ブレインダイブ

ユア教 教祖ユア

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序章・対の戦い編

1-8.5 8.5 緋色視点 怒りの撃墜2

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「用意はいいですか?………はじめ!ブレインコネクト!」

ここは試験だ。いつもの決闘とは違う。

いつもは平坦で殺風景な世界だが、試験は、どこかの廃墟だったり森林だったり、洋風の町並みだったり…色んな世界になる。

今回は廃墟のようだ。

(うーん…どう戦うものか。)

このエリアはどちらかというと相手の方が有利だ。

当てて隠れる事が出来るからだ。

「気配察知………はぁ…」

緋色は気配察知をすると溜息をついた。

(ハンターの癖に…気配隠蔽下手くそか…それじゃあ私にすぐに殺される羽目になるな…)

すると、絶対射撃(大)が撃ち込まれた。

避けられるものではないのでしっかり防御する。

「唐傘(小)!武器生成(中)!」

唐傘で威力を半減し武器で叩き壊す。

緋色と春斗が無能力者でも、能力者に戦えた理由はこの反応の速さだ。

二人は武器生成で銃を作れるレベルに達している。

作れる人は武器生成系が得意な能力者かハンターのように武器が銃の能力者くらいだ。

勿論、二人は無能力者なので銃が専用では無い。それに、緋色は開眼したが、それまでは(小)止まりだ。

緋色は開眼する前から銃を生成できた。

二人は互いに銃を撃ち込みそれを跳ね返す練習をしていた。

人が聞いたら狂ってると思われるような練習だ。

しかしそれのお陰で弾道が読め、武器で銃弾を跳ね返せるのだ。

ついでに執行者は緋色が初めてなので、相手は初見で対策出来ない。

「死線誘導・始点回帰(中)。」

武器操作というのが何かダサいので改名してみた。まだマシだろうか。

元々、(仮)みたいな名前だが。

二本の死線は反射の法則に沿って跳ね返り綺麗に彼の元に往く。

緋色は死線を全力で誘導する。

「死線誘導・終点回帰(中)!」

建物が真っ二つに割れ、全てが壊れた。

しかし、まだ生きているようだ。気配察知に生体反応が引っ掛かる。

「しぶといなぁ…まあ…私が仕留め損なっただけだけど。」

緋色はゆっくりと歩き、ハンターの元へ行く。

「このクソ野郎!散弾(大)!」

緋色は大量の銃弾の中を突っ切る。

「電光石火(小)!」

緋色は彼の首を、勢いを使い切り落とした。

緋色は勝った。開眼したあとならばあの不良共にも楽勝に勝てるようだ。

たったの一人でも。

寧ろ一人の方が戦いやすい。

しかし、あれは団体戦だ。緋色も戦い方を変えなければならないので今回の様に攻撃には転じない。

転じられないと言ってもいい。

春斗のもとに戻ると既に居なかった。

どうやら緋色の直後のようだ。



「もう…試合してるな……………は…?」

緋色は怒りに包まれた。負の感情しか湧き上がってこなかった。

「なに……………フザケてんの………?」

(誰だアイツは、殺すか。あれは決闘じゃない…!弄んでるだけだ!わざと急所を外してる!それにアイツ!…………嘲笑ってる。)

「春斗!」

あまりの痛々しさに名前を叫んでしまう。

とうとう、春斗は負けてしまった。

しかし、流石緋色の後輩だ。

決して怖気づかない。寧ろ怒りで睨みつけている。

こういうところは緋色と似ている。

しかし、あの野郎はそれが気に食わないのだろうか。

現実の世界でボコボコにし始めた。

(止めろ!止めてくれ…)

彼は抵抗し鎌鼬を繰り出すが、顔と肩に傷をつけただけで、動きはとまらない。

とうとう、春斗の首を掴み床に叩きつけた。

緋色が怒りで世界の色がモノクロになる。

「何をしてるんだ…?離せよ…!止めろ…!」

緋色は大声で叫ぶ。

「止め………!」

すると、

「止めなさい!」

彼女がとても速いスピードであのゴミを蹴り飛ばす。

「ッチ!」

緋色はあのハゲに向けた死線を引っ張り懐に入れた。

「落ち着け…緋色…アイツは次に当たるんだから…そこで殺せばいい。」

自分で言い聞かせる。落ち着きを取り戻してきたのか、視界が元に戻った。

緋色は春斗の方に向かう。

彼は担架に乗せて運ばれている。春斗は緋色を見つけた。

「すみません…負けてしまいました…」

「そんな事を…先に言う事じゃ…」

「でも、樫妻先輩みたいに、諦めませんでしたよ。最後まで。」

「うん…そうだね……私があいつを倒すわ。」

「はい…楽しみにしときます。」

彼は医療室に運ばれていった。

「あらあら~血気盛んねぇ~」

優しいお姉さんの声が聞こえたと思い後ろを振り向くと大地の涙がいた。

「殺気で溢れてるわよ~ずっと。駄目よ~そんな事したら~」

大地の涙は緋色に近づき、

「弱く見えるわよ。ちゃんと隠さないと~…あと。やるなら徹底的に殺りなさいね。楽しみにしてるわ~」

と言って去っていった。

(夏希と一緒か…確か。ブレインダイブ。)

あの人は本能的に信用なら無い。

あと、あのテンションで言う事が物騒過ぎではないだろうか。

緋色は少し落ち着く。

…どうせ殺せるのだから、今、殺気に理性を勝たせる訳にはいかない。

次の試合は香露音が出ているようだ。どうせ勝つだろう。

「あのハゲに買ったら、香露音と当たるのか…そういえば。」

とても気まずいと思うが、資格を取る気でいるので遠慮はしない。

「少し落ち着きましたか?緋色さん。」

朱い流星が緋色の隣に来た。

「殺気立ってましたね。彼氏とかですか?」

「普通に後輩です。」

緋色はそう言う。本当に何も恋愛感情が沸かないので緋色本人が一番吃驚していたりする。

「そうですか。しかし、鋼糸をあの人に向けてましたね。あの直線状なら…左眼に向けてました?」

普通にバレている。しかし、少し間違いを訂正するように緋色は言う。

「………そうですね。右眼にやろうとしたのですが…如何せん、私のコントールが悪くて。」

「……貴方は恐ろしいですね。…それにしても、私が来た瞬間の止めた速さには驚きました。反応の速さはどうやって鍛えたのでしょう?」

「銃弾の速さを捌けるようになるまで特訓すれば皆できます。」

「とても大変な道のりですね。まあ、私はもう合格ラインに入ってますが。それで…大地の涙に会いました?」

「はい。」

「何かされませんでしたか…?」

「何も。」

「そうですか。」

「あの人、ブレインダイブですよね。」

「そうですね。」

「一回精神世界に触れてきませんでした?あの人。」

「……!!!!!」

朱い流星は驚いている。大地の涙は触れてきたのだろう。二つ名がついているくらいなのだから、夏希でも心の中は読めなさそうだ。

そして、香露音の決闘は終わったようだ。

首を撥ねれば一瞬なのに、一々腹を切り裂くのに何の意味があるのだろうか。

そんな事をしているといつか痛い目に遭いそうだ。

「あ、終わった。」

「あ、ああ…そうみたいですね。しかし、彼女は夜の騎士ナイトオブナイト…ですか。」

「あの人、私の知り合いなんですよ。あのハゲに勝ったら、次、当たります。」

「そうですか。大変ですね。しかし、試験のあるあるだったりします。」

「そんなものなんですね………私はそろそろ決闘なので行きます。」

「そうみたいですね。貴方はやっと、腹立たしい人をぶっ飛ばせる能力を手にしたんです。頑張ってくださいね。」

そう言われると、開眼した自覚を覚える。

「はい!行ってきます!」

緋色は走って行った。入り口に辿り着く。

朱い流星が言った、腹立たしい人をぶっ飛ばせる能力を手にした…という言葉がずっとぐるぐる回っている。

(今まで…我慢するしかなかった。抗っても負けてばかり。でも、私はどうしても諦めれなかったあの日々。今はもう違う。寧ろ…あいつらが私の道具になる方だ…!)

「私を………怒らせた事を後悔させてやる…!」

対戦相手を思い切り睨みつける。

「準備は、いいですか?…始め!ブレインダイブ…!」

世界は真ん中に噴水がある広場だった。

(そんなの如何でもいい。何処でもいい。あいつは隠れない。私も隠れない。)

世界が再びモノクロになる。

(怒らせた相手が格上だと教えてやる。傲慢で結構。…来いよ。)

奥底に眠る、違った緋色が目覚める。

「武器生成(中)…」

剣を作る。そして元々ある死線を男に向ける。

「死線誘導・乱舞(中)!」

至る所に死線が乱反射する。緋色もどうなるかよく分からない。

「こんなものか!?ハハハハ!龍神之破(中)!」

死線の能力が緩む。

どうやらこいつの能力はドラゴンスレイヤーらしい。

とても簡単に言うと、ブレイカーを速度を早くして使いやすくして、尚且つブレイカーよりも攻撃力が高い。

もっと更に簡単に言えば、ブレイカーの上位互換。

「ダルいな…」

緋色は呟きながら死線を操っていく。

「………お前だけは殺す。」

緋色はあまり使いたくないが今出来る大技を出す。

「仕方が無いが…出し惜しみはしない。死線誘導・殺戮!」

ブーストの基盤となる技だ。一応作っといたが、今まで使ったことが無い。

これに関しては仕方無い。練習場所が無いからだ。

糸のように柔らかく、鋼鉄のように硬く禿にしつこく絡まる。

「こんなもので俺を殺すつもりか!笑わせるなよ!ハハハハハ!」

しかし、禿が能力を使っても緋色の能力を壊せない。

「だから言ったろ。お前を殺すのに何で私の能力を壊させるんだよ。」

「は?何の為に俺の能力が…!」

驚くのも無理はない。能力を無効化する能力にも関わらず、無効化出来ないのであれば意味は無い。

しかし、これには抜け道が無いことも無い。

龍神之破の抜け道その一。当たらなければ意味が無い。

その二。連発出来ない。

緋色の能力を当てずにかつ、龍神之破を使った直後であれば一応当てれる。

「切り裂け。」

「ぐっ…唐傘(小)!」

相手の防御をも切り刻む。禿のライフを半分削った。

(半分か。改良が必要だな。ブーストとして使うには。)

「グフッ…てめぇ!良い気になるなよ!龍神之剛(大)!」

大地が削れていく。緋色は割れた大地に次々と乗り継ぎ、攻撃を避けていく。

「ちょこまかと動くんじゃねえ!龍神之矢(大)!」

(ッチ…鬱陶しい…!)

「電光石火(小)!」

大気を蹴り飛ばし、空中で避けていく。

「野郎!しつこく逃げやがって!」

禿が緋色めがけて突っ込んでくる。

「しつこいのはお前だよ。禿が!」

(とろいお前が……空中戦を仕掛けるなんて100年早いんだよ!)

「縮地(中)!」

緋色はお腹を目掛けたが禿の左腕に守られてしまった。

「ぐ……!この野郎……!」

「弱い奴にコケにされる気分はどうだ。禿。閃律(小)!」

そのまま、地面に叩き落とした。

禿は左腕は使い物にならない筈だ。思い切り筋肉を断ち切ってやった。

嘸かし激痛だろう。

お陰で笑えてくる。

「死線誘導・乱舞(中)!」

死線があちこちに乱反射される…と見せかけた。

ただの死線誘導・回帰フェイクだ。

禿の方に死線が襲い穿かれる。

「これで殺せると思うな!龍神之破(中)!」

死線が緋色の元に戻ってしまったが、緋色は上から顔を目掛け剣を突き刺す。

「これを囮にしたのは良い案だが、能力無しで俺を殺すつもりか?」

禿は右腕を犠牲にする。貫通したが、ニヤリと笑っている。

「なっ…!」

緋色は焦った様に、目を見開く。

「龍神………」

と、禿が言おうとした瞬間…

パァン!

という乾いた音が鳴り響く。

「眉間に的中だな…」

「の…………!!!!!」

銃を生成できる人は稀だ。禿は銃を持ってると思っていない筈だ。

確かに剣を作った。しかし、武器生成(中)レベル。

武器生成(中)となれば(小)レベルの武器を2つ作れる。

だから、緋色は剣と銃を生成し銃剣を作ったのだ。

急所に当たり、ライフがゼロになった。

世界が元に戻る。

地面につばを吐いた禿を睨みつける。

そして死線を使い首に巻いた。苦しさで床に倒れ込む。

「グッ!」

「弱者が…威張ってんじゃねえよ。お前がさっき不必要にボコボコにしたのは私の後輩だ。」

「あれは、弱いあいつのせいだ!俺が弱者なら、あいつはもっと弱者、カスだな…フハハハ…ガッ!」

思い切り締め上げる。

「決闘で負けたのはお前が姑息な手を使ったにしろ、あいつの実力の問題だ。そんなに簡単に無能力者が資格を取れるなんて私も思ってないさ。でも、違う。私が言いたい事は!何で!決闘が終わったのに!春斗に攻撃したんだ!」

「あいつ……だって、反撃しただろ………う!」

「あれは正当防衛の内に入るわ、ボケが!誰だってするだろ!しかも、お前が先にやったのにどの口から言えんだよこの禿。」

死線を引っ張る。頭も同時に上がる。

「同じ事をしてやろうか?私はお前が弱すぎてつまらない。まだ、殺し足りないんだが?お前が春斗をコケにしたようにお前も!私の玩具にしてやろうか…?」

視線を引っ張り頭を叩きつけた。そして解く。

緋色は理性を無理矢理勝たせた。

「…そんな事したら、てめぇと同じ弱者か。」

緋色は出口に歩いていった。

「じゃあ…今からやる事は正当防衛だな…!」

禿は馬鹿なようだ。

「龍神之剛(大)!」

「しつけえよ。学習のできないゴミが。」

緋色は後ろを向き、軽々しく攻撃を避けて、禿の鳩尾を狙う。

「縮地(中)。」

至近距離で、縮地を使う。大地を移動するエネルギーが禿を吹き飛ばすエネルギーになる。

決闘場は円形で半径10m~20m。推定直径30mな程の大きい場所だ。

禿は出口付近から入口辺りまで思い切り吹き飛んだ。

勿論出口と入り口は思い切り反対方向にある。

やらかした反動で完全に理性を取り戻す。

世界の色がちゃんと普通になる。

とんでもないものを置いていかれた気がする。

「あ、ヤベ。やらかしたかも…?あーあ…そうやってプライドが無駄に高いね。ま、私もだけどさ。春斗も誰に似たんだか。あいつは元々、反撃しないタイプなんだけど。」

そう呟く。しかし、どうやらお咎め無しっぽいのでそのまま帰った。

すると、出口には、包帯が軽く巻かれている春斗がいた。

「え!?春斗!?早いね…!?」

「いやぁ医療室の人達皆凄いですね。能力で9割ほど。あとは、能力のかかった包帯で残りを…との事です。」

「へぇ~便利。」

「それにしても…決闘後見てましたよ~珍しく怒鳴り散らしてましたね~普段あんまり口に出さない癖に~」

「う、うるさい。」

見られていることを知り、はずかしくなって来た。

「でも……僕の為に、ありがとう御座います。」

そう言う恥ずかしくなる事を平気で言う事所が春斗の腹が立つ所だ。

「そんな感謝される事はしてないよ。見ていて腹が立っただけだし。」

「そうですか。そういう事にしときますね。」

そして、肝心な事に気づいてしまった。

「あーーー!次、香露音じゃん!」

「知り合いですっけ?」

「そう!知り合い!」

春斗は満面の笑顔で言う。

「ドンマイです☆」

……何だろう…殺意が湧くのは気のせいだろうか。
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