【完結】最愛の人 〜三年後、君が蘇るその日まで〜

雪則

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第7章 真実と現実

7-1

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土曜の朝。


俺は楓からきいた○○駅に向かった。


沙希ちゃんに詳しくきいてくれたみたいで、


見かけたのは昼過ぎだったようだ。


なので朝一から駅にいれば電車で鉢合わせになることはないだろう。


だが一応周りを気にしながら電車に乗り込んだ。


俺は不安と緊張で胸が締め付けられていた。


もちろん恵に対する罪悪感もある。


でもこれはきっとこの先の二人のためには必要なことなんだ。


小一時間ほど電車に揺られて目的の駅へとたどり着いた。


こんな遠くにいったいなにをしに来ているのだろうか。


俺も実際この街に来たのははじめてだった。


売店で飲み物とパンを買って、改札機の見えるベンチに座った。



深く帽子を被って一応はバレないように変装をしてきたつもりだ。



改札機を通る人達をただひたすら見つめる。


本当に恵は現れるんだろうか。。


時間だけがただ虚しく過ぎていく。


だんだんと疲れがたまってくる。


腰の痛み、眠気と闘いながら恵が現れるのを待つ。


気がつくと11時半を回っていた。


ちょうど昼御飯を買いに売店に行こうとした時、



見覚えのある格好で改札を通っていく女性がいた。


俺は目を凝らして顔を確かめる。



恵だ!!


本当に恵はここに来ていたんだ!!


俺は少し興奮してしまった気持ちを落ち着けて恵のあとをつけていく。


バレたらおしまいだ。


慌てずに距離を充分あけてついていく。


恵は俺に気付くことなく歩いていく。


だんだんと不安が押し寄せてくる。


恵が進んでいく先になにが待っているのか。


もしかしたら男と会っているのかもしれない。。


そんな不安が脳裏をよぎる。


恵は駅を出ると待ち合わせの人で賑わう噴水に腰を掛けた。


俺は遠くからそれを見ている。


やっぱり誰かに会いに来ているんだ。


恵はじっとうつむいたまま誰かを待っているようだった。


次から次へとやってくる人達。


若い男が恵に近づくたびにハラハラする。


女の子が近づくたびにこの子であってくれと願う。


とにかく自分のいいようにあってほしいと心から願った。


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