ嘘を吐くのっ!この生意気なお尻は!!」

バッヂィィンッ!!バッヂィィンッ!!

「いっぎゃぁぁぁっ!?」

叩かれる強さが増し、お尻全体から熱が上がるような痛みが身体を襲う。
涙と汗、鼻水や唾液がわたしの顔を汚していった。

「おねーちゃんのおしりまっかっかー!おさるさんみたいー!」

バッヂィィンッ!!バッヂィィンッ!!バッヂィィンッ!!

…妹の煽る声とお尻をぶたれる音が重なる。
今この室内に、わたしのことを助けてくれる人は、誰もいない…。



「はぁ、…はあ、…やっと百発分、叩き終わったわ」

肩で息をする母が定規を下ろし、ようやく尻叩きが終わる。
わたしはその場にドサッと倒れ込み、同じく荒い呼吸をしていた。

お尻は真っ赤に腫れ、内出血が広がり、目も当てられない状態になっている。

「ママ、そういえばおねーちゃん、きのうママのわるぐちいってたよっ!おかしをかってくれない“おにババ”ってっ!」

…そんなこと、言うはずがない。
わたしは咄嗟に妹を睨みつけると、ビクッと小さい肩を振るわせた。
……そして。

「ママッ!ほら、おねーちゃん、レイナのことにらんでるっ!ママにはなしちゃったからっ!」

「ちがっ…」

「マリナ、いい度胸ね…。お尻百叩き程度じゃ足りないってことかしら?…なら次はその子供のお股を定規で百叩きしようかしらね」

「違うっ!?そんなこと言ってないのにぃっ!!」

「…“オムツ替え”の姿勢になりなさい。早くしないとそのお胸も叩くわよ?」

…。

……。



…その後、お股とお胸を百叩きされ、わたしのお仕置きは終わる。

…………一体いつになれば、この生活は終わるのだろうか。


「完」
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