2 / 46
2 衝撃の目覚め
しおりを挟むこの物語の主人公——エバ・シャーリーは死んでしまった。
しかし、奇跡が起きた。
悪魔の力を借りて、新しい体に転生することになった。
これが正解だったかのは、エバにはわからない。
けれど、エバはこのチャンスに賭けてみることにした。
『さあ、もう一度やり直しよ!』
エバはそう意気込んで、瞼を開けた——。
*
暗い部屋のベッドの上で、転生したエバは目覚めた。
「——うっ! 痛っ……」
エバは体をわずかに動かした瞬間、全身に痛みを感じた。
——転生した反動? 痛いけど、生きてるって感じがする……。私、本当に生き返ったんだ……。
仰向けに寝転がるエバは、転生の余韻に浸っていた。
——悪魔って悪いやつじゃないのかもね……感謝しないとなー。……それにしても、ここはどこだろう? 暗いな……。
エバは頭を左右に動かして部屋を見回す。
サイドテーブルに置かれた照明の光だけでは、部屋の様子はわからなかった。
カーテンから漏れ出る光はなく、部屋の外の喧騒は聞こえないため、今は夜なのだろう、と予想できただけだ。
部屋を少し明るくしよう、とエバはサイドテーブルの照明に手を伸ばす……。
——なにこの手……。
自分の右手が視線に入った途端、エバは動きを止めた。
——どういうこと……?
エバは痛みに堪えながら、ゆっくりと上体を起こす。
そして照明を明るくすると……。
右腕に包帯が巻かれていた。
慌てて掛け布団を捲り上げ、身体中を触って確認する。
——嘘!? 頭、両足、両腕、腹……身体中が包帯だらけじゃない!?
大人の女だとわかってホッとしたが、あまりにも酷い状態にエバは不安を抱き始める。
——事故……? それとも、事件?
エバはベッドからゆっくりと立ち上がる。
唯一確認していない顔を見るためだ。
サイドテーブルの向こうに鏡台を見つけ、エバは左足を引きずりながら、恐る恐るそこへ近づく。
緊張で徐々に鼓動が大きく、速くなっていく。
そして、鏡を覗き込んだ——。
「ギャーーーーーー!!!」
エバは悲鳴を上げずにはいられなかった。
恐怖で後ろへ仰け反り、躓いてしまう。
「——お嬢様!? いかがなさいましたか!?」
幼い侍女は慌てて部屋に駆け込んできた。
「お嬢様?」
床にへたり込んだエバの前で侍女はしゃがみ、心配そうに様子を伺う。
「…………」
錯乱状態のエバにその問いかけは聞こえなかった。
体を震わせ、その場で呆然としている。
——どうして!?
そんな言葉がずっとエバの頭の中を駆け巡っていた。
「——リリスお嬢様?」
「やっ……」
——気持ち悪い!
エバは無意識に顔に爪を立てて傷つけ始めた。
「リリスお嬢様!? おやめください!」
侍女は慌ててエバの腕を掴んで止めようとする。
「いやっ! 気持ち悪い!」
——その名前で呼ぶのはやめて! 穢らわしい!
エバが転生した体は、エバがこの世で1番憎い女『リリス・ジョーゼルカ』の体だった。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
枯れ専モブ令嬢のはずが…どうしてこうなった!
宵森みなと
恋愛
気づけば異世界。しかもモブ美少女な伯爵令嬢に転生していたわたくし。
静かに余生——いえ、学園生活を送る予定でしたのに、魔法暴発事件で隠していた全属性持ちがバレてしまい、なぜか王子に目をつけられ、魔法師団から訓練指導、さらには騎士団長にも出会ってしまうという急展開。
……団長様方、どうしてそんなに推せるお顔をしていらっしゃるのですか?
枯れ専なわたくしの理性がもちません——と思いつつ、学園生活を謳歌しつつ魔法の訓練や騎士団での治療の手助けと
忙しい日々。残念ながらお子様には興味がありませんとヒロイン(自称)の取り巻きへの塩対応に、怒らせると意外に強烈パンチの言葉を話すモブ令嬢(自称)
これは、恋と使命のはざまで悩む“ちんまり美少女令嬢”が、騎士団と王都を巻き込みながら心を育てていく、
――枯れ専ヒロインのほんわか異世界成長ラブファンタジーです。
転生令嬢はやんちゃする
ナギ
恋愛
【完結しました!】
猫を助けてぐしゃっといって。
そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。
木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。
でも私は私、まいぺぇす。
2017年5月18日 完結しました。
わぁいながい!
お付き合いいただきありがとうございました!
でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。
いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。
【感謝】
感想ありがとうございます!
楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。
完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。
与太話、中身なくて、楽しい。
最近息子ちゃんをいじってます。
息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。
が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。
ひとくぎりがつくまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる