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17 腐食の森2
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「うわー。どう進む?」
ポセは森に入るとすぐ、飛行を止めた。
森の中は腐食植物だらけの密林で、簡単に通り抜けられるような場所は見当たらない。
毒胞子が濃霧を作り上げているため、視界は最悪だ。
『道を切り開いていくしかないわ。森の主はこっちよ』
「さて、準備運動を始めるか……ふんっ!」
ポセはクレアが指差す場所の植物を矛で切り裂く。
すると、すぐに四方八方から枝や蔓が鞭をしならせるように襲いかかってきた。
「きたな!」
ポセは楽しげに矛を振り回し、次々に切り刻んでいく。
その俊敏な動きに、ロディユはただただ圧倒される。
「ロディユ、一気に進む! 落ちるなよ!」
「え!? うん!」
ロディユは荒技を予期し、慌ててポセと自分を魔法の紐でがっしりと縛り上げた。
腕以外はビクともしないくらいに。
ポセは矛の刃を進行方向に向ける。
そして、トップスピードで直進を始めた——。
「くっ……」
ロディユはあまりのスピードに顔をしかめる。
「ゔっ……くっ……」
——こんなの……危なすぎだよ!
ポセは猛スピードで前進するだけではなかった。
攻撃してくる植物に対処するため、体勢が急激に変化している。
急に止まったり、急上昇したり、回転したり……。
ポセの肩を掴んでいたロディユの腕は振りほどかれ、振り回されていた。
「——やはり、大したことはない」
ポセは大混乱中のロディユをよそに、手応えのない敵に不満を漏らした。
——さすが十二神だな……。
ロディユはこんな状況でも余裕なポセに、尊敬の念を抱いていた。
「クレアさん、反則だよね。その移動方法」
ロディユたちの隣を飛行するクレアは、密林を易々と透過していた。
『あら、死霊なのだから仕方ないじゃない?』
クレアはロディユにウインクを送った。
「まあ、そうなんだけど……」
何もしていない自分が一番辛い思いをしている状況に、ロディユは苦笑するしかなかった。
「ポセさん、大丈夫?」
「ふははははっ! 楽しんでいる最中だ!」
「……そう、それはよかったよ」
子どものようにはしゃぐポセに、ロディユはため息をつく。
『——そろそろ森の主が鎮座する巨大な腐食樹に到着よ。私は援護することしかできないけど、頑張って!』
「任せておけ!」
密林の隙間を抜けると、少し開けた場所に三人は出た。
その中央には、大きな森の主が目を瞑って座っている。
見た目はただの大木のようだが……。
「ポセさん、見えた! 森の主の腹の中に緑の聖石がある。どうにかして回収して! クレアさん、援護お願いします!」
「任せろ!」
『毒胞子は私に任せて!』
クレアは周りの毒胞子が攻撃してこないよう、妨害の霧を張り巡らす。
ポセはその霧に紛れ、森の主の腹へめがけて突っ込んだ。
キーン!!!
矛の先が腹に突き刺さろうとしたその瞬間、緑の透明壁がその攻撃を跳ね返した。
ポセは強い反動で背を反らせ、飛び退く。
「硬い!」
ポセはハデスに言われた通り、何度も勢いをつけて矛を突き刺す。
「てあーー!!!」
『傷一つつかないじゃない! 硬すぎるわ!』
「ポセさん! 森の主が目を覚ました!」
ようやく周りが騒がしいことに気づいた森の主は、目を開け、体を軋ませながら立ち上がった。
『ヴォーーーーーー!!!』
森の主は雄叫びを上げ、目を緑色に光らせた。
そして、ゆっくりと大きな口を開け、喉が緑色の光を帯びる。
『——逃げて!』
クレアの警告の直後、森の主はその巨大な口から緑色の腐食砲を発射した。
瞬時に反応したポセは飛び上がって回避。
腐食砲が放たれた軌道上の植物は、跡形もなく消え去っていた。
「口から出す威力じゃないよ……」
その惨状をロディユが恐怖交じりに眺めていると……。
毒胞子が一斉に集まり始め、腐食砲で空洞になっていた場所をすぐに埋め尽くした。
「増殖スピードが早すぎる! もうあの攻撃の跡が消えた!」
ロディユの言葉を耳にしながら、ポセは向かってくる毒胞子の壁を矛で切り刻んでいた。
その隙を狙って森の主は腐食砲を再び発射。
それをポセが避けると、毒胞子の壁が四方八方から襲いかかってくる。
「キリがないぞ! ずっと同じような攻撃でつまらん!」
ポセは不満を漏らした。
「そんなこと言うなら、早く森の主の壁を破壊して!」
ポセの背中で自分たちの防御壁に魔力を補填しながら、ロディユは叫んだ。
「それもやっている!」
ポセは単調な攻撃を避けながら、森の主の防御壁の破壊に挑んでいた。
しかし、どれも有効打にならない。
弱点を探し続けている最中だ。
『無駄口たたく前に手数を増やしなさい!』
クレアはポセへ注意しながら、毒胞子をこれ以上増やさないように必死で抑え込んでいた。
「わかっている! 我の力はこんなものではない! うるぁーー!!!」
ロディユとクレアの言葉で刺激されたポセは、さらに攻撃スピードを上げた。
「その調子だよ!」
『ちょっと! 私のこともちゃんと応援してよね!』
「はーい、クレアさんもがんばれー」
『もう、やる気が削ぎれるわ!』
ロディユの適当な応援でクレアは口を尖らせた。
『ヴォーーーー!!!』
妨害し続けるポセに苛立ち、森の主は雄叫びを上げた。
身体中から枝を伸ばし、鞭のように振り回す。
「おっ! 攻撃パターンが変わったな。こっちの方がやりがいがあるぞ!」
ポセは飛行でうまく枝の攻撃を避け、足元の防御壁を狙った。
他の場所とは違う手応えを感じたポセは、笑みを浮かべる。
「森の主の足元の防御は弱いかもしれん! ここだけ感触が違うぞ!」
「ポセさん、そこを狙い続けて! 今、矛の補強の準備を始めたから!」
「頼むぞ!」
ポセは足元を中心に攻撃を開始した。
ポセは森に入るとすぐ、飛行を止めた。
森の中は腐食植物だらけの密林で、簡単に通り抜けられるような場所は見当たらない。
毒胞子が濃霧を作り上げているため、視界は最悪だ。
『道を切り開いていくしかないわ。森の主はこっちよ』
「さて、準備運動を始めるか……ふんっ!」
ポセはクレアが指差す場所の植物を矛で切り裂く。
すると、すぐに四方八方から枝や蔓が鞭をしならせるように襲いかかってきた。
「きたな!」
ポセは楽しげに矛を振り回し、次々に切り刻んでいく。
その俊敏な動きに、ロディユはただただ圧倒される。
「ロディユ、一気に進む! 落ちるなよ!」
「え!? うん!」
ロディユは荒技を予期し、慌ててポセと自分を魔法の紐でがっしりと縛り上げた。
腕以外はビクともしないくらいに。
ポセは矛の刃を進行方向に向ける。
そして、トップスピードで直進を始めた——。
「くっ……」
ロディユはあまりのスピードに顔をしかめる。
「ゔっ……くっ……」
——こんなの……危なすぎだよ!
ポセは猛スピードで前進するだけではなかった。
攻撃してくる植物に対処するため、体勢が急激に変化している。
急に止まったり、急上昇したり、回転したり……。
ポセの肩を掴んでいたロディユの腕は振りほどかれ、振り回されていた。
「——やはり、大したことはない」
ポセは大混乱中のロディユをよそに、手応えのない敵に不満を漏らした。
——さすが十二神だな……。
ロディユはこんな状況でも余裕なポセに、尊敬の念を抱いていた。
「クレアさん、反則だよね。その移動方法」
ロディユたちの隣を飛行するクレアは、密林を易々と透過していた。
『あら、死霊なのだから仕方ないじゃない?』
クレアはロディユにウインクを送った。
「まあ、そうなんだけど……」
何もしていない自分が一番辛い思いをしている状況に、ロディユは苦笑するしかなかった。
「ポセさん、大丈夫?」
「ふははははっ! 楽しんでいる最中だ!」
「……そう、それはよかったよ」
子どものようにはしゃぐポセに、ロディユはため息をつく。
『——そろそろ森の主が鎮座する巨大な腐食樹に到着よ。私は援護することしかできないけど、頑張って!』
「任せておけ!」
密林の隙間を抜けると、少し開けた場所に三人は出た。
その中央には、大きな森の主が目を瞑って座っている。
見た目はただの大木のようだが……。
「ポセさん、見えた! 森の主の腹の中に緑の聖石がある。どうにかして回収して! クレアさん、援護お願いします!」
「任せろ!」
『毒胞子は私に任せて!』
クレアは周りの毒胞子が攻撃してこないよう、妨害の霧を張り巡らす。
ポセはその霧に紛れ、森の主の腹へめがけて突っ込んだ。
キーン!!!
矛の先が腹に突き刺さろうとしたその瞬間、緑の透明壁がその攻撃を跳ね返した。
ポセは強い反動で背を反らせ、飛び退く。
「硬い!」
ポセはハデスに言われた通り、何度も勢いをつけて矛を突き刺す。
「てあーー!!!」
『傷一つつかないじゃない! 硬すぎるわ!』
「ポセさん! 森の主が目を覚ました!」
ようやく周りが騒がしいことに気づいた森の主は、目を開け、体を軋ませながら立ち上がった。
『ヴォーーーーーー!!!』
森の主は雄叫びを上げ、目を緑色に光らせた。
そして、ゆっくりと大きな口を開け、喉が緑色の光を帯びる。
『——逃げて!』
クレアの警告の直後、森の主はその巨大な口から緑色の腐食砲を発射した。
瞬時に反応したポセは飛び上がって回避。
腐食砲が放たれた軌道上の植物は、跡形もなく消え去っていた。
「口から出す威力じゃないよ……」
その惨状をロディユが恐怖交じりに眺めていると……。
毒胞子が一斉に集まり始め、腐食砲で空洞になっていた場所をすぐに埋め尽くした。
「増殖スピードが早すぎる! もうあの攻撃の跡が消えた!」
ロディユの言葉を耳にしながら、ポセは向かってくる毒胞子の壁を矛で切り刻んでいた。
その隙を狙って森の主は腐食砲を再び発射。
それをポセが避けると、毒胞子の壁が四方八方から襲いかかってくる。
「キリがないぞ! ずっと同じような攻撃でつまらん!」
ポセは不満を漏らした。
「そんなこと言うなら、早く森の主の壁を破壊して!」
ポセの背中で自分たちの防御壁に魔力を補填しながら、ロディユは叫んだ。
「それもやっている!」
ポセは単調な攻撃を避けながら、森の主の防御壁の破壊に挑んでいた。
しかし、どれも有効打にならない。
弱点を探し続けている最中だ。
『無駄口たたく前に手数を増やしなさい!』
クレアはポセへ注意しながら、毒胞子をこれ以上増やさないように必死で抑え込んでいた。
「わかっている! 我の力はこんなものではない! うるぁーー!!!」
ロディユとクレアの言葉で刺激されたポセは、さらに攻撃スピードを上げた。
「その調子だよ!」
『ちょっと! 私のこともちゃんと応援してよね!』
「はーい、クレアさんもがんばれー」
『もう、やる気が削ぎれるわ!』
ロディユの適当な応援でクレアは口を尖らせた。
『ヴォーーーー!!!』
妨害し続けるポセに苛立ち、森の主は雄叫びを上げた。
身体中から枝を伸ばし、鞭のように振り回す。
「おっ! 攻撃パターンが変わったな。こっちの方がやりがいがあるぞ!」
ポセは飛行でうまく枝の攻撃を避け、足元の防御壁を狙った。
他の場所とは違う手応えを感じたポセは、笑みを浮かべる。
「森の主の足元の防御は弱いかもしれん! ここだけ感触が違うぞ!」
「ポセさん、そこを狙い続けて! 今、矛の補強の準備を始めたから!」
「頼むぞ!」
ポセは足元を中心に攻撃を開始した。
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