ブレインダイブ

ユア教 教祖ユア

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弐章・選ばれし勇者編

2-23 55 香露音視点 さっきから絶体絶命

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「何この量!」

「進めば進むほど、湧いてくるんだけどぉ!」

「…………どうしましょう…?」

「本当にいつまでも走れませんよ…!これ!」

大地の涙が居なくなってから大量にモンスターが湧いて、4人はずっと逃げ続けている。

「マジでなんかないの…!?」

「どこでも通れるドアとかですかね?」

「てっててー!?」

「コントしてる場合じゃないでしょ!?」

「鎌鼬(中)…もう…追い付かれてます…!」

確かにモンスターがほぼ真後ろにいる。

「正義の神罰(大)…!」

香露音はモンスターを薙ぎ払ったが、それでも溢れてくる。

「幸い、此処は能力使いまくっても、あんまり疲れないしある程度は戦ってもいいかもしれないね!」

「じゃあ、樫妻先輩は戦うんですか!?」

「出来ることならしたくないに決まってるでしょう!」

目の前にモンスターが来る。

「本当に鬱陶しい!死線誘導・回帰(中)…!」

狭いところでは、下手するとこちらに死線が来てしまうので、やめた方がいいようだ。

「そんなに倒されたいならやってあげますよ!英炎の剣(大)…!」

物凄い灼熱を受けても建物はヒビ一つつかない。

すると、明らかに雰囲気の違う場所に辿り着いた。

「あらら…?モンスターが追って来ない…帰っていった…いや、消えた…?」

「でも、あそこに扉がありますよ…!もしかしたら、戻れるかも…!」

しかし、誰もそこに行こうとしない。

「やっぱり、そうなる…?」

「…こんな…不自然な空間がありゃあ…ね?誰だってそういう考えになりますよ…」

上を見上げる。

すると、天井が変形していく。

徐々に一部分だけが床に向かって伸びていく。

「こりゃあ…参ったねぇ…」

「……………嫌な…予感が……します…」

更に変形していき、大型の何かになっていく。

「あ~あ…確定ですね…」

「簡単には出させてくれないようね…!」

そして、白い何かは色付き始め、恐ろしい大型モンスターと変形した。

「本当に、なんで建物からモンスターが生えてくるの…!?意味不明過ぎて腹立つ!」

「そんな事言ってる場合ですか…!?こいつをどうにかしないと…っていうレベルじゃないですよ!?普通に死にますよ!ガチで戦わないと…!」

「分かったから、構えて!」

「…………来ます…!」

モンスターは振り上げた後、直ぐに叩きつけた。

全員、避けたからいいものの、当たったら普通にミンチにされる気がする。

「私が動きを止める…!出来るか分かんないけどね!死線誘導・乱舞(大)…!」

身動きは取りづらそうにはしているが完封は出来ていない。

「ちょ………………と…!」

珍しく緋色が必死に止めている。

「ナイスですよ!先輩!氷帝の剣(大)!」

更に足だけを凍らせる。やはり、この大きさでは一撃では倒せない。

「香露音先輩…!」

「分かってるよ!」

2人で同時に攻撃する。

「黒の一閃(大)!」

「正義の神罰(大)!」

頭を狙ったがどうだろうか。

「…ッチ…死線にボロが来始めてる…!帰ったら替えないとね…!」

「大丈夫なんですか、それ!」

「大丈夫…!サルが100体来ようが壊れやしないさ。それよりも此奴だよ!」

動き始めた。

「嘘でしょ!?」

「…致命傷さえも与えれて…!?」

普通に立っている。更にとてもでかい棍棒を生成し薙ぎ払った。

「何でも有りじゃん!?」

「ヤバイですね…!本格的に!」

「そもそも、棚見君と緋色先輩は拘束の為の能力じゃないですし…!」

「何回も動き止められない…!それでも止められないと、攻撃さえ出来ない…!」

雄叫びを上げると建物が揺れ始める。

「もう…なんなの!?」

緋色が叫ぶ。

「一瞬だけ止めてください!」

「分かったよ!死線誘導・回帰(大)!!」

既に、動き難い状態で能力も使うのも簡単じゃないが、それでも緋色は棚見君が動きやすいように死線を操っている。

「少しだけでも…!止まってくださいよ!霹靂の剣(大)!」

至る所に電撃が走っていく。

「本当に…!死線に電気が伝わらないって…如何言う力してんのか…!」

本来なら死線は鋼糸と呼ばれるいわば金属の糸だ。

だから、電気誘導される筈だが英雄の雷撃はされないらしい。

「…いやぁ…!どうやらそのようですね!」

「はぁ!?春斗!?知らずにやったの!?」

「結果が良かったのでいいじゃないですか!」

またこんな大変な状況でも喋っている。

この人達は場の空気を知らないのだろうか。

それでも、さっきの攻撃で少しだけ動かなくなった。

「もう一度…!黒の一閃(大)………!」

目を突き刺してから黒の一閃を放った。

すると、モンスターは暴れ出し鶴ちゃんを叩きつける。

「鶴ちゃん!縮地(中)………!」

香露音は咄嗟に鶴ちゃんを抱えた。間一髪だ。

「大丈夫!?」

「……な、何とか…」

すぐさま唐傘を展開したようで、直撃は免れたようだ。

しかし、ある程度はダメージを受けている。

それに、緋色の攻撃は通らないし、妨害もあまり出来ない。

香露音自体は防御系なので、火力は期待出来ない。

そうなると一番の期待は棚見君だが、それでも倒せてない。

「出口寸前で全滅とか嫌なんだけど…!」

「それは僕も同じですが…どうしたら…!」

すると、2人が顔を見合わせた。

「…何か…来てない………?」

「そうですね………気配なら…」

モンスターは更に暴れ出し、緋色に攻撃してきた。

「今の所、私が何も出来てないからって!」

飛んで避ける。

「縮地(中)………私が雑魚だと思うなよ…!」

もう片方の目に武器生成で作ったナイフを刺した。

「暴れるもんなら…暴れてみろ…!」

ズガン!と言う重低音が響く。

銃剣だったようで、何発も撃ったようだ。

モンスターは雄叫びを上げて緋色を払うかのように攻撃したが、それを狙ったかのように緋色は避け、モンスターの攻撃がモンスターに当たっていた。

「バーカバーカ!…ざまあみろ!…これで、あっちは見えないんじゃない!」

あっちというので、辺りを見渡す。

モンスターは形振り構わずに暴れ始めた。

「うわぁ…!?」

「更に状況悪化してません…!?」

すると、鎖が現れる。

拘束バインド(大)…!!」

モンスターの動きが完全に止まる。

「この能力は…!」

「皆ー!やっと追いついたよー…ってあれ?もう出口?」

「夏希!」

後輩達を連れた夏希が来た。

「入口から来てここまで走ってきてくれたんだねー!」

「やっぱり、そういう構造だったんだ…」

「本当に大変だったよー」

「団体資格取れましたよー」

「頑張りました!」

「今…頑張ってます…」

光はそう言っているので現実に戻る。

「此奴をどうにかしないと、出口に出れない!」

「なんでこんなでかいの!?」

「知らん!取り敢えず奏恵ちゃん、鶴ちゃんを!」

奏恵ちゃんは鶴ちゃんを治療していく。

モンスターは更に雄叫びを上げた。

風が吹き始める。その一瞬に斬撃が見えた。

「騎士の喝采(中)…!」

斬撃のようなものを一瞬にして叩き斬る。

「何これ…!まるで…鎌鼬みたいな…!」

「助かった…!ありがとう、香露音!」

「鎌鼬とか武器生成とか…他の基礎能力使えるかもしれないですね…!」

そうなると困る。何とか早めに倒さなければ。

「月桂(大)…!」

お腹を切り裂く。しかし、あまりダメージは入ってなさそうだ。

「同じ場所に攻撃していくしか多分倒せないと思います…!」

「…そうだね。お腹が一番攻撃しやすいし、あそこを狙おう…!」

「はい…!」

「鶴、大丈夫?」

「…うん。戦えるよ。」

鶴は立ち上がる。

「あと…3分…!あと3分が限界です…!」

「3分もあれば十分だよ!光ちゃん!」

緋色が最初に攻撃する。

「死線誘導・殺戮(大)…!」

その次は棚見君だ。

「栄光の剣(中)…!」

その次は鶴ちゃん。

「…黒の一閃(大)…!」

そして、夏希も攻撃していく。

悪夢殺しナイトメアイーター(大)………!」

更に、香露音も攻撃する。

「正義の神罰(大)!」

モンスターが雄叫びを上げた。

「月影(大)………!」

智花ちゃんも攻撃し、最後に奏恵ちゃんが最後の攻撃をする。

聖なる光ホーリーバースト(大)!」

モンスターは全てを食らって暴れ始める。

しかし、さっきまでよりも衰弱しているのが見て取れた。

「うわ…!?」

動きが急に止まったと思えば、霧となって消えた。

「何だったの………?今の…」

「と、取り敢えず…外に出て、帰ろう…」

「う、うん。そうだね。私も…賛成…」

外に出る。

全員がおかしいことに気付く。

「ねぇ、春斗…?…私達…ここから来た…?」

「………いやぁ…違うと思いますけど…?それに…」

「ねぇ、ここって…」

前回の世界線で、外の世界へ行った4人は全員此処を理解した。

「死神と…遭った…場所…」

「先輩…!建物が…!」

全員は後ろを向く。既に建物は無い。

それに、本来ならこの時間はおかしい筈だ。

何故今朝なのだろうか。

外の世界に行った時は太陽は真上にあった。

「時間が戻った…?」

「な訳無いって…進んだんじゃ無いの?次の日に。」

「それもあるかもしれないですけど…あの中にいたのはせいぜい数時間。…普通にあり得ません。」

「もしかしたら……とっても加速してるのかも…?」

「…じゃあ、今、何時ですか…………?」

嫌な予感がする。

「……気配察知してる?」

緋色が突如言い出す。更に、不安がよぎった。

「してますよ。」

「わ、私も。…で、でも……………」

「ハハ…そうだよね。何にも居ない。…皆、構えて。今すぐに!」

緋色が叫んだのと地面が揺れたのは同時だった。

「…また…来る…!…死神が!」

殺気を感じる。また戦わないといけないようだ。

それが運命。

香露音は大地の涙の言葉を思い出しながら剣を構えた。
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