魔皇世界へようこそ!

くろやん

文字の大きさ
2 / 4

勇者が驚愕する話

しおりを挟む
「出ろ。」
牢屋に捕らわれていた勇者にそう呼びかけられた。
彼は異世界から召喚された勇者だ。

「釈放する。」
「なんだと・・・?人類側はどうなった?」
「魔皇帝陛下に全面降伏した。慈悲により立て直してる最中だ。」
「そ・・・そんな。」
なんのために無理矢理召喚されて頑張ってきたのか。
「殿下たちは・・・?」
「お前の仲間なら今日、釈放される。陛下に感謝するんだな。
戦争が終わった以上、無駄な血を流すことを好まられない。」
魔人はそう言った。
そこに別の魔人がやってきて耳打ちした。
それを聞いた魔人は勇者に言葉をかけた。
「勇者パーティーに敬意を表して陛下がお会いになられたいそうだ。」
「・・・わかった。」
これは殺すチャンスかもしれない。

武装解除されていなければ、一矢報いることが出来るかもしれない。
「ユウト!!」
勇者パーティーの仲間であったレミア王女が駆け寄って抱きついてきた。
「良かった!!無事で!!」
「殿下。」
勇者はそっと彼女に耳打ちする。
「転移魔法を準備しておいて・・・。」それが何を意味するか察した王女は頷く。
謁見は暗殺する絶好のチャンスなのだ。
いざという時は刺し違える。
そして王女を逃がす。
ユウトはそう思った。

「ようこそ。レミア王女殿下。それに勇者殿。」
魔皇帝は女だった。
結構でかい。
身長10メートルはあるかもしれない。
勇者は密かに絶望する。
彼女の前までに想像を絶する量の魔法術式が組み込まれている。
自爆攻撃を含め、いかなる攻撃をも防ぐことが出来る量だった。
そして、それ以上に驚愕する事実があった。
今、彼女が話したのは日本語だった。
「ん。」
彼女は動きを止めたかと思うと、体が開いた。
それはもうパカっと。
まるで某シュワルツェネッガー主演の映画みたいにだ。
いや、むしろ某モビルスーツと言った方が正しいかもしれない。
そして中からセーラー服を着た少女が出てきて、飛行術式で飛び降りたのだった。

「改めて魔皇城へようこそ。レミア=カレルシア王女殿下。勇者の吉井悠人さん。」
「な・・・。」
「私は魔皇帝をやってます桜井美里といいます。よろしくお願いします。
ちなみに吉井先輩と同じ高校で一学年後輩です。」
「・・・に・・・日本人なのか?」
「魔皇と日本人の混血なんですよ。
先代の魔皇が夫婦そろって父方の実家の佐賀市に引きこもっちゃいまして。」

自分の地元は魔皇の巣窟だった?と勇者はさらに愕然とした。
「私が統治してるわけです。」
そういいながら彼女は右手を挙げた。
テーブルが出現し、侍従が茶を持ってきた。
「まあ、座って下さいな。」
抵抗する気も失せた2人は大人しく席につく。
お茶請けにはカステラなどが入っていた。
この世界には存在しないお菓子である。
「まず、レミア王女殿下に言わなければならないことがあります。
あなた方の王制は解体されました。」
「父上や母上も処刑されたということですか?」
「いいえ。象徴になっていただきます。詳しくは勇者殿にお尋ねになってください。
象徴天皇制を知ってるはずですので。」
「それは日本の・・・。」
「そうです。何だかんだ言って一番なじみ深いですからね。
まあ、私は魔皇帝として絶対の力を持ってないといけませんが。」
そういって一息ついた彼女はさらに言った。

「民主主義を導入し、奴隷制度を全廃します。金本位制に基づいて資本主義を導入させていただきます。」
「私どもの国はすでに負けてしまっていて、異論を挟めるはずもございません。」
レミア王女は深く頭を下げて言った。
「しかしながら我が民は苦しんでいる事でしょう。どうかよしなに。」
「ご安心を。勇者殿の故郷でもありますが、父方の国は戦争の荒廃からわずかな期間で大国に返り咲きました。きっとあなた方の国もそうなるでしょう。」
「ユウトの国・・・。」レミア王女はユウトを見た。
彼はまだ動揺している。
「陛下。お願いがございます。」
意を決したらしく王女は言った。
「何でしょう?」
「私はその国を見てみたいと思います。」
「王女!?」ユウトは我に返って王女を見た。
「なるほど、それもいいかも知れませんね。」美里は愉快そうに同意する。
「吉井先輩はどう思われますか?」
いろいろと悩んだあげく、彼は首を縦に振った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...