☆名探偵mimi☆ 川上探偵事務所の終わらない日常 ~事件は何時でもやってくる~ 第1話 翔太と颯太 宇宙から来た双子のイケメン……詐欺師?

森山 藍

文字の大きさ
50 / 120

50. 三河邸(1)

しおりを挟む
 川上雄之(かつゆき)にとって、この「芸術的なエントランス 」とでも呼ぶべき光景は子ども時代からなじみのものだったが、約半世紀の間全く同じという訳ではなく、むしろ頻繁にレイアウト替えが行われているのが普通だった。 それで、時には当時六十過ぎだった先代の三河滿匡(みつまさ)と、その娘婿で今思えば三十前でまだ若者然としていた三河洋信(ひろのぶ)が、新しい美術品のレイアウトを巡ってああだこうだと試行錯誤をしているところに行き当たることもあった。

 そんなときはいつ洋信が気さくに玄関ドアを開けて信匡(のぶまさ)を呼んでくれ、彼が出てくるまでの間二人で新しい美術品についていかにも楽しそうに説明してくれるのだが、それはたいてい信匡が出てきても一向に収束する気配を見せることはなかった。 それで、子ども二人はしばらくそれなりに面白く聞いた後、隙を見て階段から脱出するのが常だった。

 そんなことを思い出して覚えず微かに笑みを浮かべながらドアホンに近づいた川上は、脇に飾られている複雑な彫刻の施された重厚な額の縁に埃が溜まっているのに気づいて眉を潜めた。 よく見ると他の壺や彫刻にも埃が載っており、素人目にも位置がずれていると感じるものさえあった。

 顔を曇らせながらボタンを押すと懐かしい音がして、やがて「はい 」と言う月子の声がした。 若干しゃがれた印象はあるものの、確かに月子の声である。
 
「突然お邪魔して、申し訳ありません。 川上雄之です 」
 「まあ! あなた、雄之ちゃんよ 」

驚き慌てる声とともに、二人分の足音がしてかちゃりと鍵の開く音がした。

 「雄之ちゃん! 」
 「おお、どうした? 」

 二人の老人が上品な部屋着に身を包んで、履物を履くのももどかしいといった風情でドアから飛び出してくるのを、川上は芯から嬉しい笑顔で迎えた。
 
 「お久しぶりです。 お二人ともお元気そうで何よりです 」
 「元気も何も、もうこんなに年を取ってしまいましたよ。 さあ、入って。 ご両親は、お変わりなく? 」
 「お陰様で、そこそこ元気にしてくれています。 病院通いはしておりますが 」
 「まあ、そりゃそうですよ。 この年になったら、どこも悪くない人なんていませんからね。 お父様は血圧でしたっけ? 」
 「はい。 それと肝臓を少し 」
 「ああ、そうだった。 昔から、お酒がお好きだったから。 この頃、控えていらっしゃる? 」
 「入ってと言っといて立ち話をしかけちゃ、世話ないでしょう。雄之君 、この人の相手をしてちゃ、一歩も中へ入れませんよ。 さ、君はこっちへ来て。 雄之君、どうぞ 」
「まあ、ごめんなさい。 あんまり懐かしいもんだから。 さ、今度こそ入ってくださいな 」
「すみません、それじゃ失礼します 」
「もちろんだよ。 どうぞどうぞ 」

 突然の邂逅で四十年方時を戻してしまったような二人に予想以上に歓待されて、 川上も少年に返ったような笑顔でドアの奥に消えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

アルファポリスとカクヨムってどっちが稼げるの?

無責任
エッセイ・ノンフィクション
基本的にはアルファポリスとカクヨムで執筆活動をしています。 どっちが稼げるのだろう? いろんな方の想いがあるのかと・・・。 2021年4月からカクヨムで、2021年5月からアルファポリスで執筆を開始しました。 あくまで、僕の場合ですが、実データを元に・・・。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

処理中です...