ブレインダイブ

ユア教 教祖ユア

文字の大きさ
上 下
10 / 104
序章・対の戦い編

1-9 9 夏希視点 二人の心は

しおりを挟む
香露音の試合がもう始まろうとしていた。

コングが鳴り、香露音とウィザードが戦っている。

「うーん…香露音はやっぱり強いなぁ…」

美人で頭も良く、その上社交的。それに開眼した能力が優秀で少し厨ニ病の名前でも案外様になってしまう。

高嶺の花とは香露音の事だろう。まあ、高くないのか彼氏持ちだが。

三回戦も三十分以内に倒してしまった。

その次が緋色だった。今日は知り合いがとても固まって決闘するので忙しい。

頭が寒そうな(言わば禿)ヤクザと緋色が向かい合う。

「…ひっ…!また…!まさか…さっきの頭痛…緋色のせい?」

異常なまでの殺意を感じた。

「大丈夫…ですか…?」

明園は不安そうな顔で夏希に話しかけた。

「あ、はい。」

ヤクザっぽい人は下衆の極みのように嘲笑っている。

コングが鳴る。

緋色は剣を作り出す。そして能力を使う。

「死線誘導・乱舞(中)!」

緋色から仕掛けていった。…しかし、何故に武器生成で剣を作るのだろう。

死線で攻撃をしているのにもかかわらず。

「龍神之破(中)!」

緋色の能力を打ち壊した。どうやらドラゴンスレイヤーらしい。

しかし、緋色も負けてはいない。積極的に攻撃する。

(一人の時はそうなるの?私達が居たから奥手だったって事?)

それに、以前はこんなに動きが速くなかった。

ステータスを隠蔽されているので、見ても意味が無いから理由がはっきりとしない。

しかし、夏希は少し能力を使う。ブレインダイブだけの能力だ。

「心眼(中)…」

(憤怒の色と殺意の色が混ざってる。それがもう表面まで写ってる。いつもは感情を殺してたのに…感情的になってる。)

夏希は香露音にメールを送る。

「緋色が凄い感情的になってるんだけど、理由知らない?」

と送ると割とすぐに返事が来た。

「知らない。一言も話してないし。それに、元資格所持者の能力を知りたい。」

ときた。多分だが、香露音はこの決闘を見ていないのだろう。

何故なら聞く必要は無いからだ。

「ドラゴンスレイヤーだけど…多分緋色が勝つよ。」

と送る。

少し時間が空いて、返事が返ってきた。どうやら移動したらしい。

「本当だね。緋色がおしてるね。」

緋色の能力は糸を操るだけ…では決して無い。もっと強い言い方が合っている。

言ってないだけだろう。香露音と夏希や、周りの人達に。

(私は…まだ…信用されてない……って事?)

仕方無いかもしれない。いや寧ろ当たり前に近い。

彼女の不信は誰よりも強い。

精神世界の扉はあれは信用の大きさによるものかもしれない。。

信用していればしているほど奥にいける。

(これが本当なら私は…どこまでかな。)

しかし、香露音との会話で、今までも少し思っていたが、香露音は緋色の事をあまり好きではなさそうだ。

もしかしたら、香露音は緋色の事を見下してるかもしれない。心の何処かで。

そして、夏希が考えている間に呆気なく緋色が勝っていた。

それも普通は生成できないような銃で。

いつものように緋色が去っていくと思っていたが、全く違った。

押し倒して、死線で首を締め付けている。

そして、怒鳴り散らしいた。何を言ってるのがよくわからないが。

「やっぱり…正常じゃない。冷静じゃない…」

何時も隠している緋色だと思えない程に豹変していた。

しかし本当にヤクザっぽい人が死にかける前に理性を取り戻したようで、緋色は帰っていったが、ヤクザっぽい人は馬鹿なのか攻撃した。

もうそれはヤクザっぽい人では無くただのヤクザだと思う。

緋色は鮮やかに避けて反撃した。あのお馬鹿さんは思い切り吹き飛んだ。

「緋色…やり過ぎ…」

と言うが当の本人を見ると、緋色が一番それを理解しているようだ。

こっそり帰っていった。

「あーあ。端から端まで…どうやったら大男をそんなに飛ばせるのか…」

そんな事を呟きながら次の試合が来るのを待っていると、

「予定より、遅くなる見通しが立ったので今から三十分の休憩を行います。」

との事だ。時計を見ると正午ぴったりだ。

この間は待機室にも行っていいらしいので、香露音の彼氏も誘いそこに向かった。

先に緋色と出会った。

隣にはヤクザっぽい人にボコボコにされた男がいた。

(知り合いなのね。そりゃ怒るか。)

「夏希じゃん!何で来たの?知り合いが居た?いつも来ないのに。あ、香露音に来てくれって言われた感じ?」

やはりお見通しだった。

「そうそう。でさ、この人は?」

「ん?後輩。小学園の時の。」

「へえ~!」

「どうも。樫妻先輩がお世話になってます。」

「何であんたが言うんだよ!親か!」

「いて!何で殴るんですか、先輩!」

大分仲が良いようだ。とても楽しそうで、嘘の感情が何一つ感じない。

すると、緋色の後輩が少し表情が変わった。

「樫妻先輩…」

「ああ。そういう事ね。ハイハイ。」

緋色は一瞬で理解したようだ。そして耳打ちする。

「了解でーす。」

そして、元の表情に戻った。

そして、緋色が言った。

「ねぇねぇ。香露音近くに居ると思うんだけど。」

すると、彼氏が動き出し、

「香露音!」

とても楽しそうな表情で叫んだ。本当に近くにいた。

しかし、曲がり角にいたのに、如何見つけたのか。

(二人ともがもしかしたら…気配察知も持っているって事?)

確かに緋色は基礎能力の中で持っていない能力を言ったことがない。

(私達が思っている以上に緋色は強いって事?知らない事が多過ぎる…)

何故か二人は嫌そうな顔をしている。

緋色は後輩を宥めるように肩をすくめ、後輩の方は完全に嫌悪の表情だ。

何かあったのだろうか。

しかし、何も無かったかのような表情で香露音の近くに集まった。

「香露音ー!どこに居たのー全く見つからなかったよー」

「そう?普通に居たけど。この人は…?」

「後輩。」

「………どうも。こんにちわ。小学園の時の後輩です。」

(こ、怖い…目が死んでるんだけど。)

緋色も緋色だが、後輩も後輩だった。

すると、見た事がある人に出会った。

「あ…大地の涙。」

「あらあら~見たわよ。いい殺しっぷりだったわ~あれぐらい痛めつけないと分からないものね~」

「あ、ありがとう御座います…?」

緋色も褒められているかどうか分からなさそうだ。

困惑の顔をしている。

というか、緋色と大地の涙はまさかの知り合いだった。

「何度追い出してもしつこいわね~あのつるっぱげも。」

「もしかして剥奪した本人…?」

「あら、そうよ~で、それはそうと~貴方面白いわね~」

緋色の顔に手を差し伸べた瞬間、一気に緋色の目が殺意に染まる。

一瞬で銃を生成し眉間に突きつけるが、大地の涙も一瞬で銃を生成し緋色の首に向けた。

「あら…?」

「何で、私の心を読もうと想ったんですか?」

「あらあら~バレてしまったのね~凄いわ~」

怖い。一触即発状態なのに、大地の涙は余裕そうに笑っている。

更に怖さを引き立たせている。

「あと、精神世界に一瞬だとしても入るのは止めてください。物凄く不快なんですよ、あれ。私の内臓を舐られたようで。」

「あらあら~それもバレてしまってたのね~貴方優秀ね~」

大地の涙は微笑んでいるが目は笑ってない。

「でも、二つ名を持っている人に銃を突きつけるのは命知らずよ~」

すると、緋色が膝をついた。

「だって~先に洗脳しちゃうもの~ウフフ。」

この人は意識がある状態で精神世界に介入できるようだ。

しかも、精神世界に入る速度が早い。

夏希の2倍くらいは早いのではないだろうか。

それに、優しい言い方以外は下衆過ぎる。

すると、今度は大地の涙が両膝をついた。

「なっ!嘘…でしょ…私が!追い出されたっていうの…!?」

余程無理矢理だったのか、鼻血が出ている。

「ゴホッ………ヤベッ…吐血した。」

緋色は全く驚かずにそう言う。

「大丈夫ですか?樫妻先輩。あ、ハンカチ貸しましょうか?勿論、無使用ですよ。いつも二枚持っているので。」

後輩は女子よりも女子力が高かった。

「悪い。ケホ…後日洗って返す。」

緋色は後ろを向いて口を拭いている。

「あ、貴方!何をして私を追い出したっていうの!?」

口調が変わっている。多分こっちが本性だ。

「知らないですよ。私が知ってる訳ありますか。精神世界の私が何かしたんでしょ。吐血するレベルに無理したんでしょうよ。あー気持ち悪い…」

敬語にする余裕がないのか、言葉が乱雑だ。

「何なの…貴方…心の中を読んだ事がすぐに分かったり、精神世界で、私を一瞬で殺したり!」

その目には恐怖が写っていた。

「何で!精神世界と、ここにいる貴方は繋がれているの!」

すると、冷静な声が聞こえた。

「はいはい。それまでにして、ちり紙持ってきました。これで鼻血拭いてください。」

「おお…朱い流星。」

「あ、再三どうも。」

大地の涙は朱い流星に追い出されるかのようにどっかに行った。

「またですか。何で貴方はトラブルの中心に高確率で居るんですか…」

「すいません。大地の涙に注意しろってこの事だったんですね。危うく洗脳されかけました。」

「でも、洗脳されてないんですね。どうしたらされてないんでしょうね。」

厭味ったらしく言っているが、どうやら朱い流星の方も知り合いらしい。

「大地の涙にはあまり会わないほうがいいですね。多分目をつけられてます。当たり前ですが。勿論、知り合いである、貴方達もです。多分関係の深さを既に見られてますね。」

「ああ…確かに覗かれた気がします。一瞬で追い出しましたけど。」

なぜ分かるのか一片も理解出来ない。

「春斗…やっぱり気付いてた?そんな感じしてたし。あ…やべ。また吐血…」

完全に言い終わるまでに咳き込んだ。後輩は背中を擦る。

「ヤバそうなら、医療室に行ってくださいね。そういえば、貴方の名前聞いてませんね。」

心配しているか心配していないかが分からない。

「え……ゴホッ…!樫妻 緋色でず…」

死にかけながら答えている。

「そうですか。緋色さん、あの馬鹿との決闘は見事でした。応援していますよ。では。私は用事があるので。」

朱い流星はどっかに行ってしまった。

「大丈夫ですか?樫妻先輩。」

心配そうに眺める。

「見たら分かる。全然平気じゃない。」

「精神世界で何をやったらそうなるんですかね。」

「あれじゃない?大技を大量の私が同時に発動させたんじゃない?」

適当に言っている。本当に分からないようだ。

「どんだけ見せたくないんですか。ハッハッハ。」

「あんたが一番知ってるでしょ。」

「そうでした。ハッハッハ…無理しないで下さいよ…?」

「無理。」

二人の眼は光が無い。この後輩は一体緋色の何を知っているのだろう。

すると、アナウンスが聞こえた。

「休憩時間が終わりましたので、待機室にいる観客は観客席にお戻り下さい。もう一度繰り返します…」

「あ、時間だ。じゃ、またな…香露音。頑張れよ。」

「うん!ありがとう!」

これがもし次の対戦相手だったらものすごく腹が立つのは夏希だけだろうか。

「ヤバイっすね。」

「でしょ。あとさ、さっきからアナライズかけんの止めてくんない?いくら私が負傷してるからってさ。」

「やはり駄目でしたか。」

と、後輩と緋色は何事も無く会話している。

しかし、さっきの会話を見ると、後輩と緋色は少し似ている点があるかもしれない。

性格は違うが影響されているところは少しはあるかもしれない。

それにしてもアナライズをかけられているのが何故わかるのだろうか。

取り敢えず時間なので、夏希と香露音の彼氏は観客席に戻った。

どうやら緋色の後輩は傷が完治するまで待機室に居なくてはならないらしい。

もうすぐで終わりそうだが。

なので緋色と後輩は何処の席に彼が行くかという会話をずっとしていた。

夏希は元いた場所に座った。

大分時間が経ち、次の試合は緋色と香露音だ。
しおりを挟む

処理中です...