ブレインダイブ

ユア教 教祖ユア

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参章・昇りし太陽編

3-19 76 緋色視点 赤黒き記憶

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(何時もより人が多いな…みんな滅茶苦茶いるじゃん。…きも。)

これはただの殺し合いだ。それを観戦するとは世も末だ。

(短剣よし。防具よし。死線よし。うん…大丈夫そうだね。)

手袋を付けて準備万端。あとはこいつを倒すだけ。

これが終わらせて、外の世界で白い建物に向かう。

バリアが張られていく。

「今回の試合を楽しみにしてたよ。樫妻さん。」

片岡が余裕そうな佇まいで言う。

「…君が急に強くなったらしいじゃないか。君は僕に勝てるかな?」

この圧倒的な余裕が緋色の一番嫌いなところだ。

始まりの合図が鳴った。

「黄金の剣(中)。」

その名の通りの剣が大量に生成される。

これは武器生成の上位互換と言ってもいい能力。

投擲も普通に出来るし、大剣だから一撃がとても重い。

「行け。」

(来い!無垢!)

一瞬の内に長剣が生成され、同時に剣が血紅に染まった。

剣を弾き飛ばす。

(いったあ…!一々腕が痺れるじゃん!)

その剣自体に若干だが能力を無効にする力がある。

だから、武器生成の長剣を持っているから、物凄くダメージが体にくる。

避けても追いかけてくる。物凄く面倒臭い。

「王の裁き(中)。」

剣に黄金のオーラが纏われて、緋色に一直線に攻撃してきた。

防御が出来ないので対角線上に吹き飛ばされた。

「ガハッ…!クソ…!」

「直撃したと思うんだけどね。それでまだ生きているなんて、面白いね。」

(開始3分で殺されかけるとか、集中力無さ過ぎだろ私!しっかりしろ…!)

さらに追加で剣が生成される。

取り敢えずこいつを壊さない限りは如何にもできない。

「壊せると思うなら、やってみると良い!」

相変わらずの上から目線で反吐が出る。

精神世界と繋がる緋色を切り替える。

「行くぞ、尊大。死線誘導・折損(中)…!」

死線で3分の1の大剣を破壊する。7割壊せると思ったのに…これはヤバイ…!

「これは驚いた。」

すると、空中に金色に輝く太陽が現れる。

「ならばそれ相応のもてなしが要るね。金の太陽(大)。」

その太陽から弾幕が緋色に降り注ぐ。

「死線誘導・回帰(中)…!」

(駄目だ…相殺できない!何がおもてなしだよ…!)

炎の弾幕を掻い潜り、片岡の元へ攻撃を仕掛けに行く。

すると不意に横からの弾幕が襲ってきたが、ギリギリで避ける。

(…気配察知でもギリギリ…ほぼ直感で避けたみたいなもんだね!…どんだけ速いんだよ…あの弾幕…!)

黄金の王に開眼すれば勝ちゲーと呼ばれるのは、大した努力をせずとも大抵の能力者を倒してしまうところだろう。

「君がこれを避けるなんてね。普通に焼き殺されると思っていた。」

なんて失礼な言動だ。

「やれやれ。とんだ悪党が舞い降りてきたよ。」

「誰が悪党だって?」

「それは君だよ。君だって分かっているだろう。君が感じている孤独は君が生み出したんじゃないか。」

「つまりは…嫌われてるのは自業自得だって言いたのか。」

「ああ。図星だろ?」

「残念ながら…図星じゃないんだなあ…」

弾幕を切り刻むと爆発した。その爆発を利用し加速する。

「吃驚するぞ?本当に私は何も悪くなかったんだから。…それに……」

更に金色の大剣を全て破壊した。

憤怒の緋色が呼んでいる。

「貴様等とおててを繋ぐのはこちらから願い下げだな。」

「反省する以前に…君の罪に自覚無し…か。」

「…お前耳悪いな。いや…頭か。」

「話の通じない馬鹿は嫌いだよ。」

「確かに、話の通じない人間は自覚が無いらしいね!」

論点がズレている。

「してねえっつってんだよ。何だ?人の話も聞けないのか。」

もう少しで辿り着こうとすると、黄金の鎖が緋色を襲う。

「王の資格(中)。何度君が僕を煽ったとしても無駄だ。事実は変わりないのだから。」

「お前が、何しても無駄な愚者である事は重々承知したよ。皮肉だな…愚者が王の資格を語るなんて!」

短剣を抜いて構える。

「王ってのは…真実を湾曲する奴馬鹿の事を言ってるのか?」

鎖を断ち切る。

このナイフは一番しっくりきて、斬れ味も最高だ。

柄にはHiroEnforcer執行者の2つの文字が書かれている。

「だったら片岡。馬鹿お前なら王を名乗るに相応しいよ。」

「王はいつだって正しい事をする。何故なら正義が勝つからだ。」

さっきよりも倍以上の黄金の剣が現れる。その大剣は全て輝く様に燃えている。

その炎は果たして何のエネルギーを使っているのだろう。

自身のプライドを傷つけられた怒りか?

こいつに正義なんてあるのか?理由が理由になってない。

こいつはいつまで偽りの王を演じるつもりだろうか。

「正義が勝つ?だったら良かった。」

「何?」

「私が勝つって事だね。」

「お前が?」

口が悪くなってるんじゃないのか?王様。

「それが片岡の正義なのかどうかは興味無いけど…自分の正義が100%正しいと自惚れるなよ。私にとって……それは正義なんだから。」

「アッハハハハハ!君が正義を語るなんて、僕は夢を見ているのかな?君如きが!僕をあまり笑わせないでくれ。」

「………はぁ…これだから馬鹿は。」

剣を避けながら再び進む。

「死線誘導・乱舞(大)……」

私に正義という言葉が似合わないのは誰よりも自覚がある。

それでも戦う理由がある。

…彼をこの地に再び踏ませるために戦うのだから!

それまで負けてはいけない。

初めて戻ってきてからずっとこれをする為に考えて…馬鹿みたいに頑張った。

超加速を見せてやる。

私の決意を。私の本気を。私の反逆を。

血と憎悪で塗られた記憶を終わらせる為に…今、此奴に勝つ。

「殺戮式・堕天使。」

周りの景色がゆっくりに見える。

世界が赤一色に変わった。

「ハ……ハ…ハ…!す…らし…!…さか…みが……す…をつ………と…思わ…かっ…よ!!」

音が大分聞こえなくなっている。

前回とは違って不完全であまりにも反動が大きいのか。

以前は全てのリスクを魂の力が肩代わりしていた。

しかし今回は全ての反動を緋色の肉体が受ける羽目になる。

「なら……僕も………やろう!皇帝式・不動の権力!」

どうやらブーストを使われたようだ。

ブーストとブーストのぶつかり合いが起きているような感覚がある。

気持ち悪い。吐き気がする。

「死線誘導・乱舞(大)…」

至るところに死線が張られ、まるで牢屋のようだ。

「王の裁き(大)!」

黄金の剣が槍に変形しオーラを纏いながら突進してくる。

さっきよりも威力が桁違いだ。

というか、なんで武器が変形するの?意味わからん。

「英雄となりし王(大)。」

空気が揺れる。熱気も冷気も痺れも感じる。

「きっっっっしょ。」

英雄の名前を語られると物凄く不愉快な感情を止められない。

何が英雄か。

「英雄の名を語るんなら…………」

死線誘導・殺戮で打ち消す。

「なっ…!?」

「…正義のヒーローぶるなよ。本当の英雄は…!」

「希望となりし王(大)!」

死線誘導・乱舞が能力を牽制し緋色は簡単に避ける。

何が希望だ!何が英雄だ!何が王だ!

「己を強者と…能力が恵まれたと…!自惚れない!」

「っ…!この僕に傷を…」

何がこの僕だ。

今まで我慢して来たんだ。

今だけは本気を出して、例えそれが不格好でも勝利を掴む為に泥水を啜ってもいいはずだ。

今だけは他人の為じゃなくて自分の為に戦ってもいいはずだ。

私にとっての英雄ヒーローはただ一人。

少なくとも目の前にいる都合の良い馬鹿片岡じゃない。

「一度負けておけ、片岡!!!」

首元に刃を向けるが、初めて片岡は黄金の大剣を手で持ち防御する。

こいつは誰よりも負けたくないはずだ。負けず嫌いだからじゃない。

ただのプライド。頂点以外が許せないだけだ。

自分が勝組にいる事で自身の威厳を纏っている…と思い上がっている愚者。

「僕は負けてはならない!正義が負けていいはずが無い!悪魔となりし王(大)!」

黄金に輝いていたオーラが黒く染まっていく。

呼吸をするだけで痛い。至る所から蝕んでいくようだ。

「お前は小説の主人公か?」

反逆の緋色と繋がる。黒い短剣が血紅に染まっていく。

「残念だな。お前は理想の主人公にはなれない。」

この世界は醜いのだから。

こんなにも血の匂いが、金の匂いが、力の匂いが強く感じるこの世界で。

美しい思想綺麗事を持った人が主人公にはなれない。

この世界の主人公は………血紅の刃を持った狼、夢見るお人好し、厨二病の自信家…の方が相応しい気がする。

今こそ絶望の記憶から反逆をする。

死線も黒から赤くなっていく。

「死線誘導・折損(大)!」

一瞬で彼の能力を打ち壊す。

「…なっ…!?」

「縮地(中)!」

速さを利用して首を跳ねる。

バリン!!!!

急に聴力が戻り物凄く煩く音が鳴る。

(う~ん…………思っ切り高く跳んでたんだった…考えてなかった………)

普通に受け身なんて取れるほど今の緋色に気力も体力もない。

どうしよう。

ワンチャン骨折するんだけど。えー…

「よっと。」

若干暖かい風が衝撃を吸収してくれた。雑!嗚呼、雑。

「うわっ…」

しかし片岡は更に雑い。

「あ~…ありがとう。橋本。」

今にも立つのがフラフラだ。疲労で思考が回ってない。

「…というか……お前、昇華出来るのか。…しかも…武器生成で作ったやつじゃない武器を…」

「出来てたっけ?…狙ってするのは当分無理。」

「狙わず出来ても十分凄いんだぜ…」

辺りを見渡すと異様な空気が漂っている。

ある意味、片岡が勝つ事は暗黙のルールだったのかもしれない。

力で産まれたこの小学園の秩序が…鎖の様に縛られた壊れたのかもしれない。

力で縛り付けたものは簡単に崩壊する。

理由は簡単で…更なる大きな力の前では無力だからだ。

緋色を縛りつけていた力はもう無い。

緋色は橋本に話しかける。

「………ここからが本番だね…!」

「…ああ。そうだな。………ここからがスタートラインか。」

(待ってて…)

この祝福を…決して無駄にはしない。
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