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次の日。
「エレスト、エウル!出発にゃー!」
マオは昨日知り合った二人の名を呼んだ。
「…朝早くね?」
今、日出直後である。
「ね…眠い……」
エウルはこんな早朝に起きる事は慣れてなさそうだ。
エレストは何時間でも寝れる代わりに何時間でも起きてられる。
要はめちゃくちゃ自由が効くということだ。
「…早い方がいいにゃ!いくにゃーーー!」
「…ふぁぁい…」
「本当に大丈夫か?これ…」
とは言っても、直ぐに出発させられたのでどうしようもない。
「…仕方ねえよ、行くぞ。エウル。」
「はぁい。」
「サー出発ニャー!!入ったらきっと目が覚めるに決まってるにゃ!」
「……本当かなぁ…」
町を出て十分程で遺跡に辿り着いた。
「こんな直ぐにあったんだな。」
「そうにゃ、簡単だにゃ。」
エレストとエウルは目を合わせる。
(…魔導は魔力を必要としないから、未だに微沈黙を発動できてるんだよな。そう考えると、魔導も特に魔法より劣ってるとは思わないけど…まあ、俺は魔導も魔法も使えないけどな。)
「さ、行くにゃー。」
マオはわくわくが止まらない様子だ。
中に入ると、太陽を遮ってる割には明るかった。
恐らく、魔法などの力が働いてるのだろう。
(俺はそういう類は詳しくないけど…)
すると、謎の物音が聞こえた。
「魔物だ!」
「マオの言ってた通り、目が覚めたね!」
「殺戮にゃー!」
「怖えよ!」
エレスト達は武器を構えた。
どうやら、魔物も遺跡の中の明るさと同じように、何かしらの力が働いているのだろう。
「んー?倒したつもりが、また動き始めたぞ?」
「もう一回倒さないといけないみたいにゃ。二度ぶっ殺せばいい話ニャー!」
「#狂戦士_バーサーカー__#にも程があるだろ!?」
いつもの量の倍の時間がかかってしまったが、何とか倒し切った。
「ふう。こんなもんだな。」
「大分頑張ったけど、マオが一番倒してたわね。」
「エッヘンにゃ。」
三人はさらに進む。
(気のせいか…?俺たちが通るたびに魔法で照らされた光が揺らいでる気がするのは……)
「見たことない建物がいっぱいあって、楽しいにゃ!」
「そうね。こうも時代が違うと驚きだわ。教科書だけじゃ身に入らないものね。」
「エウル。学校行ってるのか?」
「行ってたわよ。もう卒業した。」
「飛び級したってことか?じゃあ、サニブラスト大学園に行ってたのか!?」
サニブラスト大学園とは、ファーストランドにあるバカでかい学校のことである。
相当賢くないと王族でも入れず、逆に賢ければ平民でも入れる。
それで、飛び級するということは断トツ賢いということでもある。
「賢かったんだな。まあ、じゃないと魔導なんて使えないと思うが…」
「そうよ。私は賢いのよ!」
あからさまなドヤ顔を見せる。
「さあ、まだまだ行くニャー!」
マオはまだ元気なようだ。
「あにゃ?」
「行き止まりだな。」
「そ、そんなの嫌だにゃ!」
遺跡内に声が響き渡る。
「んにゃ?」
「どうしたんだ?マオ。」
「変な反響がするにゃ。」
「変な?」
「にゃ。もしかしたら、まだ道があるにゃ。」
「本当か?」
エレストは壁をトントンと叩いた。
一回目はコン。
二回目はコン。
三回目はコツ。
「…ここか。」
雷撃の紋章を使う。
「パワープレイだが…」
雷撃の一撃が壁を破壊させた。
先には道が続いている。
「…あるな。」
「やっぱり、あるにゃ!」
三人は更に道を歩んだ。
「本当に遺跡探検してる感じがするね!」
「遺跡探検だからな。」
魔物を倒しながら進む。
「この見た目の魔物にも、慣れてきたな。」
「…そうね。私も慣れてきたわ。」
「飽きたニャ!」
「飽きるな狂戦士。」
「誰が狂戦士ニャー!?」
「そりゃあマオ以外に誰がいるんだっての…」
「むー…」
「フフフ。さあ、行きましょ。罠は無いようだし。」
エレストは罠という言葉に反応した。
「確かに、こういうのは罠だらけっていうイメージがあるけど…見当たらないな。」
「もしかしたら、お宝を隠す為にある訳じゃ無いのかもね。」
「遺跡にお宝が無かったら一体何があるにゃ!?」
宝などは二の次なのかもしれない。
そもそも宝が存在するのかも怪しくなる。
エレストは、それを伝えようと思ったが、宝の様に目を光らせているマオの瞳を濁らせまいと伝えるのを止めた。
(ま、ロマンは大事だよな。俺は興味無いけど。無いと決まってる訳じゃないし、過程を楽しむのも悪くないだろ。…それに、ここは追手が来る様な場所じゃないし。)
「何も無い訳じゃないだろうし、さっさと進むぞ。ここにいる魔物はどこから湧いてるのか分からないしな。」
「分かったにゃ!」
エレストはエウルに顔を向けて言った。
「マオが脳筋じゃなくて魔法とかも使えたら、もっとヤバかったな。」
すると、マオが反応した。
「にゃ!?魔法は使えないけど、脳筋じゃないニャ!」
「え?」
エウルは不思議な顔をする。
「エウル?どうしたのニャ?」
「え?い、いや何でもないよ。ただ…脳筋である事を自覚が無かったんだぁ…アハハ…」
「ニャー!?酷いニャー!」
エレストは少しだけ笑みを浮かべ、一番先頭を歩いた。
(マオ。…お前の目的は一体なんだ?…何故ここに入りたがる?こんなにも魔物を倒せるのに、何故怖がる必要があった?)
考えても仕方ない。
無駄に疑うのはエレストの悪い癖だ。
今更帰る訳にもいかない。
階段を登っていく。
「…ちょっと長いな。」
「……おかしくない?」
「え?あ。…そもそも、遺跡の外側は精々二階くらいしかなかったぞ?」
「なのに、今はずっと上がってるよ?」
「…なる程、流石建物自体が不思議な力が込められた何かだな。」
「分かるの?」
「…この建物がやけに揺らぐんだよ。景色がさ。」
「そうなの!?」
「幻かと思ったけど、それを証明できる方法は無いだろうし、まあ分からないけどな。」
「えぇ…」
エレストがマオを見ると、彼女は冷や汗を流している。
会話をしていると、階段の終着点に到達した。
「…広いな。」
エレストは広い部屋に入った。
「…先の道は無いみたい…ここが終着点ってところね…」
マオは体を震えさせた。
「…やっと…」
「マオ…?」
エウルが言った瞬間、突如部屋が揺れた。
「うわっ…!?」
「なっ…!?何が起こってるの!?」
「ニャー…?」
エレストは石像を見つけた。
そして、何故か目が合った。
「ハハ…おいおい…マジかよ。」
エレストは乾いた笑いを浮かべた。
石像が動いている。
「…ええ!?どうなってるの!?」
「何でもありだにゃ!」
「ただの石像じゃないみたいだぞ…!」
灰色が少しづつ変わっていく。
「吾、遺跡の守護者也。」
「しゃ、喋った…!?」
「…此麒麟…この地に仇なす者達を断罪す。」
「逃げれねえじゃねえかよ!?最悪だ!」
「どうするの!?エレスト!」
「そりゃあ、もうやるしかないだろ!?断罪されたくねえし!」
「さあ、ぶっ飛ばすにゃー!!」
「何でマオはノリノリなんだよ!?」
鮮やかな蒼色の麒麟が殺気を向ける。
恐らく魔物のレベルでは無い。
もしかしなくとも魔獣だろう。
「攻撃が来るぞ!」
麒麟を纏う青い煙が更に大きくなり、その煙が氷に変わる。
「どういう原理でそうなるんだよ!」
エレストは左手を氷に向ける。
(『雷撃』…!)
氷と雷が衝突する。
「…相殺された?…俺のあの程度の威力で?」
自分の紋章のことを思い出す。
自分が宿しているのは神の紋章である事を。
(ただの紋章とは勝手が違うみたいだな…!)
「其の雷は…純粋な雷也。」
「何言ってるか分からねえが、多分褒めてるんだろ?じゃあもっと、堪能してくれ…!」
左手を構え更に雷撃を放つ。
「エレスト、エウル!出発にゃー!」
マオは昨日知り合った二人の名を呼んだ。
「…朝早くね?」
今、日出直後である。
「ね…眠い……」
エウルはこんな早朝に起きる事は慣れてなさそうだ。
エレストは何時間でも寝れる代わりに何時間でも起きてられる。
要はめちゃくちゃ自由が効くということだ。
「…早い方がいいにゃ!いくにゃーーー!」
「…ふぁぁい…」
「本当に大丈夫か?これ…」
とは言っても、直ぐに出発させられたのでどうしようもない。
「…仕方ねえよ、行くぞ。エウル。」
「はぁい。」
「サー出発ニャー!!入ったらきっと目が覚めるに決まってるにゃ!」
「……本当かなぁ…」
町を出て十分程で遺跡に辿り着いた。
「こんな直ぐにあったんだな。」
「そうにゃ、簡単だにゃ。」
エレストとエウルは目を合わせる。
(…魔導は魔力を必要としないから、未だに微沈黙を発動できてるんだよな。そう考えると、魔導も特に魔法より劣ってるとは思わないけど…まあ、俺は魔導も魔法も使えないけどな。)
「さ、行くにゃー。」
マオはわくわくが止まらない様子だ。
中に入ると、太陽を遮ってる割には明るかった。
恐らく、魔法などの力が働いてるのだろう。
(俺はそういう類は詳しくないけど…)
すると、謎の物音が聞こえた。
「魔物だ!」
「マオの言ってた通り、目が覚めたね!」
「殺戮にゃー!」
「怖えよ!」
エレスト達は武器を構えた。
どうやら、魔物も遺跡の中の明るさと同じように、何かしらの力が働いているのだろう。
「んー?倒したつもりが、また動き始めたぞ?」
「もう一回倒さないといけないみたいにゃ。二度ぶっ殺せばいい話ニャー!」
「#狂戦士_バーサーカー__#にも程があるだろ!?」
いつもの量の倍の時間がかかってしまったが、何とか倒し切った。
「ふう。こんなもんだな。」
「大分頑張ったけど、マオが一番倒してたわね。」
「エッヘンにゃ。」
三人はさらに進む。
(気のせいか…?俺たちが通るたびに魔法で照らされた光が揺らいでる気がするのは……)
「見たことない建物がいっぱいあって、楽しいにゃ!」
「そうね。こうも時代が違うと驚きだわ。教科書だけじゃ身に入らないものね。」
「エウル。学校行ってるのか?」
「行ってたわよ。もう卒業した。」
「飛び級したってことか?じゃあ、サニブラスト大学園に行ってたのか!?」
サニブラスト大学園とは、ファーストランドにあるバカでかい学校のことである。
相当賢くないと王族でも入れず、逆に賢ければ平民でも入れる。
それで、飛び級するということは断トツ賢いということでもある。
「賢かったんだな。まあ、じゃないと魔導なんて使えないと思うが…」
「そうよ。私は賢いのよ!」
あからさまなドヤ顔を見せる。
「さあ、まだまだ行くニャー!」
マオはまだ元気なようだ。
「あにゃ?」
「行き止まりだな。」
「そ、そんなの嫌だにゃ!」
遺跡内に声が響き渡る。
「んにゃ?」
「どうしたんだ?マオ。」
「変な反響がするにゃ。」
「変な?」
「にゃ。もしかしたら、まだ道があるにゃ。」
「本当か?」
エレストは壁をトントンと叩いた。
一回目はコン。
二回目はコン。
三回目はコツ。
「…ここか。」
雷撃の紋章を使う。
「パワープレイだが…」
雷撃の一撃が壁を破壊させた。
先には道が続いている。
「…あるな。」
「やっぱり、あるにゃ!」
三人は更に道を歩んだ。
「本当に遺跡探検してる感じがするね!」
「遺跡探検だからな。」
魔物を倒しながら進む。
「この見た目の魔物にも、慣れてきたな。」
「…そうね。私も慣れてきたわ。」
「飽きたニャ!」
「飽きるな狂戦士。」
「誰が狂戦士ニャー!?」
「そりゃあマオ以外に誰がいるんだっての…」
「むー…」
「フフフ。さあ、行きましょ。罠は無いようだし。」
エレストは罠という言葉に反応した。
「確かに、こういうのは罠だらけっていうイメージがあるけど…見当たらないな。」
「もしかしたら、お宝を隠す為にある訳じゃ無いのかもね。」
「遺跡にお宝が無かったら一体何があるにゃ!?」
宝などは二の次なのかもしれない。
そもそも宝が存在するのかも怪しくなる。
エレストは、それを伝えようと思ったが、宝の様に目を光らせているマオの瞳を濁らせまいと伝えるのを止めた。
(ま、ロマンは大事だよな。俺は興味無いけど。無いと決まってる訳じゃないし、過程を楽しむのも悪くないだろ。…それに、ここは追手が来る様な場所じゃないし。)
「何も無い訳じゃないだろうし、さっさと進むぞ。ここにいる魔物はどこから湧いてるのか分からないしな。」
「分かったにゃ!」
エレストはエウルに顔を向けて言った。
「マオが脳筋じゃなくて魔法とかも使えたら、もっとヤバかったな。」
すると、マオが反応した。
「にゃ!?魔法は使えないけど、脳筋じゃないニャ!」
「え?」
エウルは不思議な顔をする。
「エウル?どうしたのニャ?」
「え?い、いや何でもないよ。ただ…脳筋である事を自覚が無かったんだぁ…アハハ…」
「ニャー!?酷いニャー!」
エレストは少しだけ笑みを浮かべ、一番先頭を歩いた。
(マオ。…お前の目的は一体なんだ?…何故ここに入りたがる?こんなにも魔物を倒せるのに、何故怖がる必要があった?)
考えても仕方ない。
無駄に疑うのはエレストの悪い癖だ。
今更帰る訳にもいかない。
階段を登っていく。
「…ちょっと長いな。」
「……おかしくない?」
「え?あ。…そもそも、遺跡の外側は精々二階くらいしかなかったぞ?」
「なのに、今はずっと上がってるよ?」
「…なる程、流石建物自体が不思議な力が込められた何かだな。」
「分かるの?」
「…この建物がやけに揺らぐんだよ。景色がさ。」
「そうなの!?」
「幻かと思ったけど、それを証明できる方法は無いだろうし、まあ分からないけどな。」
「えぇ…」
エレストがマオを見ると、彼女は冷や汗を流している。
会話をしていると、階段の終着点に到達した。
「…広いな。」
エレストは広い部屋に入った。
「…先の道は無いみたい…ここが終着点ってところね…」
マオは体を震えさせた。
「…やっと…」
「マオ…?」
エウルが言った瞬間、突如部屋が揺れた。
「うわっ…!?」
「なっ…!?何が起こってるの!?」
「ニャー…?」
エレストは石像を見つけた。
そして、何故か目が合った。
「ハハ…おいおい…マジかよ。」
エレストは乾いた笑いを浮かべた。
石像が動いている。
「…ええ!?どうなってるの!?」
「何でもありだにゃ!」
「ただの石像じゃないみたいだぞ…!」
灰色が少しづつ変わっていく。
「吾、遺跡の守護者也。」
「しゃ、喋った…!?」
「…此麒麟…この地に仇なす者達を断罪す。」
「逃げれねえじゃねえかよ!?最悪だ!」
「どうするの!?エレスト!」
「そりゃあ、もうやるしかないだろ!?断罪されたくねえし!」
「さあ、ぶっ飛ばすにゃー!!」
「何でマオはノリノリなんだよ!?」
鮮やかな蒼色の麒麟が殺気を向ける。
恐らく魔物のレベルでは無い。
もしかしなくとも魔獣だろう。
「攻撃が来るぞ!」
麒麟を纏う青い煙が更に大きくなり、その煙が氷に変わる。
「どういう原理でそうなるんだよ!」
エレストは左手を氷に向ける。
(『雷撃』…!)
氷と雷が衝突する。
「…相殺された?…俺のあの程度の威力で?」
自分の紋章のことを思い出す。
自分が宿しているのは神の紋章である事を。
(ただの紋章とは勝手が違うみたいだな…!)
「其の雷は…純粋な雷也。」
「何言ってるか分からねえが、多分褒めてるんだろ?じゃあもっと、堪能してくれ…!」
左手を構え更に雷撃を放つ。
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