ブレインダイブ

ユア教 教祖ユア

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参章・昇りし太陽編

3-10 67 緋色視点 真の不良に出会う不良

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「ふー…食べた、食べたー…」

「流石、大地の涙だ。…というか、カード1枚で全部支払う人見たの久しぶりだ。しかも、色違いだし。」

この世界の金持ちはカードで支払う事が出来る。

それだけでも十分だが、更に種類が5つ程あって、一番良いクラスのカードを大地の涙は持っていた。

あまり声には出せないが、そのカードがあれば一生遊んで暮らせるとまで言われてる程の金持ちというレベル。

ついでに前回の外の世界に行ったときの、お金の話をすると、稼ぎ分はほぼほぼ消えた。

ざっと9割はサヨナラした筈だ。

大分、蟲野朗の素材で金が貰えたが、武具を一式揃え直した。

それに、以前は武器生成で剣を作っていたが、黄金の王と戦うにあたり武器生成という能力を無効化されるので武器を作れば一瞬にして消える。

無垢の緋色と繋がれば、昇華が出来るので多少は攻撃に耐えれるが、それ以外は短剣を使うので、無垢の緋色の為だけに長剣は作りたくない。

だから、短剣だけ新たに作った。

その時、何かしっくり来なくて不満気な顔をしていたら、鍛冶屋が爆笑していた。

「…ワッハッハ!お前さん分かりやすいな!…お前がしっくり来ないのは間違いじゃない。もう一度打ってやる。しっくり来る事が出来るさ。」

まさかの試された事があった。

もう一度渡された時の感動は忘れられないだろう。

「でさ。…何か最近、不良グループが多くないか?」

「ま、そうだね。何だっけ…」

「夜露死苦団?フッ…」

「プッ…違う。それ潰れたやつじゃん。」

流石に夜露死苦は酷い。

「やっぱり違うか。…あ、あれだ。血蝶だ。」

「血蝶団か。…それだ。…やっぱり噂は本当かもしれないねー」

「ああ、そうだな。」

誰を探しているのだろう。

「オラオラ!血蝶団のお通りだぜぇ!」

「キャッハー!」

「煩いねぇ!あんた達!もうちょっと上品に出来ないの!」

「すんません姉御ー!こいつら馬鹿なんで無理っす!」

姉御と呼ばれている人は、確かリーダーだったはずだ。

「それでもね、今回は妹が居るんだから勘弁してくれよ!」

(妹…?)

どうやら妹が居るらしく、二人で覗き込む。

「…思った以上にしおらしいな…」

「………え…あの子が本当に妹なの……?」

そう………妹とは奏恵ちゃんだった。

…どうやったらあんな健気で真面目な子に育つのか。

もしかしたら、姉もこんな質だがまともかもしれない。

…不良にまともはいるのか…?

(私はまともだから…………なわけ無いか。)

すると、奏恵ちゃんと目があった。

…合ってしまったという方が良いかもしれない。

「お姉ちゃん。…ちょっと見つけたかも………」

「マジ?行ってきな!」

直ぐにバイクを止めて、奏恵ちゃんを下りさせた。

こっちに来る。

「緋色先輩…………ですよね?」

「……お前…不良の知り合いなのか…?いくらなんでもそこまで不良にならなくても…」

「そこまで不良ガチ勢じゃないわ。」

「不良ガチ勢ってなんだよ。」

…視線を感じる。…言わせよう。

「覚えてますよね。」

…どうやら、彼の事を思い出す前提で話しているようだ。

そして、それは奏恵ちゃんも思い出しているという前提もある。

「…覚えてる。………名前以外は。」

「………やっぱり…先輩も…」

「…?同じ小学園か?な訳無いか。」

「おい。」

「…じゃあ未来の後輩か?」

奏恵ちゃんは驚いているみたいだ。

「…!!」

緋色はちゃんと説明した。

「大丈夫。こいつも、やり直した事知ってる。…思い出したと言い換えても良いけど。」

「………え…!?」

「なんだい、なんだい。この人が奏恵が探してた人かい。」

どうやら、噂は私のせいでもあったようだ。

姉の顔が広いのだから探しやすいだろう。

「……」

奏恵ちゃんの姉に睨みつけられた。

少しだけ尻込みしてしまう。

(…何を考えてるんだ…この人…)

「ふ~ん。」

とだけ言って、

「ま、好きに駄弁っておくれよ。」

と、去っていく。

その背中に格好良さを感じてしまった。

…緋色も真の不良の道に歩んでしまうのか……という冗談は置いといて。

「…奏恵ちゃんは思い出したの?」

「はい。…私が…如何なったのかも…」

「………大丈夫なの?」

「…大丈夫です。…私は…私達はやるべき事があるので…そっちを優先します。…だから……大丈夫です。」

眼の奥には闘志で燃えている。

緋色が思ったよりも、彼女は強いようだ。かっけえ。

「…そっか。……それなら良いよ。」

「…緋色先輩は……大丈夫ですか?」

「ああ…これか…」

退院したとはいえ、顔に包帯がまだ巻かれている。

左眼が未だに包帯で見えてない。

…まぁ失明してないようなのでそれも奇跡だと思う。

「…大丈夫、大丈夫。……ちょっと、やらかしてね。…あと、2週間位で包帯は取れるから。」

「……」

少しだけムスッとした顔になる。

「?」

「…緋色先輩の大丈夫は…他の誰よりも信用できません。先輩は軽傷かのように言いますけど…絶対に…ぜーーーったいに重傷ですよね?」

「…それは~…神のみぞ知るっていうか?」

「安心してくれ。こいつ、ちゃんと病院送りで死にかけレベルの重傷を受けて3日前にやっと退院したから。」

「やっぱり、そうなんですね。」

「………」

言うな。行ってくれるな、橋本。

「先輩は今後の予定は何するんですか?彼を思い出す為に。」

「えっとね……」

先ずは栄光賞ネモフィラで力試しをする事。

それが終われば、大地の涙と、橋本と共に白い建物を目指す事を言った。

「…大地の涙が…手伝ってくれるんですか…!?」

「そうだよなー…あの二つ名が…」

違う違う、そうじゃない。

名誉な事だと言いたいのだろうが、こちらは全く思わない。

橋本はズレている。

「あの洗脳をしたがる人がですか!?」

「えぇ……お前ら…何があったら…そんな言い方…何があったんだよ…」

……もしかしたら、ズレているのは私達の方かもしれない。

自覚あるだけマシか?

「そうなんだよ…だから、今回は、私は洗脳される必要は無さげよ。」

「原因は樫妻かぁ…」

「何で私が原因になるのよ。」

「大抵は樫妻が原因だからだよ。自覚無いのか?」

「無い!」

奏恵ちゃんに「本当に?」という目で見られた。

数々の喧嘩を売った回数を思い出す。

「…やっぱりある………かも…」

「だろうな。」

「さっき言ってた…栄光賞って、何ですか?」

緋色には説明出来ない。

語彙力が無い。喋り方が非論理的なので意味が通じない。

「………橋本…」

ここは…

「何だ?」

「説明頼んだ。」

責任放棄。

これを先輩がするとは思えない!

「……………説明難しいから、俺も分かりやすくできる自身がねえのに…」

という事で、橋本は説明し始めた。



栄光賞……それはただの決闘ではない。

勝てば勝つほどポイントが加算され、そのポイント順で決定される。

栄光賞は約1ヶ月間開催され、任意参加だ。

任意参加した者だけにポイントが加算されるので、参加していない人に決闘してもポイントは獲得出来ない。

下のランクの人が上のランクを倒せば、同格よりもポイントの加算倍率は高くなる。

逆に上のランクが下のランクを倒すと、同格よりもポイントの加算倍率は低くなる。

同格を倒せば30ポイント。

最高倍率は300%なので最高獲得ポイントは900。

最低倍率はランクが下がれば下がるので実質無限だが、最低獲得ポイントは1より下がる事はない。

倍率はランクが1位分違う毎に10%加算されたり減算されたりする。

小数第二位は切り捨てで計算し、最終ポイントは小数点全て切り捨てで計算し最終報告する。

上記の通り、勝てば30ポイント獲得出来る。

しかし、負けてしまえば(同格の場合)10ポイント奪略される。

敗北した場合も倍率は変動する。(これも上記の倍率と同じ様に計算)

一度戦った相手は3日は決闘禁止。(ポイント無しの決闘も同様)

決闘は、ブレインコネクトをする通称V型バーチャル・タイプでは無く、守護者の能力を基礎に使った、通称B型バリア・タイプとする。

観戦は自由だが、決闘中の人を妨害する行為は決してあってはならない。

勿論、幇助する事も絶対禁止。

したと判断した時点で、栄光賞の参加権を永久剥奪する。

された場合は速やかに報告し、幇助されていると分かった時点でも同様とする。

観戦する人、決闘する人は暴言等も最低限のルールは護らないといけない。



「…とまぁ、こんな感じだな。」

一通り説明し終わり溜息をつく。

「おおーー…」

緋色は拍手する。

「分かりましたー…」

緋色と同じように奏恵ちゃんも拍手した。

……という茶番は置いといて。

今回は冗談と茶番が多くなってしまうのは遠回りをしているからだろう。

「…緋色先輩は、橋本…さんと、私以外で以前の事を思い出している人と会いましたか?」

「いいや。思い出してない知り合いも一度も会ってない。」

「…そう…ですか。」

「小学園だからね。今回ばかりは全員が個々で思い出してもらわないとね。」

今回の難題は味方が居ない事。

味方が思い出せる環境があまりない事もある。

だから、橋本が思い出せるのは奇跡と言ってもいい。

それ程、死に対する恐怖が魂に強く焼き付けているのだろう。

「それに、私は他学園の知り合いなんて居ないからなぁ。」

「私は…お姉ちゃんにすれば、見つかりますよ?」

奏恵ちゃんはか弱い見た目をしておいて、味方がえげつない。

肝が誰よりも据わっている…気がする。

「まあ、流石にお姉ちゃんに何でもお願いするのは申し訳無いので出来るだけ自分で探しますけど。」

「…オッケー……じゃあ、探すのは頼んだよ。」

緋色は存在しない彼を探すように辺りを見渡した。
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