雷撃の紋章

ユア教 教祖ユア

文字の大きさ
63 / 79
8章 呪いは浸食する

63

しおりを挟む
浅村は起きた。

(やっぱり、女の子と一緒のベッドっておかしいだろ!)

心の中で大きな声で叫ぶ。

橋本は隣ですやすやと眠っている。

(トーラス!!!面倒くさがらないでくれ!助けてくれたのはとても感謝はしてるけども!)

横腹を貫かれたというのに、よくもまあ生きれたなと感心する。

(ベッド自体は大きい!二人分だと思う!ただ!俺がでかいからその恩恵をあんまり受けれない!!!)

というか、奏道は何故この状態を良しとするのだろう。




この前、閃撃はふざけながらこんなことを言った。

「知らない人と同じベッドよりマシだろ。ま、変な事するなよ。それをしたら、療が怒るからな。」

「第一にしない!!!第二にしない!!第三にそもそもできない!俺が不貞行為を働く訳無いだろ!!」

「ま、でも、療曰くコイツよく悪夢にうなされるらしいから、その時は頭ナデナデ~で普通の爆睡になるらしいぜ。」

「なんだそれ。」

「橋本は別に嫌がらないからやれってさ。」

「本人に聞かないと分からないだろ…」



「はあーーーーーーーーーーーー…」

浅村は溜息を吐いた。

「落ち着こう。スゥーーーーーーーーーーーーーーー…」

でもやっぱり溜息を吐いた。

「はあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

ついでに今は夜だ。

普通に最悪な時間に起きた。

(今何時だ?いや、どうせ時間が分かっても一回寝なきゃな…)

少し体を動かすと、横腹に激痛が走る。

「っ……クッ…う…!!!」

この痛みはトーラスが言うには損傷そのものではないらしい。

身体がくり抜かれた痛みを覚えているためらしい。

まあ要は、身体の勘違いによって起きているとのこと。

(ああ、痛い…!!!!)

呼吸が荒くなる。

(大丈夫、大丈夫…呪術師はもういない…ゆっくり治せばいい。)

呼吸を整えながら、痛みが引くのを待つ。

完全に引くまでに、冷や汗で気持ちが悪かった。

「…はあ…」

隊長がこれで不甲斐無い。

たまたま全て上手くいっただけだ。

誰も死なず、完全に回復できる程度の怪我で済んだ。

(…これで、俺たちの旅終わる。…橋本さんはこの出来事が起きても、旅団を続けるのかな。)

彼女がどれほどの努力で『一閃』を習得したのかは一回だけ聞いたことがある。

才能が無いと言うが、目的を達成するための貪欲さは、最早恐怖を感じる。

それを否定するかのように紋章が支援向きなのも、その紋章しか見られない悲しさも、どれほど彼女を傷付けられたのだろう。

「…ぅ…」

自分のせいで起きてしまったかと焦って、浅村は橋本の方を見た。

「うぅ…」

先程の成人女性とは思えない決して綺麗とは言えない寝方とは違い、子供のように丸くなって震えていた。

「…止め…て…助け…て…」

泣きながら自分の身体を抱えて震えている。

(療から橋本さんが悪夢にうなされているって話は聞いたけど…本当にこんな苦しんでいるなんて思わなかったな。)

「ごめん…なさい…ごめんなさい…」

橋本はそれ以降ずっと謝罪を繰り返している。

(…どうする?…いやでも、うーん…)

閃撃の言っていたことを思い出す。


「ま、でも、療曰くコイツよく悪夢にうなされるらしいから、その時は頭ナデナデ~で普通の爆睡になるらしいぜ。」


(…いやいや!!!まずいだろ!俺男!関係なんてただの先輩と後輩!!は!?何で俺がこんなに取り乱してるんだ!?トーラス!今すぐ!ベッドを!もう一個寄越してくれ!え、本当に頭撫でるのか?)

ついでに床で寝ると色んな人から殺されるのではないかと思うくらい怒られる。

橋本にも「先輩が床で寝るくらいなら私が床で寝ます。」と言われている。

一旦浅村は落ち着いた。

(というか、俺がやってもすやすや寝るようになるのか?そもそもの話だけど。)

橋本は未だに謝罪を繰り返している。

これ以上は見ていられない。

(無許可なのは申し訳ないけど…)

そっと、手を頭の上に置く。

彼女の小刻みに震えているのが、手によく伝わる。

「…大丈夫だよ。…もう、大丈夫。」

そっと、触れてるか触れてないかの力で手を動かす。

「ごめんなさい…ごめんなさい……ごめん…なさい……」

すると、少しずつ謝罪が無くなっていき、最終的にはすーすー吐息をたてて寝ていた。

「本当に寝た…」

いつもお茶らけている彼女も、夜になっていくにつれて、少し辛そうな顔になる。

橋本には橋本の人生があるから、橋本に何があったのかは自ら言ってくれるまで詮索しない。

(…ごめんなさい…ね。何に謝っているんだか。)

こういうことを考えていても仕方ないから、浅村はもう寝ることにした。





「おはようございますー」

「おはよう。」

浅村と橋本以外は元気になったみたいだ。

「あれ、ハヤトは毒喰らったんだろ?」

「寝たら治った。」

「んな訳あるか。定期的にカナミチに治してもらってたんだろ。」

「確かに!」

「あ、そういえばトーラス。あの二人はどれくらい回復したの?」

「二人とも多少は歩けるようになってきたよ。まあ、10分位だけど。散歩終わったら爆睡する。橋本の方は魔法も紋章もあんまり使えない事以外は大分マシになってる。」

「まー…問題無いな。常時的に紋章使わない状態で戦ってるようなもんだし。」

「魔法は使ってるわよ…」

「それも、詠唱すら必要のない低級じゃん?それを使えなくても、最低限は戦えるだろ。」

「確かにね。それにしても、私達のある意味最後の戦いって言うのに、こうなのは災難ね…」

「確かに!!」

「おはようございます…」

すると、橋本が目を擦りながら現れた。

「ええ!?大丈夫なの!?」

「そんな寝てたら死んでしまいます。」

「寝ろ、ドアホ。」

「ゑゑ!?んなあほな!」

「方言隠せー」

「もう寝れまへん!鬼畜ですわトーラスはん!」

「もうそこまでいくとお前誰だよ。」

「方言そこまでじゃないだろー」

「あ、はい。」

すると、浅村も起きてきた。

「お前が一番寝ろ。」

「一言も言って無いんだけど…辛辣じゃない?流石に寝過ぎはくたびれちゃうよ。もうそろそろ復活してきたって言うのに。」

確かに、魔力も完全に回復している。

そもそも浅村の痛みはファントムペインに近いものだ。

本人がその痛みが無くなったら、良いのだろう。

「私だって別に元に戻ってますよ!」

紋章も魔法も一瞬なら良いが、戦闘時には絶対に出せない。

そのことを自覚してほしいものだと、トーラスは溜息を吐いた。

(危機感が無さすぎる…)

しかし、まあ見た目上は元気になってきた。

「ただまあ、たまーに眩暈が起きることあるけどこればかりは仕方ないですね!」

「駄目だろ。」

「重傷過ぎる…」

全員が溜息を吐いた。

「紋章も魔法も使わなければいいので、言うて軽傷ですよ。」

「使えないの間違いだろ、重症確定乙。」

「閃撃さん辛辣ですわ。」

雑談を軽く済ませた後、浅村は奏道に聞く。

「そろそろ、此処を発つ予定を決めよう。」

「早くない?私たちはまだしも、二人は動けないでしょ?」

「ここに長居する訳にはいかないよ。そもそも、一般人が簡単に来れる場所じゃないんだし。それに、和の国の魔物くらいは、皆で倒せるし、俺達はそれに足を引っ張る程回復してない訳じゃない。」

「団長が良いのなら、私も良いのだけれど…」

「あと、個人的に温泉に早く入りたいんだ。ほぼ俺の我儘だよ。」

「…はあ。本当にそんなことばっかり。」

「俺達の団長はこうでなくっちゃな!」

「良い訳無いでしょ!」

結局、経つ日が三日後に決まってしまった。

「決まってしまったからにはどうも言わねえが、お前らはさっさと寝ろ!!!」

トーラスに引きずられながら、橋本と浅村は連れて行かれた。

「あーあ。」

「なにかと、トーラスは面倒見が良いんだな。」

閃撃は笑った。






「…」

ある男はつまらなそうに歩いていた。

「弱いにしても、もう少しましな雑魚であってくれないと、つまらん。」

この先は和の国だ。

小さな国を滅ぼしても、強い者はいないのだったら、大国和の国ならどうだろうか。

淡い期待を抱いて、男は歩き出した。

左手には黄金に光る紋章があった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...