ブレインダイブ

ユア教 教祖ユア

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参章・昇りし太陽編

3-9 66 夏希・その他視点 かの記憶は夢の様に

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香露音視点

「やっほー!」

後ろから突撃してきたのは私の友人。

痛くない程度に衝撃が来た。

「この~!」

私はやり返しと称して顳顬をグリグリと押した。

「いてて…!」

あと一年で、私達は少学園を卒業する。

この子とまた別の進路と歩んでいく事になる。

それでも、きっと、うまくいくだろう。


そんな訳無いでしょう。


「…え?」

誰かからの声が聞こえたような気がするが、周りには私とこの子しかいない。

明らかにこの子の声じゃない。

…では、誰の声だろうか?…空耳だろうか…………?

私は放課後にかつての事を思い出す。

きっと、さっきの声が聞こえたせいだ。


十も満たない貴方に何が分かるのよ!


これはある先生に言われた言葉だ。

何故、この言葉を言われたのか…昔の事でよく思い出せない。

ただ…その言葉は私にとって呪いだ。今でも変わらない。

…何が分かる!…と言われても…分かる訳がない。

教えてくれなかったのに。何も…教えてくれなかったのに…!

夜は怖い。

私の呪いが降り注いで来るから。

かつての事を思い出すから。

私は…あの人を慕っていた。その人に棄てられた気持ちになる。

…夜が嫌いなのに……夜の騎士に開眼するなんて…皮肉しかない。

私にとって…この能力は…呪いの鎖でしかない。

それでも………

使わざる負えない時は…その時が来てしまったら…

私は…剣を取り、その能力で悪を穿つ。


貴方が?口だけでしょ?守れなかったくせに。


「…っ…!誰!?」

私にそんな事を言うのは誰だ?

「私は…守れなかった事なんて…!!!!一度も…………」

無い。そんな事が何故か言えない。

「…一度も………」

何故か引っかかる。

………もしかして…

「十も満たない貴方に何が分かるのよ!」

この言葉を言われた経緯が思い出せない様に。

私は…全て守り通したと言えない理由が思い出せないのだろうか。

私はもしかしたら…何か肝心な何かを忘れているのかもしれない。







光視点

「…うっわ…テストの点数わっる…」

まぁ、仕方無い。はっきり言って勉強してない。

それでも、平均点ギリギリで済んでいるのだからまだマシ。

「………はぁ……ウィザードに開眼したばっかりで……気持ち悪い…」

普通のウィザードなら気分が悪くなるまではいかないらしい。

違和感がある位なら普通とのこと。

(医者からだから酔うって言われたけど……ああ…気持ち悪い。)

確かに、誰かが能力を使う度に、靄のようなものが溢れている。

だから、有効活用をしようと思って、毒を付与した人の気配を見る事ができるのではないか…と思ったが、まさかのポイズンを持っていなかった。

試す事さえ無理だった。

持続型のブーストに期待だ。…それで付与できなかったら諦めよう。うん。

(おえ……今日も早退しようかな…おえ……)

ついでに言い訳させてもらうけど、テスト勉強出来なかったのもこいつのせいだ。そういう事にしておく。

…で。そんな事が如何でもいいと感じる程、別の問題を抱えている。

なんか知ってる気がする。…というだけだけど。

ウィザードに開眼した時も、やっぱり。と思った。

そして、開眼後のこの気持ち悪さも、でしょうね。と知っていた様に感じた。

(直感なんて私には無い。…悪い予感だけしか当たらない。…それに……ここまで分かるのは…)

流石に不自然だと思う。

誰のせいか。なんのせいか。それとも、私のせいか。

それに…

時々、死への恐怖が溢れ出るのは…

……それを私のせいと言えるのか。何か知らなければならない気がする。

(きっと…知ってる筈だから。)

思い出せないだけ知っている。

それを…私は逃げ続けているだけかもしれない。

私は知っている。

私は…誰かを探している。

私は知っている。

……誰かに………………殺されたかもしれないという事を。





……1週間後…私は思い出した。

彼を。緋色先輩を。香露音先輩を。夏希先輩を。

緋色先輩が、私達が外の世界へ行く事を良しとしてなかった理由を。

私達は…先輩達全員を含む私達は…運命を変える事ができる。

でも…それが出来る程の力は皆無だった。

私は一瞬にして奏恵に…いや、元奏恵モンスターに致命傷を与えられた。

今度は、彼が居ない。彼は…緋色先輩の心の拠り所な筈だ。

緋色先輩は絶対に思い出している。私は…如何すればいいのだろう。

私が思い出したのは彼との繋がり。彼と、密かに交した約束。


「どうしたの?僕を呼び出して。」

「……私は…奏恵とか、智花の様にポジティブには考えられない質で。」

「…どういう事?」

「…∨∪♯君。…私は…大地の涙でさえも10回繰り返したと聞いた。…私達がたったの一回で終わると思えない。」

「……如月さんを復活させるだけ。…何回も……」

「分かってるくせに。…私達は…一人でも死んだら駄目なんだよ?…前回…誰も死なずに済んだ?」

「……。多分…」

「少なくとも…無傷では無いよね。」

「………うん。」

「私は…前回世界をやり直さざる負えなかった、理由ともう一度直面するって思ってる。それが終わっても…次の問題は対処しきれない。」

「…言い切るね。」

「…………そうじゃないと…そもそも、1回目の世界だけで事足りると思うから。」

「…確かにね。」

「……でも、もう一度夏希先輩が消えるとは思わない。…また同じ事を繰り返してしまう。運命を抗うなら条件を変えないと。」

「…じゃあ次は誰?」

「知ってるでしょ。」

「…僕だって言いたいの?可能性はあるけどね。」

「∪&∌君が消えて忘れたら…真っ先に思い出すのは緋色先輩だと思う。確信さえしてる。」

「…そうだといいね。」

「その時は…誰よりも先に思い出すから、あの人は多分孤独になる。」

「…でも、如月さんの時は、色んな人に…」

「嘘つき。…全く…微塵もそんな事思ってないくせに。…あれは…香露音先輩が思い出すって分かってるから。それに初めてだし。…今回もそうだとは限らない。」

「……何で、さっきから…」

「私はの。ブレインダイブ能力とは違って…目が良すぎて感情すら見えるの。それに、ウィザードになってから更に見える物が増えたし。だから嘘が分かってしまう。」

「…ブレインダイブとは違って隠せないのか。」

「私は…緋色先輩が一人になると…嫌な予感がする。だから、そっちが消えた時に、緋色先輩よりも早くなくていいけど…嫌な予感の通りになる前にそっちの事を思い出さないといけない。」

「それで僕を呼んだんだね。」

「約束は…強いつながりになるでしょ?それに不安でしょ?」

「…違うって言ったら…嘘になるね。勿論、不安だよ。」

「だから、私は君を思い出す。約束ね。」

「分かった。約束。」




私は約束という言葉で思い出した。

約束と言うのは人々は簡単に口に出す。しかし、行動するのは…とても難しい。

如何だろうか。…早く、緋色先輩を探さないと。

…いや、緋色先輩じゃなくてもいい。誰でもいいから探さないと。

やり方?知ってる訳が無い。





夏希視点

「ねぇ…夏希。二人が喧嘩したって…知ってる?」

この日、初めて聞いた。

無鉄砲な子と、慎重な子。この二人は性格は反対だが、三人で仲良くしていた。

…夏希の知らない所で喧嘩したのだと思っても見なかった。

(如何しよう…私は何をしたら……)

と思ってはいたが、直ぐに仲直りすると思っていた。

……数日後、一人居なくなった。

私達二人で探した。

足が疲れて、筋肉痛になっても探した。

「…どこにいるんだろ………」

この街の何処にも…彼女は居なかった。

「もしかしたら…外の世界に行ったのかも。」

「…本気で言ってるの?まさか…外の世界に行く気なの…?」

夏希は無能力者だ。それも断トツで弱い。

だから、資格の取っている程の強さを誇る彼女を制止させる事は出来ない。


…………本当にそれで良いのだろうか。

取り返しのつかない事になるのではないか。

(私が何処かで見た夢………あれと同じになってしまったら………)

でも、如何止めたら良いのだろう。止められるほどの力も理由もない。

無鉄砲に加え、頑固だからだ。

一度決めたら、痛い目に合うまで止まらない。

その痛い目が今度は……

「…駄目………行かないで…」

もう一人を見捨てたくはない。 

「分かってる…けど…」

君が行く事は百も承知。

ただ…夏希一人にしないで欲しかった。

…無能力者でも、出来る事がある。



何処かで、誰かから、何時か…分からない。

でも、確かに教えてくれた。

抗う事を。
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