【完結】君の声が聴こえる

雪則

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止まらない時間

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あの日から数日がたった。


二人の時間は止まっても



変わらす朝はやってくる。


夜は終わる。



止まったままなのは私達だけだった。



それでも私は、


図書館を訪れていた。



幸治はいつもと変わらずに、

窓際の机に座っていた。


サングラスにイヤホンをつけて。



なにも変っていないのに。


幸治が他人よりも遠くみえた。



私は声をかけることができないまま。



ただただ図書館に訪れていた。



時には友達と話をしながら


私は幸治を見ていた。





もちろん幸治は電話もかけてはこない。



私のために。


自分から関係を壊したんだ。


私に少しでも罪悪感をもたせないために…。


私は一言謝りたかった。


でもそれは逆に幸治を傷つける結果になってしまう。


そんな気がして言えなかったんだ。



きっとまた気を使わせてしまう。


貴方は優しいから…



だから今日で終わりにするね。



これは私の自己満足でしかないけど、




私は静かに幸治の後ろにたった。



「幸治…

…ごめんね…」




聞こえるはずのない声。


思えば、初めて幸治にかけた言葉も


イヤホンで聞こえてなかったな。



私は自分が楽になりたいだけだ。



でも…



「これで…

お別れだね…

本当にありがとう…」


そんなはずはない。


でも日差しに照らされた幸治の頬に…


涙が流れたような気がした。



「…さよなら…」


そして私は幸治のもとを離れようとした。



その時。



「あすか~!!なにやってんのぉ??」



…!!



図書館に響いた友達の声。


こんな大きな声。



絶対に幸治にも聞こえてる。


私は慌てて幸治のほうを振り替える。


だが幸治は相変わらず外を眺めていた。



聞こえてない…?



そんなはずない!



私はいてもたってもいられずにその場を逃げた。


「あれ!?どうしたの?!
あすかぁ~!?」



最悪だ!



私は図書館を飛び出した。


図書館横にある小さな路地に走り込む。



…ドン!!



「わっ!」
「きゃっ!」



私の体はなにかにぶつかって激しく倒れこんだ。


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