僕の記憶に黒い影はない。

tokoto

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ルシューランにて

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 あれから半日と少し歩いてようやくルシューランに着いた。出発してから丸三日が過ぎていた。早く宿を見つけて休みたいというのが本音だった。
 お風呂にも入りたいな。サリュは土で汚れた髪を触った。黒髪に付いた土の色はそこそこ離れていても見えるほどだ。ごわごわとして指を通そうとすると軋む。手は少し汗でべたついた。
「町に行ったら何する」
カルに訪ねる。
「そうだな、、とりあえず宿を探さないと」
「それはそうだけれど。僕は、新しいローブが欲しいかな。それと、靴も買い換えないと。穴が開きそうだ」
サリュがカルの顔を見つめる。君は何をするのか。そう聞いていた。
「じゃあ、俺は。リプラーの話が聞きたい」

  遠くからでも臨めた大きな石門の前まで来ると、そこは人でごったがえしていた。商人だろうか。多くの荷物を抱えその重さに震えている者もいれば、荷車に覆いからはみ出るほどの量の武器や防具を詰め込んでいる者もいる。
「人ばっかだな」
カルが町の感想を述べた。
「そうだね、こんなにたくさんの人がいるところは久しぶりだ。あっ、見てあそこ」
指差す先には門の端、緑の制服を着た門番らしき男が一人、先に入っていった荷車の荷物を検査していた。反対側でも同じような光景が見られる。
「調べてるんだな。ここまで大きなとこだと警備もしっかりしてる」
「緑だね」
「緑だな」
お互いに本題はそこにはない。
「どうする、走る?」
「当たり前だろ」
疲れた体でこの検査の行列に並ぶのは少々我慢ならないところがあった。

 二人は走り出す。荷物の重みでふらついた男をギリギリで交わし町中の人混みまで駆ける。
 荷車の荷物に視線を落としていた門番がその存在に気づく頃には、彼らはもう手を伸ばしても届かないところにまで遠退いていた。
    
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