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74. ニューヨーク行き(11)
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タクシーがエントランス前に着くや否や、翔太と颯太が後部座席から飛び出してきた。松本には目もくれず、自動ドアに向かって駆け出す二人を、松本が大声で呼び止めた。
「あっ、Soさんじゃないですか! 」
二人は驚いて松本を見、一瞬足を止めたが、颯太の顔に疑問の色が浮かんだので、翔太はそのまま駆け出し、颯太は済まなそうな顔を作って、
「すみません、今、急いでるので 」
と言うと、すぐ翔太の後を追った。 その背に向かって、松本がさらに大きな声で、
「まさか、もうラグリエス星に帰っちゃうんですか? 」
と言った瞬間、二人の足がぴたりと止まった。 颯太の顔は蒼白で、翔太は鬼のような形相で真意を窺うように松本の顔を睨みつけながらゆっくりと戻ってきた。
「誰だ 」
松本は、してやったりという思いを隠して「あっ、そっかあ 」と剽軽に笑うと、ちょっと下を向いてサングラスを外してから顔を上げ、
「Syoさん、ですよね。 たまに見かけたことあります。 俺、お宅のフルーツ・タルト、週に二回は食べに行ってますから。 ねえ、Soさん 」
と言った。 颯太は慌てて、
「あ、ああ、もちろん覚えてます。 ちょっと急いでて、すみません 」
と言うと、軽く頭を下げた。 松本は、それを見てにやりとしながら続けた。
「なんか、影薄いんだなあ、俺。 それで、セミナーにも誘ってもらえなかったんですかあ? 」
颯太の顔が、さらに蒼白になった。 翔太はぎらぎらした目で松本を睨みながら押し殺した声で言った。
「何のことだ 」
松本は、全く臆せずまたにやりと笑って、
「大丈夫、俺は広めたりしませんよ。 けど、界隈では噂になってるんで…… 」
と言いながら再び下を向いて、手に持っていたサングラスを掛けた。
その間に翔太が颯太に目配せすると、彼は微かに頷いてエントランスに向かって駆け出した。 松本は顔を上げると颯太の後ろ姿に目をやって、
「あれ、Soさん行っちゃった 」
と呟いて、口元に笑みを浮かべながらゆっくり首を回して自分より若干背の低い翔太を見下ろした。
「誰から聞いた? 」
苛つきを隠さない翔太に、松本は相変わらず誂うような調子で答えた。
「だから、噂ですよ。 しょっちゅうお店にお邪魔してたら、自然に聞こえてきちゃったんですよ。 人の口に戸は立てられないってね 」
折しも三階出発ロビーでは、航空会社の地上職員が辺りを見回しながら声を上げていた。
「十七時三十分発羽田行きJAL462便にご登場予定の、杉山颯太様、杉山翔太様はいらっしゃいませんか? 」
「あっ、Soさんじゃないですか! 」
二人は驚いて松本を見、一瞬足を止めたが、颯太の顔に疑問の色が浮かんだので、翔太はそのまま駆け出し、颯太は済まなそうな顔を作って、
「すみません、今、急いでるので 」
と言うと、すぐ翔太の後を追った。 その背に向かって、松本がさらに大きな声で、
「まさか、もうラグリエス星に帰っちゃうんですか? 」
と言った瞬間、二人の足がぴたりと止まった。 颯太の顔は蒼白で、翔太は鬼のような形相で真意を窺うように松本の顔を睨みつけながらゆっくりと戻ってきた。
「誰だ 」
松本は、してやったりという思いを隠して「あっ、そっかあ 」と剽軽に笑うと、ちょっと下を向いてサングラスを外してから顔を上げ、
「Syoさん、ですよね。 たまに見かけたことあります。 俺、お宅のフルーツ・タルト、週に二回は食べに行ってますから。 ねえ、Soさん 」
と言った。 颯太は慌てて、
「あ、ああ、もちろん覚えてます。 ちょっと急いでて、すみません 」
と言うと、軽く頭を下げた。 松本は、それを見てにやりとしながら続けた。
「なんか、影薄いんだなあ、俺。 それで、セミナーにも誘ってもらえなかったんですかあ? 」
颯太の顔が、さらに蒼白になった。 翔太はぎらぎらした目で松本を睨みながら押し殺した声で言った。
「何のことだ 」
松本は、全く臆せずまたにやりと笑って、
「大丈夫、俺は広めたりしませんよ。 けど、界隈では噂になってるんで…… 」
と言いながら再び下を向いて、手に持っていたサングラスを掛けた。
その間に翔太が颯太に目配せすると、彼は微かに頷いてエントランスに向かって駆け出した。 松本は顔を上げると颯太の後ろ姿に目をやって、
「あれ、Soさん行っちゃった 」
と呟いて、口元に笑みを浮かべながらゆっくり首を回して自分より若干背の低い翔太を見下ろした。
「誰から聞いた? 」
苛つきを隠さない翔太に、松本は相変わらず誂うような調子で答えた。
「だから、噂ですよ。 しょっちゅうお店にお邪魔してたら、自然に聞こえてきちゃったんですよ。 人の口に戸は立てられないってね 」
折しも三階出発ロビーでは、航空会社の地上職員が辺りを見回しながら声を上げていた。
「十七時三十分発羽田行きJAL462便にご登場予定の、杉山颯太様、杉山翔太様はいらっしゃいませんか? 」
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