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序章・対の戦い編
1-16 16 香露音視点 知らない君
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鶴ちゃんと棚見君が帰り、二人きりになる。緋色は不思議そうに香露音を見つめていた。
「どうしたの?香露音もそろそろ帰った方が良いんじゃない?」
香露音は緋色の眼を見て、思った事を言う。
「私さ…私の開眼した能力ってね…アナライズをするとね別の物が見れる。」
「…?何が見えるの?」
「耐性。」
「…………。耐性ね…」
既に緋色は察している。
「周りは、一つや二つくらいはよく居る。私でも睡眠耐性があった。でもさ緋色。そっちは…数え切れない程ある。その中でも、催眠耐性、毒物耐性とかあったんだよね。」
緋色は何が言いたいのかと言う目で香露音を見ている。
香露音はそのまま続けた。
「ナイフで刺された傷、激痛なんじゃないの?麻酔もどうせあんまり効いてないんでしょう?」
「…………。」
「私には気を配る必要は無いよ。」
「はぁ…バレると思わなかったよ…夜の騎士ってそんな能力があるなんて初めて知った。」
気の抜けた声でそう言った。
よく見れば汗がにじんでいる。
「最初から耐性持ちなんて有り得ない。ⅠとかⅡは最初からあったりするけど、緋色はほぼ全ての耐性がⅣとかⅤ。………どうやってそんな数の耐性を持ってるの?」
「色々…あったんだよ。」
緋色は決して自分の過去を言わない。
「その色々を聞いてるの。」
「…………今日は私の話を聞きたがるね。いつも私に興味なさげなのにさ。」
ハハハ…と乾いた声で笑う。実際緋色の言う通りだ。
「そうだね。でも、この際聞いとこうと思って。」
能力によって見える情報が増えると以前説明したが、その情報を見られる側が教えられる限り分かる筈がない。
緋色本人が以前、夜の騎士と会うのは初めてだ…と言っていたので、隠蔽しようが無かった。
だから、香露音でもその情報が分かった。
「耐性ってさ。どうやって付くか知ってるでしょ?」
「何回も受け続ける事で体が慣れたり、拒否する事で付く。」
「そうそう。私が色々ケチつけられてかららずっと能力を受け続けた。」
「…毒耐性がⅤになる程?普通はあってもⅠだよ。数回受けただけでⅠ位はつく。でも…」
「毒に関しては…単純計算で、合計…36時間?位。ああ、勿論決闘の時だよ。」
「嘘…………でしょ…」
普通は毒を受けるのは(小)が3分程度。それ以降普通に消滅する。
そして、(大)位をかけなければ全くライフを削れない。
それに、毒霧なので使用者本人に毒を食らう場合も勿論ある。
言ってしまえば一回の決闘のうちどれだけ長い決闘だとしても15分~30分が相場といった所だ。
「一回の内に何回毒霧かけられたの?」
「…1時間?位だよ、いつも。月一、一決闘、一時間。それを三年間。」
「…………!」
(そんなものまるで…!イジメじゃない!?いや…寧ろ、その言葉すら生温い…!)
「それレベルな事を…選り取り見取り…ってね。」
「だから、麻酔も…Ⅴなんだね…」
「流石にさ…能力を受けるだけだから、最初は能力だけ効かなかったんだけど~途中から物理的な麻酔も効かなくなってきて~」
「そんなノリノリで言う事じゃ…」
「もう、過ぎた事だし。」
その言葉がただの楽観的な言葉では無い。きっと思い出したくないのだろう。
だったら…もう深く聞いては緋色にとって辛いことだ。
「…そう。わかったよ。教えてくれてありがとう。もう遅いし帰るね。」
「気を付けてねー」
「うん。お大事に。」
そう言い香露音は帰る。
(緋色は……どんな理不尽を背負ってきたのだろう…)
三人がまだ第一学年の時、緋色が言っていた言葉を思い出す。
「小学園の時より今の方が100000000倍マシだよ~」
あんな酷い目に逢い続けたのだから、そう言うのも過言じゃなかった。
決して大袈裟なんてことは無かったのだと思う。
「…マシ…か。良いとは言ってないもんね。」
それでも、やはり不満はあるだろう。
やっと開眼した能力を、今まで渇望したに違いない能力を。
ただの糸を張るだけの能力と言われ、無能力者では無いが無能なのは変わらないと言われたあの屈辱を。
緋色は何でこんなにも周りから評価されないのだろう。
誰よりも努力をしていた筈だ。しかし、能力者の方が評価される。
…だから、棚見君と緋色は強く不思議な繋がりがあった。
「あの二人は同じなんだろうね…同じ無能力者だったからこその絆…同じ境遇だからこそ…」
緋色はイジメを受け続けた。それも拷問ともいえるレベルの。
(毒だけじゃない…催眠、苦痛…少なくとも10個位はある。しかも、普段見ない言葉もあった…)
香露音は家に到着し、急いで端末を開く。
最新の情報端末だ。父親が知識者という能力を持っていて、母親が創造者という能力を開眼した。
二人の共同開発により生み出されたらしい。
これはどうやら機密情報らしく、政府に許可された者しか設置すら許されないらしい。
(悪用されたら、政府の情報がだだ漏れね…まぁ…私も悪用するようなものだけど。)
調べる為にパスワードを入力する。両親は香露音を信用してくれているので教えてくれた。
勿論、政府の情報を売るような真似はしないが。
「調べるのは…緋色の小学園。えっと…」
ほぼ覚えてない。
香露音自身が今までどれ程緋色に興味を向けなかった今日ようやく自覚する。
香露音もまた、緋色の事を評価しなかった。
「夏希…なら分かるかな。」
夏希に直ぐに連絡した。するとすぐに返信が来た。
どうやら、夏希も知らないらしい。正確に言えば聞いたけど忘れたようだ。
興味が無かったのは夏希も同じだった。
もう一度返信が来た。どうやら精神世界にもう一度入るつもりだ。
なので、夏希を香露音の家に誘う。直接聞いてからその場で検索する。
出来ることなら全て聞いた方がいいが、多分無理だ。
絶対に殺される。
予定は明日。学園が終わり次第、香露音の家に行き、そこで緋色を知る。
「ご飯よー」
母親が香露音を呼んでいる。香露音は直ぐに向かった。
「どうしたの?香露音もそろそろ帰った方が良いんじゃない?」
香露音は緋色の眼を見て、思った事を言う。
「私さ…私の開眼した能力ってね…アナライズをするとね別の物が見れる。」
「…?何が見えるの?」
「耐性。」
「…………。耐性ね…」
既に緋色は察している。
「周りは、一つや二つくらいはよく居る。私でも睡眠耐性があった。でもさ緋色。そっちは…数え切れない程ある。その中でも、催眠耐性、毒物耐性とかあったんだよね。」
緋色は何が言いたいのかと言う目で香露音を見ている。
香露音はそのまま続けた。
「ナイフで刺された傷、激痛なんじゃないの?麻酔もどうせあんまり効いてないんでしょう?」
「…………。」
「私には気を配る必要は無いよ。」
「はぁ…バレると思わなかったよ…夜の騎士ってそんな能力があるなんて初めて知った。」
気の抜けた声でそう言った。
よく見れば汗がにじんでいる。
「最初から耐性持ちなんて有り得ない。ⅠとかⅡは最初からあったりするけど、緋色はほぼ全ての耐性がⅣとかⅤ。………どうやってそんな数の耐性を持ってるの?」
「色々…あったんだよ。」
緋色は決して自分の過去を言わない。
「その色々を聞いてるの。」
「…………今日は私の話を聞きたがるね。いつも私に興味なさげなのにさ。」
ハハハ…と乾いた声で笑う。実際緋色の言う通りだ。
「そうだね。でも、この際聞いとこうと思って。」
能力によって見える情報が増えると以前説明したが、その情報を見られる側が教えられる限り分かる筈がない。
緋色本人が以前、夜の騎士と会うのは初めてだ…と言っていたので、隠蔽しようが無かった。
だから、香露音でもその情報が分かった。
「耐性ってさ。どうやって付くか知ってるでしょ?」
「何回も受け続ける事で体が慣れたり、拒否する事で付く。」
「そうそう。私が色々ケチつけられてかららずっと能力を受け続けた。」
「…毒耐性がⅤになる程?普通はあってもⅠだよ。数回受けただけでⅠ位はつく。でも…」
「毒に関しては…単純計算で、合計…36時間?位。ああ、勿論決闘の時だよ。」
「嘘…………でしょ…」
普通は毒を受けるのは(小)が3分程度。それ以降普通に消滅する。
そして、(大)位をかけなければ全くライフを削れない。
それに、毒霧なので使用者本人に毒を食らう場合も勿論ある。
言ってしまえば一回の決闘のうちどれだけ長い決闘だとしても15分~30分が相場といった所だ。
「一回の内に何回毒霧かけられたの?」
「…1時間?位だよ、いつも。月一、一決闘、一時間。それを三年間。」
「…………!」
(そんなものまるで…!イジメじゃない!?いや…寧ろ、その言葉すら生温い…!)
「それレベルな事を…選り取り見取り…ってね。」
「だから、麻酔も…Ⅴなんだね…」
「流石にさ…能力を受けるだけだから、最初は能力だけ効かなかったんだけど~途中から物理的な麻酔も効かなくなってきて~」
「そんなノリノリで言う事じゃ…」
「もう、過ぎた事だし。」
その言葉がただの楽観的な言葉では無い。きっと思い出したくないのだろう。
だったら…もう深く聞いては緋色にとって辛いことだ。
「…そう。わかったよ。教えてくれてありがとう。もう遅いし帰るね。」
「気を付けてねー」
「うん。お大事に。」
そう言い香露音は帰る。
(緋色は……どんな理不尽を背負ってきたのだろう…)
三人がまだ第一学年の時、緋色が言っていた言葉を思い出す。
「小学園の時より今の方が100000000倍マシだよ~」
あんな酷い目に逢い続けたのだから、そう言うのも過言じゃなかった。
決して大袈裟なんてことは無かったのだと思う。
「…マシ…か。良いとは言ってないもんね。」
それでも、やはり不満はあるだろう。
やっと開眼した能力を、今まで渇望したに違いない能力を。
ただの糸を張るだけの能力と言われ、無能力者では無いが無能なのは変わらないと言われたあの屈辱を。
緋色は何でこんなにも周りから評価されないのだろう。
誰よりも努力をしていた筈だ。しかし、能力者の方が評価される。
…だから、棚見君と緋色は強く不思議な繋がりがあった。
「あの二人は同じなんだろうね…同じ無能力者だったからこその絆…同じ境遇だからこそ…」
緋色はイジメを受け続けた。それも拷問ともいえるレベルの。
(毒だけじゃない…催眠、苦痛…少なくとも10個位はある。しかも、普段見ない言葉もあった…)
香露音は家に到着し、急いで端末を開く。
最新の情報端末だ。父親が知識者という能力を持っていて、母親が創造者という能力を開眼した。
二人の共同開発により生み出されたらしい。
これはどうやら機密情報らしく、政府に許可された者しか設置すら許されないらしい。
(悪用されたら、政府の情報がだだ漏れね…まぁ…私も悪用するようなものだけど。)
調べる為にパスワードを入力する。両親は香露音を信用してくれているので教えてくれた。
勿論、政府の情報を売るような真似はしないが。
「調べるのは…緋色の小学園。えっと…」
ほぼ覚えてない。
香露音自身が今までどれ程緋色に興味を向けなかった今日ようやく自覚する。
香露音もまた、緋色の事を評価しなかった。
「夏希…なら分かるかな。」
夏希に直ぐに連絡した。するとすぐに返信が来た。
どうやら、夏希も知らないらしい。正確に言えば聞いたけど忘れたようだ。
興味が無かったのは夏希も同じだった。
もう一度返信が来た。どうやら精神世界にもう一度入るつもりだ。
なので、夏希を香露音の家に誘う。直接聞いてからその場で検索する。
出来ることなら全て聞いた方がいいが、多分無理だ。
絶対に殺される。
予定は明日。学園が終わり次第、香露音の家に行き、そこで緋色を知る。
「ご飯よー」
母親が香露音を呼んでいる。香露音は直ぐに向かった。
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