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「えー、エレストが攫われました、どうしましょう!」
「知らねえよ。」
エウルと、トーラスは途方に暮れていた。
「それにしても何で、エレストは逃げずに大人しく連れられたんだ?あの茨、魔法と魔導が駄目なんだろ?だったら、紋章持ってるあいつなら、簡単に逃げれたろ。」
「…エレストは私達を逃がしたのよ。私達が魔法と魔導しかできないポンコツだから。」
「誰がポンコツだ…よ…」
トーラスでも、流石に反論できなかったようだ。
「いやでも、どうするんだよ。猶更無理じゃね?」
エウルは考える。
「あー、ホント、貴族サマと一緒にいるとかマジで嫌なんだけど…なんの罰ゲームだよ…」
「うるさいわね、こっちだって一々文句言ってくる平民様とエレスト抜きで居たくないわよ。」
「ああ!?」
二人は再び喧嘩をし始めた。
「…なーんか、二人を残したら駄目だった気がする…」
エレストは茨に縛られながら独り言をつぶやいた。
(まあ、エウルとトーラスがいるし、何とかなるだろって思って、大人しくつれていかれたけど…)
エレストは今になって後悔してきたようだ。
「あら、ごきげんよう。」
マリーが部屋に入ってきた。
「汚い部屋ね。もう少しましな部屋は無かったのかしら…?」
「も、申し訳ありません…」
「フフッ…冗談よ。下がってい良いわ。」
「え?あ、はい…!」
マリーは侍女を下がらせた後、エレストに話しかけた。
「私は貴方と話したかったのよ。」
(…クロウって奴をぶった斬ったことに対することだろうな…)
「…それはなんだ?」
「貴方、私の僕にならない?」
「…は?」
エレストは思いもよらない言葉に驚いた。
「あら?」
「俺を…誰だか分かって言ってるのか?」
「ええ。夫の左腕を斬り落とした存在でしょ?」
エレストはさらに混乱した。
「この提案に承諾してくれるなら、平民の位をあげるわ。そうした方が生きやすいでしょ?」
「…」
「貴方…左腕…無いのよね?だけど、左手が生え、紋章を使っていたらしいじゃない?」
「どこでそんなこと…」
「元々、クロウを殺すつもりだったから、あの家に起こることは常時筒抜けよ。」
(あー、俺の貴族が嫌な理由の部分が出てきた…俺だって、別にトーラスみたいに貴族は好きじゃないんだよ。)
「左手が無いのに紋章を使えるという事は、神の紋章でないと説明できないわよね。」
「…さあ。」
エレストの警戒心がさらに高まる。
「だから、私は貴方を買ってるの、エレストさん?」
(…本気で言ってるのか?)
「…でも私だって強制はしませんわ。だけど、解放するのが遅くなりますけど。」
(じゃあ、強制じゃねえか!このクソアマ!)
「何を優先するべきか…よく考える事ですわ。」
二人は口喧嘩を終えて、息切れしていた。
「ぜー…ぜー…」
トーラスは深呼吸をしてから静かに言い放った。
「俺はお前が嫌いだ。」
「奇遇ね、私もよ。」
エウルは静かになってから溜息を吐いた。
「それでもエレストは助けないと。トーラス、手伝って頂戴。」
「はあ!?」
「…あまりしたくないけど、相手は貴族よ。」
「ああ、そうだな。」
「私だって、貴族との問題を起こしたくない。」
「貴族の建前の問題か?」
「エウル・ルナディオルド・レヴァニアとしての問題があるのは認めるわ。だけど、どちらかと言えば貴族は何をするのか分からないというのが問題なのよ。何でもするからね、シュバルッツ家は特に…」
エウルは更に溜息を吐いた。
「ただの平民なら、何の役にも立たない。貴族の厄介ごとには…貴族で対抗よ。」
「…俺に何を求める気だ…?」
トーラスはとても嫌な顔をする。
「私の執事になって。」
「嫌だ。」
「言うと思った。」
エウルはトーラスを引きずりながら、貴族専用の仕立て屋に向かった。
勿論、今の姿では平民に間違われ、あからさまな嫌な顔をされる。
「平民の店ではございませんが?」
「あら、貴族よ。」
「とてもそうには見えませんが?」
エウルは家紋を取り出した。
「これが偽物に見えるかしら。本物の貴族よ。」
手のひら返しの様に直ぐに態度を変えられる。
「も、申し訳ございませんでした!!」
「連絡もせず、平民のような服を着た私が悪いわ。気にしないで。」
「なんだ、この茶番…」
トーラスは悪態を付く。
「私も嫌よ…」
エウルも少し疲れた顔をした。
「ごめんなさいね、少し急ぎの用なの。マリー様に急遽お茶会をするから、それに見合うドレスを着させて。一番高いものでいいわ。請求書はルナディオルド家に送って。」
「一番高い服でいいって…」
トーラスは溜息を吐く。
「貴方も着るのよ。」
「え、嫌だ。」
「拒否権は無いわ。」
エウルはにっこりと笑った。
「これだから貴族は!!!」
「ええ、貴族でよかったわ。この人に服を。」
「か、かしこまりました。」
「執事になって頂戴ねー」
「覚えとけよおおおおお!」
二人は服を着替えた(うち一名は合意なし)。
エウルはトーラスの為に、エウルの持っていた家紋よりとても小さい家紋を取り出した。
「ごめんなさい、一日だけでいいから。」
その家紋に口付けをしてからトーラスの服に付けた。
「私は魔力が無いからね…本来なら魔力を流すなら普通にすればいいんだけど。魔力を残すためには口付けするのが一番効率がいいから。」
「知ってるよ。魔法を使ってるんだから。」
トーラスの美貌だけ見ると、ルナディオルド家にふさわしいように見える。
「でも、魔力を付与する意味があるのか?」
「シュバルッツ家は一応大貴族。私と言えども変なことはできない。だから、嘘は効かない。だから徹底的に本当にするの。貴方の今からの身分は私の執事よ。名前は何にするの?」
「クッソ…拒否権が無さすぎるぜ…だから嫌なんだ、分かったよ!『ギル』でいいよ!」
トーラスは流石に折れたみたいだ。
「ギル。行くわよ。」
「で、どうするんだよ。」
「だからお茶会よ。」
「はあ…!?」
二人は魔法国の一番大きい屋敷に向かった。
エレストはきれいな部屋に連れられた。
男たちに蹴飛ばされ、エレストは地面を這う。
「…チッ。」
「決めたかしら?」
マリーが同じく部屋に入ってくる。
「…」
エレストは無言を決め込む。
(誰かの下に付くのはこりごりだ。)
茨に縛られて、そろそろ体が悲鳴を上げ始めた。
「その茨もお辛いでしょう?」
どうやら、我慢比べのつもりらしい。
「平民になったからって、平民と同じ扱いをされるとは到底思えねえな。」
「勿論、相応の対価は支払いますわよ。」
その相応の対価はエレストの思ってるよりも相当低いだろう。
「夫を殺した奴を雇うなんて正気か?」
「貴方は殺してないですわ。私がこの手で殺したもの。」
(直接的に死んだのはやっぱ俺じゃなかったのか。)
「貴方には感謝してますのよ。お陰で、あいつをノーリスクで殺せて、かつ私がシュバルッツ家の権限を握れるのだから。」
すると侍女が急ぎ足にやってきた。
「マリー様、客人が…」
「なんですって?どなた?」
「ルナディオルド家の末っ子様です。」
「…失踪した筈じゃ!?」
「家紋は本物でした。その従者もそうです。間違いありません。」
「…要件は?」
「『お茶を飲みに来た』と…」
マリーは相当焦っている。
エウルのことだとエレストは直ぐに分かったが、この焦りようは流石大貴族であるといえるだろう。
「ごきげんよう。」
エウルとその従者であるトーラスは、見違えるほどの綺麗な服でやって来た。
「ご、ご無事でいらしたの?」
「ええ。」
エウルはエレストをまるで存在しないものというように一度もこちらを見ない。
「どのようなご用件でいらしたのですか?エウル様?」
「フフッ。ただのお茶よ。」
「お、お茶を用意して。」
「はっ!」
紅茶を手に取り一口啜る。
「うん、良いお茶ね。」
エウルは微笑んでいた。
「知らねえよ。」
エウルと、トーラスは途方に暮れていた。
「それにしても何で、エレストは逃げずに大人しく連れられたんだ?あの茨、魔法と魔導が駄目なんだろ?だったら、紋章持ってるあいつなら、簡単に逃げれたろ。」
「…エレストは私達を逃がしたのよ。私達が魔法と魔導しかできないポンコツだから。」
「誰がポンコツだ…よ…」
トーラスでも、流石に反論できなかったようだ。
「いやでも、どうするんだよ。猶更無理じゃね?」
エウルは考える。
「あー、ホント、貴族サマと一緒にいるとかマジで嫌なんだけど…なんの罰ゲームだよ…」
「うるさいわね、こっちだって一々文句言ってくる平民様とエレスト抜きで居たくないわよ。」
「ああ!?」
二人は再び喧嘩をし始めた。
「…なーんか、二人を残したら駄目だった気がする…」
エレストは茨に縛られながら独り言をつぶやいた。
(まあ、エウルとトーラスがいるし、何とかなるだろって思って、大人しくつれていかれたけど…)
エレストは今になって後悔してきたようだ。
「あら、ごきげんよう。」
マリーが部屋に入ってきた。
「汚い部屋ね。もう少しましな部屋は無かったのかしら…?」
「も、申し訳ありません…」
「フフッ…冗談よ。下がってい良いわ。」
「え?あ、はい…!」
マリーは侍女を下がらせた後、エレストに話しかけた。
「私は貴方と話したかったのよ。」
(…クロウって奴をぶった斬ったことに対することだろうな…)
「…それはなんだ?」
「貴方、私の僕にならない?」
「…は?」
エレストは思いもよらない言葉に驚いた。
「あら?」
「俺を…誰だか分かって言ってるのか?」
「ええ。夫の左腕を斬り落とした存在でしょ?」
エレストはさらに混乱した。
「この提案に承諾してくれるなら、平民の位をあげるわ。そうした方が生きやすいでしょ?」
「…」
「貴方…左腕…無いのよね?だけど、左手が生え、紋章を使っていたらしいじゃない?」
「どこでそんなこと…」
「元々、クロウを殺すつもりだったから、あの家に起こることは常時筒抜けよ。」
(あー、俺の貴族が嫌な理由の部分が出てきた…俺だって、別にトーラスみたいに貴族は好きじゃないんだよ。)
「左手が無いのに紋章を使えるという事は、神の紋章でないと説明できないわよね。」
「…さあ。」
エレストの警戒心がさらに高まる。
「だから、私は貴方を買ってるの、エレストさん?」
(…本気で言ってるのか?)
「…でも私だって強制はしませんわ。だけど、解放するのが遅くなりますけど。」
(じゃあ、強制じゃねえか!このクソアマ!)
「何を優先するべきか…よく考える事ですわ。」
二人は口喧嘩を終えて、息切れしていた。
「ぜー…ぜー…」
トーラスは深呼吸をしてから静かに言い放った。
「俺はお前が嫌いだ。」
「奇遇ね、私もよ。」
エウルは静かになってから溜息を吐いた。
「それでもエレストは助けないと。トーラス、手伝って頂戴。」
「はあ!?」
「…あまりしたくないけど、相手は貴族よ。」
「ああ、そうだな。」
「私だって、貴族との問題を起こしたくない。」
「貴族の建前の問題か?」
「エウル・ルナディオルド・レヴァニアとしての問題があるのは認めるわ。だけど、どちらかと言えば貴族は何をするのか分からないというのが問題なのよ。何でもするからね、シュバルッツ家は特に…」
エウルは更に溜息を吐いた。
「ただの平民なら、何の役にも立たない。貴族の厄介ごとには…貴族で対抗よ。」
「…俺に何を求める気だ…?」
トーラスはとても嫌な顔をする。
「私の執事になって。」
「嫌だ。」
「言うと思った。」
エウルはトーラスを引きずりながら、貴族専用の仕立て屋に向かった。
勿論、今の姿では平民に間違われ、あからさまな嫌な顔をされる。
「平民の店ではございませんが?」
「あら、貴族よ。」
「とてもそうには見えませんが?」
エウルは家紋を取り出した。
「これが偽物に見えるかしら。本物の貴族よ。」
手のひら返しの様に直ぐに態度を変えられる。
「も、申し訳ございませんでした!!」
「連絡もせず、平民のような服を着た私が悪いわ。気にしないで。」
「なんだ、この茶番…」
トーラスは悪態を付く。
「私も嫌よ…」
エウルも少し疲れた顔をした。
「ごめんなさいね、少し急ぎの用なの。マリー様に急遽お茶会をするから、それに見合うドレスを着させて。一番高いものでいいわ。請求書はルナディオルド家に送って。」
「一番高い服でいいって…」
トーラスは溜息を吐く。
「貴方も着るのよ。」
「え、嫌だ。」
「拒否権は無いわ。」
エウルはにっこりと笑った。
「これだから貴族は!!!」
「ええ、貴族でよかったわ。この人に服を。」
「か、かしこまりました。」
「執事になって頂戴ねー」
「覚えとけよおおおおお!」
二人は服を着替えた(うち一名は合意なし)。
エウルはトーラスの為に、エウルの持っていた家紋よりとても小さい家紋を取り出した。
「ごめんなさい、一日だけでいいから。」
その家紋に口付けをしてからトーラスの服に付けた。
「私は魔力が無いからね…本来なら魔力を流すなら普通にすればいいんだけど。魔力を残すためには口付けするのが一番効率がいいから。」
「知ってるよ。魔法を使ってるんだから。」
トーラスの美貌だけ見ると、ルナディオルド家にふさわしいように見える。
「でも、魔力を付与する意味があるのか?」
「シュバルッツ家は一応大貴族。私と言えども変なことはできない。だから、嘘は効かない。だから徹底的に本当にするの。貴方の今からの身分は私の執事よ。名前は何にするの?」
「クッソ…拒否権が無さすぎるぜ…だから嫌なんだ、分かったよ!『ギル』でいいよ!」
トーラスは流石に折れたみたいだ。
「ギル。行くわよ。」
「で、どうするんだよ。」
「だからお茶会よ。」
「はあ…!?」
二人は魔法国の一番大きい屋敷に向かった。
エレストはきれいな部屋に連れられた。
男たちに蹴飛ばされ、エレストは地面を這う。
「…チッ。」
「決めたかしら?」
マリーが同じく部屋に入ってくる。
「…」
エレストは無言を決め込む。
(誰かの下に付くのはこりごりだ。)
茨に縛られて、そろそろ体が悲鳴を上げ始めた。
「その茨もお辛いでしょう?」
どうやら、我慢比べのつもりらしい。
「平民になったからって、平民と同じ扱いをされるとは到底思えねえな。」
「勿論、相応の対価は支払いますわよ。」
その相応の対価はエレストの思ってるよりも相当低いだろう。
「夫を殺した奴を雇うなんて正気か?」
「貴方は殺してないですわ。私がこの手で殺したもの。」
(直接的に死んだのはやっぱ俺じゃなかったのか。)
「貴方には感謝してますのよ。お陰で、あいつをノーリスクで殺せて、かつ私がシュバルッツ家の権限を握れるのだから。」
すると侍女が急ぎ足にやってきた。
「マリー様、客人が…」
「なんですって?どなた?」
「ルナディオルド家の末っ子様です。」
「…失踪した筈じゃ!?」
「家紋は本物でした。その従者もそうです。間違いありません。」
「…要件は?」
「『お茶を飲みに来た』と…」
マリーは相当焦っている。
エウルのことだとエレストは直ぐに分かったが、この焦りようは流石大貴族であるといえるだろう。
「ごきげんよう。」
エウルとその従者であるトーラスは、見違えるほどの綺麗な服でやって来た。
「ご、ご無事でいらしたの?」
「ええ。」
エウルはエレストをまるで存在しないものというように一度もこちらを見ない。
「どのようなご用件でいらしたのですか?エウル様?」
「フフッ。ただのお茶よ。」
「お、お茶を用意して。」
「はっ!」
紅茶を手に取り一口啜る。
「うん、良いお茶ね。」
エウルは微笑んでいた。
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