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117. 全面対決(41)
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その頃武田は既に川上からの情報の上奏を終えるとともに、県警本部の許可を得て、現地の警察官に、多田 萌が佐藤健二に集合場所として知らせてきた那賀(なか)町(ちょう)檜(ひのき)谷(だに)への出動を依頼していた。 とは言え、最寄りの平谷(ひらだに)駐在所から現場までは山道を車で約二十分、阿南警察署那賀交番からも約二十一分と、市街地での一一〇番通報対応時間に比べると相当に時間が掛かる。 しかし、他の那賀町内の駐在所からだとどこも一時間以上掛かるので、一時間十五分掛かる中央署からとさして変わりがないため、とりあえずこの二拠点にいる警察官が急行する他、対処の方法はなかった。
もちろん県警本部は、最寄りの阿南市内の他、徳島市内の警察署にも可能なパトカーの出動要請を出した。 同時に、檜谷に向かう全警察官に一応サングラスを携行するよう伝えたところ、幸い徳島県警でも昨年八月一日から猛暑対策としてサングラス着用が認められていたため、春先にも関わらず多くの警察官がロッカー等に所持しており、すぐ対応することができた。
武田が現地警察に檜谷への急行を依頼した直後、神山町の天岩戸別神社にいた中央警察署捜索隊から高田の携帯が見つかったという知らせが入った。 彼らは引き続き高田が遭難していないか近辺を捜索するつもりでいたが、その可能性はかなり低いと判断した武田の指示により、直ちに撤収して那賀町檜谷へ向かうことになった。 天岩戸別神社から檜谷までのルートは三つあるが、山道を走破しようと迂回しようと一時間程度掛かることに変わりはない。 それでも彼らは運転技術によっては早く着く可能性のある最短コースを取ることにして、ワゴン車二台を相次いで発進させた。
それと前後して中央署からも応援のパトカーが出発し、武田も陣頭指揮を取るべく同乗した。 そして、彼は自身の判断で車内から高田の両親に連絡を入れた。
娘の携帯が徳島県佐那河内村の山林の中で発見されたという知らせは、神戸市内に住む国立大学名誉教授夫妻を仰天させたが、七十代半ばの父親は気丈にもすぐに自家用車で妻とともに徳島に向かうと返答した。
とはいえ、神戸から徳島まで普通に高速道路を走っても一時間半掛かるから、彼らが県警に到着するのでさえ十時をかなり回ってしまうだろう。 それでは、翔太と行動を共にしているらしい高田に両親から何らかのアプローチを試みてもらえる可能性は低い。 それでも、武田は、高田美香准教授が多くのセミナー参加者の中でも最も危険な立ち位置にあるのではないかと推測し、それを知っている以上、両親にできる限りのことをさせてやりたいと考えたのである。
しかし、今そのことを話してしまったら、如何にしっかりした父親でも平常心で運転するのは難しくなるだろう。 それで、彼は、詳細は中央署で説明するとだけ言い、くれぐれも安全運転で十分な休憩を取りながら来てくれるよう頼んで電話を切った。
もちろん県警本部は、最寄りの阿南市内の他、徳島市内の警察署にも可能なパトカーの出動要請を出した。 同時に、檜谷に向かう全警察官に一応サングラスを携行するよう伝えたところ、幸い徳島県警でも昨年八月一日から猛暑対策としてサングラス着用が認められていたため、春先にも関わらず多くの警察官がロッカー等に所持しており、すぐ対応することができた。
武田が現地警察に檜谷への急行を依頼した直後、神山町の天岩戸別神社にいた中央警察署捜索隊から高田の携帯が見つかったという知らせが入った。 彼らは引き続き高田が遭難していないか近辺を捜索するつもりでいたが、その可能性はかなり低いと判断した武田の指示により、直ちに撤収して那賀町檜谷へ向かうことになった。 天岩戸別神社から檜谷までのルートは三つあるが、山道を走破しようと迂回しようと一時間程度掛かることに変わりはない。 それでも彼らは運転技術によっては早く着く可能性のある最短コースを取ることにして、ワゴン車二台を相次いで発進させた。
それと前後して中央署からも応援のパトカーが出発し、武田も陣頭指揮を取るべく同乗した。 そして、彼は自身の判断で車内から高田の両親に連絡を入れた。
娘の携帯が徳島県佐那河内村の山林の中で発見されたという知らせは、神戸市内に住む国立大学名誉教授夫妻を仰天させたが、七十代半ばの父親は気丈にもすぐに自家用車で妻とともに徳島に向かうと返答した。
とはいえ、神戸から徳島まで普通に高速道路を走っても一時間半掛かるから、彼らが県警に到着するのでさえ十時をかなり回ってしまうだろう。 それでは、翔太と行動を共にしているらしい高田に両親から何らかのアプローチを試みてもらえる可能性は低い。 それでも、武田は、高田美香准教授が多くのセミナー参加者の中でも最も危険な立ち位置にあるのではないかと推測し、それを知っている以上、両親にできる限りのことをさせてやりたいと考えたのである。
しかし、今そのことを話してしまったら、如何にしっかりした父親でも平常心で運転するのは難しくなるだろう。 それで、彼は、詳細は中央署で説明するとだけ言い、くれぐれも安全運転で十分な休憩を取りながら来てくれるよう頼んで電話を切った。
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