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「結構進んだな。」
あれからずっと進んでいたが、特に吸血鬼と会う事もなく、中心部に進んでいた。
「そういえば、どうして奴に負けても死ななかったんだ?」
エレストは素朴な疑問も呈す。
「ああ、ただただ粘って、殺されそうになった瞬間に、朝日が昇ったんだよ。運が良かった。」
「…朝日…か。」
「なんかあるのか?」
「もし、朝まで戦えるなら…そして、朝に外に出せたなら…あいつを殺せないか?」
「無駄だ。灰になったところで、復活しちまう。」
「あ…そうだったな。」
「でも…悪くねえかもしれねえな。昼は弱体化する。その状態で左手を使えない状態にして、戦えばワンチャンスあるんじゃないか?例えば左手を切り落とすとか。」
(左手を切り落とす…か。普通の紋章なら、その戦い方が正攻法だが…)
エレストはなんとなく思いながら、ヴァンを殺すための方法を考える。
(神の紋章持ちを仇って…一体どういう生い立ちだよ…それに、色んな身分ってことは…トーラスっていう名前も偽物か?…別に俺の名前もエウルがつけた名前だし、あんま気にすることじゃないか。)
「お前ら、何であいつの方へ行く?」
横を見ると吸血鬼が切り株に座っていた。
その場にいる誰も気付かなかった。
「ああ、別に俺は吸血鬼の血しか吸えねえんだ。お前らを食う気はねえよ。勿論戦う意思もない。」
その吸血鬼は両手を挙げた。
「確か、人間の降参って両手を挙げるんだろ?俺はこれしか戦意が無いことを証明できないが。」
「…戦意が無いとかは、まあ…どうでもいい。それでなぜ話しかけてきたんだ?」
「気になってな。神の紋章を持つ吸血鬼に何故殺そうとするのか。」
「復讐だよ。」
「それだけで、殺せるのか?人間如きに。」
吸血鬼はエルフよりも人間を見下している。
それは、吸血鬼にとっての人間は食べ物であるからだろう。
「殺すんだよ。」
「アッハハハハハ!!!!!」
真夜中に笑い声だけが響く。
「凄いよ!」
すると、物音がする。
この吸血鬼のせいで、他の吸血鬼が集まってきたようだ。
「あ、そうか。君たちは本来狩られる側だもんね。」
「あ!?」
「良いよ、俺がこいつらを招いたんだ。俺が殺すよ。」
全ての吸血鬼が一斉にエレスト達に襲い掛かる。
「こっちを見ろよ。」
と、言った瞬間、全ての吸血鬼は血飛沫をあげた。
「え?」
エウルは一瞬のあまり、開いた口がふさがっていない。
この吸血鬼は、吸血鬼の首に歯を刺してごくごくと飲んでいる。
「動いたりしないのか?」
「ああ。俺の血をこいつらの身体に入れてるからな。俺が死んだり、太陽に焼かれたりしない間は、ほとんど死んでるようなものさ。」
「お前は、一体…」
「さあ。なんなんだろうな。俺は。まあ、そこが重要ではないだろう。俺は、あの神の紋章を持っている吸血鬼を無謀にも殺そうとするお前に興味が湧いたんだ。」
吸血鬼はトーラスを指差した。
「人間ていうのはよく分からないな。きっと理解できない。だからこそ、面白いと思ったんだ。」
「…知るかよ。」
「まあまあ、聞いてくれよ。俺はここら辺に吸血鬼が転がってるから、探す暇が省けて暇なんだ。お前の生い立ちを聞かせてくれよ。お礼に良い事をしてやるからさ。」
「良い事?」
「内容は、お前が喋ってくれたらの話さ。」
「どうするんだ?トーラス。」
エレストはトーラスに尋ねる。
「まあ、軽くなら、言ってやっても良いけど。」
「ああ、簡潔で良いからさ。」
その言葉を聞き、トーラスは話し始めた。
「おい、この愚図!!!!」
「うぐっ…」
俺は親父に突き飛ばされた。
まあ、小さいころさ。まだ国を出て無かった昔のこと。
「いつになったら、役に立つ!!!!お前はいつになったら!」
「止めてください!#%&¥!…#&$%が死んでしまいます!!」
親父を止める人もいたけど、まあ聞くわけがない。
俺はよく親父のせいで気絶してた。
今なら魔法が使えるからまだこんなことは起きないと思うけどな。
俺には、妹がいた。
俺とは違って、可愛がられてた。
まあ優秀だった。
神聖魔法を国から出てからようやく使えるようになった俺とは違って、僅か3歳で使えるようになったんだ。
楽勝に神童と呼ばれるレベルさ。
別に俺は、妹のことが嫌いという訳じゃなかった。
なんか、俺のことを慕ってくれてた。
理由は知らん。
父に可愛がられてる割に、父を嫌ってた。
まあ、妹は優秀だから、この国を支える存在とかも言われてたな。
俺のいた国では、安全とは決して言えない国だった。
ずっと、戦争が起きてたんだ。
仕方ない、そういう国と隣り合わせなのだから。
そんなこんなで、ずっと誰かしら戦ってるんだが…
ある時、普通に民が済んでいる場所にまで、襲撃が来たんだ。
この時、俺は15歳。妹は10歳。
出来ることなんてあんまりなかった。
妹は、治癒をするために色んな所を走り回ってた。
だから、俺はコッソリ練習してきた剣技と魔法で、妹を守ろうって思って、着いていった。
ただ、相手は吸血鬼だった。
いつも魔物なのに、吸血鬼だった。
今回は何故か、吸血鬼だった。
あとから知った話、吸血鬼と魔物で共同して、襲撃に来たらしい。
俺たちは勝てるはず無かった。
神聖魔法の打てないカスと、神聖魔法の中でも治癒の方が得意な妹。
俺も直ぐにやられて、もう直ぐで吸血されそうになった途端、吸血鬼の攻撃が一斉に止まった。
助かったのかと思った。
でも、俺も何もできないと思った瞬間、絶対に違うって気がした。
だから俺は直ぐに妹のところに走った。
守らないと、妹が危ないって思った。
「いいね、いいね!お前らという存在の、兄弟愛っていつみても美しいものだねえ!」
左手には紋章。
「絶望の始まりだ。」
数分後には妹は目に光が宿らなくなっていった。
更に数分後には、喋れなくなっていった。
もっと数分後には、口からよだれが出てても気にも留めなくなっていった。
俺は魔法を撃った。
どんな魔法も効かなかった。
誰も助けに来てくれなかったから、俺が奴を殺すしかないと思った。
「あと数分後には、妹、死んじゃうよ。」
その言葉を聞いて、もう頭がおかしくなりそうだった。
銀のナイフを生成する魔法を、即興で作った。
あとから、その魔法の構築を見てみたら理解はできるけど、異常だって思うほどぐちゃぐちゃだった。
あいつは自分が怪我をしないと思ってたみたいで、当てるのは簡単だった。
その瞬間、しっかりと傷をつけた。
たまたま、左手付近に当てたみたいで、紋章の光も止まった。
「なあんだ。神の紋章を手に入れたからって、無敵になる訳じゃないんだ。つまんないの。あ、じゃあまたね。」
怪我をした瞬間、秒で帰っていった。
俺の周りは神聖魔法が普通の魔法の様に使えるから、あまり被害はそこまでだった。
ただ、俺の妹だけが死にかけた。
廃人になっちまったんだ。
勿論、色んな人に責められた。
国中を挙げて俺を責めたんじゃないかって思うほど、責められた。
親にもぶん殴られた。
「この役立たず!一度でも儂に役に立つと思わせることをしてみろ!」
「……」
「お前は何の為に生まれてきたんだ!!!!!!」
「…………」
鼻血を流しても拭う気力すら湧かなかった。
「せめてお前が死んでればよかったものを…」
「…!」
俺は初めて、魔法を父親に向けた。
部屋覆い、その場にいた人が腰を抜かすほどの氷山に包まれた親父を後にして、その紋章持ちの吸血鬼を殺すために自分の国を出た。
「ま、こんな感じだ。満足したか、吸血鬼?」
「ああ、素晴らしいよ!無力ってクソだと思わせる素晴らしい思い出だ!」
この吸血鬼も十分最低だと思うのはエレストだけではないだろう。
あれからずっと進んでいたが、特に吸血鬼と会う事もなく、中心部に進んでいた。
「そういえば、どうして奴に負けても死ななかったんだ?」
エレストは素朴な疑問も呈す。
「ああ、ただただ粘って、殺されそうになった瞬間に、朝日が昇ったんだよ。運が良かった。」
「…朝日…か。」
「なんかあるのか?」
「もし、朝まで戦えるなら…そして、朝に外に出せたなら…あいつを殺せないか?」
「無駄だ。灰になったところで、復活しちまう。」
「あ…そうだったな。」
「でも…悪くねえかもしれねえな。昼は弱体化する。その状態で左手を使えない状態にして、戦えばワンチャンスあるんじゃないか?例えば左手を切り落とすとか。」
(左手を切り落とす…か。普通の紋章なら、その戦い方が正攻法だが…)
エレストはなんとなく思いながら、ヴァンを殺すための方法を考える。
(神の紋章持ちを仇って…一体どういう生い立ちだよ…それに、色んな身分ってことは…トーラスっていう名前も偽物か?…別に俺の名前もエウルがつけた名前だし、あんま気にすることじゃないか。)
「お前ら、何であいつの方へ行く?」
横を見ると吸血鬼が切り株に座っていた。
その場にいる誰も気付かなかった。
「ああ、別に俺は吸血鬼の血しか吸えねえんだ。お前らを食う気はねえよ。勿論戦う意思もない。」
その吸血鬼は両手を挙げた。
「確か、人間の降参って両手を挙げるんだろ?俺はこれしか戦意が無いことを証明できないが。」
「…戦意が無いとかは、まあ…どうでもいい。それでなぜ話しかけてきたんだ?」
「気になってな。神の紋章を持つ吸血鬼に何故殺そうとするのか。」
「復讐だよ。」
「それだけで、殺せるのか?人間如きに。」
吸血鬼はエルフよりも人間を見下している。
それは、吸血鬼にとっての人間は食べ物であるからだろう。
「殺すんだよ。」
「アッハハハハハ!!!!!」
真夜中に笑い声だけが響く。
「凄いよ!」
すると、物音がする。
この吸血鬼のせいで、他の吸血鬼が集まってきたようだ。
「あ、そうか。君たちは本来狩られる側だもんね。」
「あ!?」
「良いよ、俺がこいつらを招いたんだ。俺が殺すよ。」
全ての吸血鬼が一斉にエレスト達に襲い掛かる。
「こっちを見ろよ。」
と、言った瞬間、全ての吸血鬼は血飛沫をあげた。
「え?」
エウルは一瞬のあまり、開いた口がふさがっていない。
この吸血鬼は、吸血鬼の首に歯を刺してごくごくと飲んでいる。
「動いたりしないのか?」
「ああ。俺の血をこいつらの身体に入れてるからな。俺が死んだり、太陽に焼かれたりしない間は、ほとんど死んでるようなものさ。」
「お前は、一体…」
「さあ。なんなんだろうな。俺は。まあ、そこが重要ではないだろう。俺は、あの神の紋章を持っている吸血鬼を無謀にも殺そうとするお前に興味が湧いたんだ。」
吸血鬼はトーラスを指差した。
「人間ていうのはよく分からないな。きっと理解できない。だからこそ、面白いと思ったんだ。」
「…知るかよ。」
「まあまあ、聞いてくれよ。俺はここら辺に吸血鬼が転がってるから、探す暇が省けて暇なんだ。お前の生い立ちを聞かせてくれよ。お礼に良い事をしてやるからさ。」
「良い事?」
「内容は、お前が喋ってくれたらの話さ。」
「どうするんだ?トーラス。」
エレストはトーラスに尋ねる。
「まあ、軽くなら、言ってやっても良いけど。」
「ああ、簡潔で良いからさ。」
その言葉を聞き、トーラスは話し始めた。
「おい、この愚図!!!!」
「うぐっ…」
俺は親父に突き飛ばされた。
まあ、小さいころさ。まだ国を出て無かった昔のこと。
「いつになったら、役に立つ!!!!お前はいつになったら!」
「止めてください!#%&¥!…#&$%が死んでしまいます!!」
親父を止める人もいたけど、まあ聞くわけがない。
俺はよく親父のせいで気絶してた。
今なら魔法が使えるからまだこんなことは起きないと思うけどな。
俺には、妹がいた。
俺とは違って、可愛がられてた。
まあ優秀だった。
神聖魔法を国から出てからようやく使えるようになった俺とは違って、僅か3歳で使えるようになったんだ。
楽勝に神童と呼ばれるレベルさ。
別に俺は、妹のことが嫌いという訳じゃなかった。
なんか、俺のことを慕ってくれてた。
理由は知らん。
父に可愛がられてる割に、父を嫌ってた。
まあ、妹は優秀だから、この国を支える存在とかも言われてたな。
俺のいた国では、安全とは決して言えない国だった。
ずっと、戦争が起きてたんだ。
仕方ない、そういう国と隣り合わせなのだから。
そんなこんなで、ずっと誰かしら戦ってるんだが…
ある時、普通に民が済んでいる場所にまで、襲撃が来たんだ。
この時、俺は15歳。妹は10歳。
出来ることなんてあんまりなかった。
妹は、治癒をするために色んな所を走り回ってた。
だから、俺はコッソリ練習してきた剣技と魔法で、妹を守ろうって思って、着いていった。
ただ、相手は吸血鬼だった。
いつも魔物なのに、吸血鬼だった。
今回は何故か、吸血鬼だった。
あとから知った話、吸血鬼と魔物で共同して、襲撃に来たらしい。
俺たちは勝てるはず無かった。
神聖魔法の打てないカスと、神聖魔法の中でも治癒の方が得意な妹。
俺も直ぐにやられて、もう直ぐで吸血されそうになった途端、吸血鬼の攻撃が一斉に止まった。
助かったのかと思った。
でも、俺も何もできないと思った瞬間、絶対に違うって気がした。
だから俺は直ぐに妹のところに走った。
守らないと、妹が危ないって思った。
「いいね、いいね!お前らという存在の、兄弟愛っていつみても美しいものだねえ!」
左手には紋章。
「絶望の始まりだ。」
数分後には妹は目に光が宿らなくなっていった。
更に数分後には、喋れなくなっていった。
もっと数分後には、口からよだれが出てても気にも留めなくなっていった。
俺は魔法を撃った。
どんな魔法も効かなかった。
誰も助けに来てくれなかったから、俺が奴を殺すしかないと思った。
「あと数分後には、妹、死んじゃうよ。」
その言葉を聞いて、もう頭がおかしくなりそうだった。
銀のナイフを生成する魔法を、即興で作った。
あとから、その魔法の構築を見てみたら理解はできるけど、異常だって思うほどぐちゃぐちゃだった。
あいつは自分が怪我をしないと思ってたみたいで、当てるのは簡単だった。
その瞬間、しっかりと傷をつけた。
たまたま、左手付近に当てたみたいで、紋章の光も止まった。
「なあんだ。神の紋章を手に入れたからって、無敵になる訳じゃないんだ。つまんないの。あ、じゃあまたね。」
怪我をした瞬間、秒で帰っていった。
俺の周りは神聖魔法が普通の魔法の様に使えるから、あまり被害はそこまでだった。
ただ、俺の妹だけが死にかけた。
廃人になっちまったんだ。
勿論、色んな人に責められた。
国中を挙げて俺を責めたんじゃないかって思うほど、責められた。
親にもぶん殴られた。
「この役立たず!一度でも儂に役に立つと思わせることをしてみろ!」
「……」
「お前は何の為に生まれてきたんだ!!!!!!」
「…………」
鼻血を流しても拭う気力すら湧かなかった。
「せめてお前が死んでればよかったものを…」
「…!」
俺は初めて、魔法を父親に向けた。
部屋覆い、その場にいた人が腰を抜かすほどの氷山に包まれた親父を後にして、その紋章持ちの吸血鬼を殺すために自分の国を出た。
「ま、こんな感じだ。満足したか、吸血鬼?」
「ああ、素晴らしいよ!無力ってクソだと思わせる素晴らしい思い出だ!」
この吸血鬼も十分最低だと思うのはエレストだけではないだろう。
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