ブレインダイブ

ユア教 教祖ユア

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序章・対の戦い編

1-24 24 春斗視点  守りたいだけ

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3回戦も無事に終わり、ついでにこの三人組の強さを知らしめた。

そして、4回戦も簡単に終わった。

次は5回戦。これに勝てば資格が取れる。

先に、例のあの人達は5回戦まで居るようだ。

「騎士の天罰(大)!」

光線が辺りを破壊し尽くす。

「誘導撃ち(大)!!」

悪夢殺しナイトメアイーター(大)!!」

いつの間にか全員で連携が取れている。ついでにとても強くなっている。

しかし、相手も強い。相手も必殺型のブーストを使う。

すると、正面から羽柴士さんが立ち塞がる。

「騎士式・紅楼の鉄槌!」

まさかの必殺型のブーストを使った。

樫妻先輩から聞いたことないが、知っているのだろうか。

「え!?香露音先輩…ブースト使えたの!?」

五十嵐さんも吃驚している。ついでに味方の二人も若干驚いている気がする。

「知らなかったの…?」

「うん…言ったこと多分無いよ。部活の皆は…多分…知らない………」

あまり、そういう事は言わない人なようだ。

必殺型のブースト同士ぶつかり合う。

「はぁーーーーー!」

羽柴士さんが押し切り、一人を脱落させた。

「凄いっちゃあ凄いけどなぁ…あれ…まだ未完成だよな。」

「そうですね。威力恐ろしいですけど…」

「えぇ……確かに…そうだけど………一応…勝ってる…し…」

「僕が言える事ではないですが、完成形はもっと美しいと思います。」

「そうだろうなぁ…」

こんな事は決してあの人の前では言えない。

その後はそのままの勢いで勝っていった。特に危なげも無い。

「おう…あの人ら…外に行けるのか…」

先輩が呟く。

「僕達も頑張りましょうね。」

「ああ…お前らの為にもな。」

決闘場に出る。相手は決して弱くない。

アナライズをかける。

(笛伴先輩と同じ雷神が居る…あと烈火の華と、氷結…)

「……三色団子…」

五十嵐さんはボソッと言う。

…この人…冗談言える口だったのか………

確かに三色団子だが、ふざけてる場合ではない。

相手は見た目で能力が分かる服装だ。

ちゃんと黄色の服装は雷神持ちだし、赤色と青色も同じだ。

この人達はふざけてはいるが、試験を舐めてはいない。

「………………始め!」





合図と共に世界が変わる。

(噴水のある広場…………隠れる場所は無い…あの人達はどの場所でも隠れる気は無さそうだな…堂々と三人は仁王立ちしてる。)

それ程、勝てる自信があるのだと思う。

「俺達は強いぞ!何だってヒーローだからな!フハハハハ!」

「ちょっと、止めてよ…!」

小さい声で氷結が言う。

「何を恥ずかしがる事があるんだい?楽しまないと損だよ?」

雷神が氷結宥めている。

「さあ、いくぞ!」

そのまま正面から突っ込んでいく。

「フハハハハ!君の正義を確かめさせてもらう!紅蓮・狼(大)!」

「拳で語るとか何とか、僕は苦手ですけどね!武器生成(小)!」

銃を作り出し狼に撃ち抜く。1匹に3発で消える。物凄く効率が悪い。

剣に変えて殺しにいく。

「電光石火(小)!」

炎の癖にタフだ。狼を倒し烈火の華に近付く。

「輪廻(小)!!」

「グッ…!!まだまだ弱いぞぉ!意志の重さが足りない!紅蓮・矢(大)!」

もしかして、全部(大)の威力でするつもりなのか…?

「唐傘(小)!何ですか!意志の重さって!閃律(小)!」

防御が溶けるように壊れる。

「確かに君は強いが、俺には及びやしない!紅蓮・剣(大)!!」

火力でせっかく作った剣が溶ける。ドロドロの部分を必死に直しながら戦っていく。

「ぐぅ……!縮地(小)…!!」

「意志さえ誰にも負けない程に強ければ!何時でも!誰にも!どんな悪条件の下でも!負けやしない!紅蓮・華(大)!」

やはり、相手はフルパワーでいつも攻撃している。

「ガハッ!」

思いきり爆風で吹き飛んだ、噴水の水に突っ込み体がずぶ濡れだ。

「プッ……濡れるの好きじゃないんですけどね…」

五十嵐さんや先輩も同じく、正々堂々と戦わざる負えない。

笛伴先輩はいつもの事だが、五十嵐さんは慣れていない。

「仲間の心配か?少年!」

だが大丈夫。

「いや…あの人達は強いですよ。心配は無用の人達です。」

「そうか、そうか!信用している事は素晴らしい!だが…」

一瞬に近づき、ニヤリと笑う。

「信用出来ていないのは…自分自身か。火球(大)!」

鳩尾に手を押さえて、火球を放った。

「ガハッ…ゴホッ…!」

吹き飛ばされ吐血する。ギリギリまで唐傘を使って、何とか、火球による攻撃は防げた。

「君は強い!さっきからずっとフルパワーで打ってきた。君はどうやら無能力者だ。(小)しか出せないのにも関わらず、私の力と競り合っている。素晴らしい!君は努力を惜しまなかった!」

すると、空気の痺れが異常に感じる。

その方を見ると、笛伴先輩は氷結と雷神に心臓とお腹を剣と槍で貫かれている。

しかし、笛伴先輩は笑いながら、氷結を抱き締め話さない。

「どうせ、俺は死ぬんだから……………ただでは!済まさない…………!!」

五十嵐さんは雷神の方に詰め寄る。

「………黒の一閃(大)!」

雷神を突き放す。その瞬間、更に空気が痺れていく。

「誰も…泣かさない………!雷鳴式・天啓…!」

さっきまで黄色の雷が一瞬にして白く輝く。

「この……離して!」

がっしりと捕まれて、身動きが取れないようだ。

「さあ、爆ぜろ…雷鳴・神(大)!!!!」

雷の音かと問いたくなるほどの爆発音と共に眩く光る。

その光が終わると、笛伴先輩と氷結は居なかった。気配も無い。

「ただでは死んではくれなかったか!青のヒーローの敵を取ってみせよう!」

「ゴフッ……!じゃあ、僕も同じですね…!」

血を吐ききり構える。

「きゃあ………!」

後ろから五十嵐さんが吹き飛んで来た。

「え!ちょっと…………!」

頑張って五十嵐さんを抱えた。あの速度で捕まえたのは自分でも驚きだ。

「大丈夫…?」

「うん………あの人……嫌い…!私を……コケに………!!!!」

軽くブチ切れている。軽くではないか。もう、結構ガチの方か。

「ねぇ…………棚見君…」

小さい声で耳打ちしてきた。

「……分かった…気を付けて。」

「絶対に勝つ…大丈夫…」

一瞬にして消えた。既に雷神の首元に刃を向けている。

安心して烈火の華の方を見る。

「どうも。お待ちしましたね。」

「さあ…戦いの続きだ!紅蓮・狼(大)!」

狼に目もくれずに突っ込んでいく。

「おお!どうしたどうした!倒さないとあとからきつくなるぞ!紅蓮・剣(大)!」

「縮地(小)…!」

空中に飛び、剣を構える。

「電光石火(小)………!」

(僕に…正義なんて…!ある訳が無いだろ!弱い僕に、強い意志なんて持っている訳が無いだろ……!)

刃同士の高い音がなる。火花が飛び散る程に強くぶつかり合う。

「ああ…逆か。強い意志なんて無いから弱いのか。いつまで経っても…弱いままなのか。」

「ああそうだ!」

「…ふん。でも、それを言われると腹が立つね!輪廻(小)!」

相手は綺麗に流してきた。やはりこの人は強い。

(僕とあの人の差が一目瞭然だ。五十嵐さんは、そろそろだろうか。)

僕の背後に五十嵐さんが来る。

「そろそろ…?」

「うん……………ゴフッ…!」

五十嵐さんも限界だ。

「ちょっと流石に大変だった………先輩居ないと……」

「そうだね。まさか派手にやらかしてくれるとは。」

「お陰で………ね…あとは…頼むよ…棚見君。」

「素晴らしいレディーだ。僕は右の肺を駄目にしたんだが…まだ耐えるのか!」

聞きたくもない。五十嵐さんを止める程の強さが無い。

何で…こんなにも………弱いんだ…

あの時の樫妻先輩の嘆きが何回も聞こえてくる。

「私が…無能力者だから……仕方ないんだよ……………」

何度も何度も、頑張っても、いくら頑張っても…報われない。

そうして、とうとう、諦めてしまった彼女の声。

何も出来なかった。諦めろなど言えなかった。

僕が出来たのは、代わりに諦めなかった事だ。

報われない世界に、足掻くことしか出来なかった。

「駄目です。五十嵐さん。」

手首を掴み、抑える。

他に何をすればいいか分からない。しかし、止めなければ僕は更に弱くなる。

ただ僕は…守りたいだけなんだ。守りたかっただけなんだ。

僕を一人にしないでくれ。

貴方を一人にしないでくれ。

「まだ…戦えるなら…僕と一緒に戦って勝とう。」

僕には正義など無い。美しい意志などない。

「僕は…目の前で…壊れる人を…もう、見たくない。」

「私は…もう疲れたよ………それでも?」

「………うん。」

「分かった………………」

僕が守るなんて言えない。そんな格好良い事を言える程強く無い。

「でも…守らせて。五十嵐さん。」

力が沸々と湧き上がる。

「じゃあ…私に合わせて…私はもう、合わせる余裕は……無いからね…黒煙スモーク(大)…!!」

視界が黒くなる。もう五十嵐さんは見えない。それでも、僕は戦える。

「これで………ギリギリ…雷神と戦える………」

まだ動いていない。後ろから声が聞こえる。

烈火の華の姿は見えない。気配など全く分からない。

「烈火の華……頼んだよ…」

声が遠のく。それでも不安は無い。

いつまで経っても溢れる力は収まらない。

いつまで経っても、希望と勇気が消えない。

ただ、守れる力だけが、僕を導いていく。

「武器生成(中)……!」

短剣から変形し長剣を作り出す。

「さあ来い!少年!ここにいるぞ!ここから動きやしない!紅蓮・華(大)!」

光の無い場所から急に赤い炎が現れる。

「守護の剣(中)!」

炎が弾かれて消える。炎の先に向かう。

「栄光の剣(中)!」

烈火の華が急に現れる。しかし、距離は既に把握している。

相手もさっきの声で分かっている様だ。

剣を叩きつける。(中)だと思えない威力で烈火の華を圧倒する。

「グッ………!まさか、ここで開眼するとは思わなかったぞ!素晴らしい!」

烈火の華は蹌踉めく。

「紅蓮・狼(大)!」

4匹が一斉に襲いかかる。

「さっき殺していない分もあるぞ!」

「氷帝の剣(大)!!」

凍てついた氷が狼を凍らせていく。

「流石に…驚いたぞ!少年!」

徐々に黒い煙が晴れている気がする。

効果が切れる前に五十嵐さんは倒さないと、負けてしまうかもしれない。

それに僕の体力も少ない。身体の至る場所が激痛で悲鳴を上げている。

「縮地(小)……!」

「紅蓮・矢(大)!!!」

直ぐに電光石火に切り替えて、攻撃の仕方を変える。

「……紅蓮・華(大)!!!」

何も言えないほど、ガス欠を起こし始めたようだ。

「僕は………もう、負けません。」

一瞬に懐に潜り込む。最大の一撃を放つ。

「霹靂の剣(大)!!!」

「ぐわーーーー!」

身体を真っ二つに切り込んだ。同じタイミングで煙が消えた。

五十嵐さんを見ると、ギリギリで槍を躱して首元に短剣を差し込んでいる。

「本当に…………無茶振りして…!!!」

更に深く刺す。

すると、同時に世界が崩壊した。



「あ……勝ったんだなー」

笛伴先輩はヘトヘトになって座り込んだ僕と五十嵐さんの肩を叩いた。

「おめでとう。俺達は外に行けるぞ。」

「ほ、本当ですね。ハハハ……」

そんな事を考える程余裕が無い。足が震えている。

必死になり過ぎたかもしれない。

「ねぇ…棚見君。」

「??どうしたの?」

「開眼したんだよね。能力。」

「どうやらそうみたい。」

「英雄じゃない?」

「へ?」

「だから、開眼した能力、『英雄』じゃない?」

確かに、霹靂の剣や栄光の剣等の何とかの剣と言う名前は英雄の能力だ。

「え…………ホントだ……………………」

我ながらヤバイ能力を開眼した気がする。

「それってさ…春斗。一世紀に一人レベルの超が付くほどのレアの能力やつじゃね?」

「そ、そうですね……えぇ…」

僕がそんな大層な能力になるとは微塵も思ってなかった。

「フハハハハハハ!素晴らしかったぞ!少年!」

「ど、どうも…」

僕は立ち上がる。

「まさか、負けるとは思わなかったぞ!フハハハハハハ!やはり、君は強いなぁ!そして開眼おめでとう!」

「あ、ありがとう御座います…」

強く肩をバンバン叩かれる。そして、笛伴先輩に詰め寄る。

「だがしかし、そこの君。」

「は、はい。」

「決闘とは言えども、レディーを抱き締めるのは如何かと思うぞ?」

目が笑っていない。

「そ、それは…スミマセン……」

「あまり、女性を怒らせない方が良いぞ?」

「き、肝に銘じておきます…」

「そうかそうか。分かったなら良い!さよならだ!少年!フハハハハハハ!」

「あ、はい。さようなら…」

「バイバイ、レディー。」

「あ…はい…」

五十嵐さんはドン引きしている。絶対に何かされている気がする。

「次は凍死させます…さようなら。」

「す、すまない…」

笛伴先輩は、ビビっている。自業自得…だと思う。言わないけど。

とにかく、これで僕も外に行ける。

それについて喜ぶ前に、次が問題だ。
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