僕の記憶に黒い影はない。

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ルシューランにて

夜のルシューラン2.

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 宿を出ると冷たい風がローブを揺らした。町は夜でも歩くのに困らない程度に明るい。等間隔に並んだ街灯にはやはり魔鉱石が輝く。
 宿の前の通りは昼間の人通りの面影がない。深とした石畳に二人分の足音が響く。
 立ち並ぶ家々のカーテンから漏れ出た明かりがそれぞれにひとつの温もりの形を見せている。のんびりと歩みを進める二人を遠くで賑やかな大通りが呼んでいた。
 大通りは夜の顔を見せる。暖色系の明かりに照らされたたくさんの露店が昼にも増して客を寄せている。
「日が沈んだのに昼間みたいだよ」
少し声を張り上げる。すぐに周りの音にかき消えてしまったがカルには届いたようだ。サリュを見て頷く。
「これじゃゆっくり見て回るのは難しいな」
「とにかく先に広場に行ってみよう。もう始まってるかもしれない」
再び頷き前を早歩きで進んで行くカルを人の山に揉まれながらも懸命に追いかける。間をすり抜けて行く人に幾度かその背を見失いそうになった。途中三本に別れた道の真ん中、緩い坂になっているそこを上ると開けた場所に出た。人混みから押し出されるように抜け出る。広場らしい。
 通りほどは混雑していないところを見るとまだ始まっていないようだ。
「あれがそうかな」
サリュが指差す先に際立って装飾的な円い舞台のようなものが見えた。矢倉のように組み上げた見上げるほどの背の高い建物がその両端に二つ建ち、間には細いロープが四本、うち二本はピンと張られている。弛んだ方には宣伝か何か色とりどりの旗のようなものが提げられているがここからではその文字もぼやけて見えない。
 また矢倉には所々隙間を埋めるように絵が描かれた板が飾ってある。作成途中のパズルのような穴抜けの矢倉は、見せる骨組みとして芸術性を確立していた。
 舞台の後方には、右側に二つ、左にひとつ三角帽子のような小さなテントが置かれている。右から赤、白、橙の鮮やかなそれは動物や植物の模様が描かれ華やかな雰囲気を形作っている。
 舞台を囲むように設置されたいくつもの照明器具の群れは、中央に置かれた街灯のような、しかしそれよりはかなり大きな置物の光を銀色に反射している。
 どれもこれも通る人の目を引き、立ち止まらせる。
「まだ始まってないみたいだな」
「もうちょっと近づいてみようか」
近づくほどに細かな装飾も目に入り視界を色づけていく。同時にどこかごてごてとした威圧感のある装飾に少し抵抗を覚えた。眩い限りを尽くした舞台は見た目に似合わず静かに本番を待っている。
 三角テントの裏に回るとひとりの丸々と太った男がパイプを星の見えない空に向かって吹かしていた。ピチピチになったスーツは少し無理を感じさせる。赤い蝶ネクタイが居心地悪そうに首元にぶら下がっている。
 「、、っ、くぅぼっ、がほっ」
煙にむせたのか男は突然前屈みになり咳き込み始めた。
「、、、」
助けようかと迷いながらも躊躇し様子をうかがうことにした二人はテントの影になる位置に身を置いた。
 しばらくそのままで咳が落ち着いた頃、男が二人に気がついて近づいてきた。男の赤く充血した目がこちらを見ている。なんというか不気味な男だ。
「やぁやぁ、こんばんは。いい夜ですねぇ。こんな夜はサーカスを見るに限りますよ」
「、、サーカス?」
聞き馴染みのない言葉に戸惑う。カルを見ると首を振って応えた。
「おや、ご存じありませんでしたか。、、あぁそうか。そうでした。曲技団ならわかりますかな」
あぁ、なるほど。
「異国の方ですか」
「ええ、我が曲技団は世界を旅して回っております。そういった意味では異国ですな」
「我が、というのは」
「あぁ、申し遅れました。私、サーカス『羊の群れ』団長のロクホロと申します。以後お見知りおきを」
にやりと笑い丸い腰をゆっくりと曲げ恭しく礼をする男にサリュは名乗るべきか迷い、頭に浮かんだ適当な言葉を並べた。
「ど、どうも。団長さんでしたか。、、サーカスは面白いですか」
「えっ、えぇもちろん。あと一時間ほどで開演です。どうぞ見ていらしてください。珍しいものをお見せできると思いますよ」
男は含み笑いを浮かべる。つり上がった口端は異様なほどに赤くなっていた。
「そうですか。では、楽しみにしています」
怪我ではないかとも思ったが、赤の他人に心配されても面倒くさいだろうと考え話を切る。振り返った背中にクヒックヒッという男の咳か笑い声かと思われる何かが聞こえた。

「団長さんかぁ」
「胡散臭いな、あいつ」
「そうかな。まぁ不気味ではあった」
テントから離れさらに広場の奥へと入ったところで二人は足を止めた。
「あの口の傷」
カルが小さな声でこちらを見ずに呟いた。
「ん?」
「、、いや、なんでもない」
「そう」
 しばらく進んで広場を出ると眼下に光が群れた大通りが見えた。
「どこ行く?」
尋ねたカルの息が薄い白に変わっていた。寒っ、と両手を擦り合わせる。確かに少し肌寒いような気がした。
「んー、ローブを探しておくのもいいかもしれない。それと靴も」
サリュの言葉で坂を下りもう一度大通りに出る。それほど時間は経っていないはずなのに先程に比べ人が減ったような気がした。辺りを歩く人々は似たような年齢が集まり、子供や老人はほとんどと言っていいほど見えなくなった。
 そろそろ町でも人が眠る時間なのだろう。店も幾つかは撤収したようで商品が回収された後の店の木枠だけがいくつもの光の中で穴が開いたようにポツンと取り残されている。
 旅の用具は、靴などは特に夜には見つからない。しばらく通りを行き来した後、規模が冷めてきた人混みの中ゆっくりと歩幅を縮めて立ち止まった。
「どうしようか」
目的を失ったサリュは余った時間の潰し方をカルに委ねる。
「他に見たいものとかは?」
問い返され一応考えてはみるが、捻り出した服というのもローブと同じくこの時間は難しいだろうと口に出す前に消える。
「何があるのかわからないし」
「そっか。じゃあ、酒場でも行くか」
最初から考えていたのだろう。時間が余ればという感じか。カルは考える間も持たずに答えた。
「リプラーのことかい?」
「あぁ。夜の方が人が集まるだろ」
確かに昼間に行くよりは深い話が聞けるかもしれない。リプラーの件の男がいるとは限らないがそれでも行く価値はあると思える。
「そうだね、行こうか。どこかはわかるのかい?」
頷いたカルは
「昼間に調べておいた」
と微笑む。その足はすでに動き始めている。カルがお金の心配をしていたことを思い出したサリュはさっさと歩き出す後ろ姿に苦笑する。明日は少し疲れそうだとその背を追った。

 夜の町に一際輝く店。白い煉瓦造りの小さな建物は黄色の明かりを窓から道へと強く落としている。周りのどの露店や建物にも負けない賑わいを見せる酒場は、二人の若者が入るには少し不似合いな酒でつぶれた声で響く怒号やら歓声やらで溢れていた。

カランカラン

店の印象とは対照的な可愛らしい音がドアを開けると降り注いだ。
「いらっしゃいませ」
年の若い女性が後ろで結った腰まである淡い茶色の髪をふわりとなびかせながら振り返った。整った顔によく似合う笑顔を浮かべている。
「あら、見ない顔ね。旅人さんかしら」
バーカウンターの中をこちらの方へと移動しながら話しかけてくる。カウンター席の、元は彼女がいた場所で赤くなった男が数名不満の声をあげるのが聞こえた。
「あぁ、気にしないで」
爽やかに二人に笑いかける。
「アルマぁ、そりゃぁねぇよぉ」
後ろの男のひとりが発した言葉を軽く手で払い除けた。
「それより、ここは見ての通り酒場よ。大人の来る場所。貴方たち間違えてない?」
「いえ、僕たちこう見えてもおと━━━」
「アルマぁ、そんなやつらほっとけよぉ。なぁ?」
「煩いわよ、おじさんはお酒で十分でしょ。頭からかけるわよ!」
「うっ、うぅー、、、」
ピシャリと叩きつけられた言葉に男はしゃっくりひとつと無言で返す。うんうんと頷いてアルマと呼ばれた女性はもう一度向き直った。
「で、どうしたのこんなとこに」
訝しんでいる様子で尋ねる。カルはともかくサリュの場合、大体は酒場に行くとこうなので答えることには慣れていた。
「もちろんお酒を飲みに来ました。一杯いただけますか」
子どもには早いと追い出されることもある。幼い顔立ちが災いし、すんなりと酒を出された経験はまだない。
「それはいいけど、、、貴方、飲めるの?」
少なくとも追い返されることはなさそうだ。サリュは安心したようにふっと頬を緩め
「僕らは大人ですよ」
アルマに頷いた。
 店の奥ではテーブルを囲んで荒ぶった武勇伝が盛り上がっているようだった。カウンターに並ぶ椅子の中、彼らから離れた入り口から一番近い席に座る。
 店はそれほど広くはない。通りと同じ暖色系の照明を使用した店内はむき出しの白い煉瓦壁を柔らかく照らし暖かみのある色に染めている。所々に置かれた大小様々の植物が酒臭い空間にも爽やかさを与え、店主の志向がうかがえる。少なくとも最初は親父の溜まり場ではなかったのだろう。
「それでよぉ、俺はグァバァっとだな━━━」
ひとりの男が得意気に話しているのが聞こえる。これはこれで悪くはないと思える。
「ごめんね、煩くて」
別のテーブルで注文を受けて奥にいたアルマが、酒を届けたその足でメニューを持ってきた。
「いえ、賑やかなのは嫌いじゃない」
「あらそう? それならいいんだけど」
そう言いながらカルの方をちらりと見やる。先程から一言も発しないことが気になったようだ。当のカルはというと、店にいる男一人一人を品定めするかのようにまじまじと眺め、アルマの視線には気づいていない。もしかするとアルマにはカルが男たちを睨んでいるように見えたのかもしれない。
「彼も同じですよ」
念のため付け足しておく。彼女が気に病むのも、カルが誤解されるのも、取り分け思うところはないが面倒は避けたかった。
 サリュに視線を戻したアルマがそう、と微笑む。笑みを返すと手に持っていた薄い折り本を渡された。
「これ。この中にあるものなら作れるけど。簡単なのでよければ料理も出すわよ」
別料金で、と付け加えいたずらっぽく笑う。
「あいにく、さっき宿で食べてきたところなので」
答えながら本を開いた。いくつもの種類の酒が挿絵を添えて名前を連ねる。
「これは貴女が?」
絵を示す。
「えぇ、そうよ」
「上手ですね。どんなものか想像できてとてもわかりやすい」
「ありがと。まぁこの店に来るのなんてあの辺のおっさん連中だから、いくら工夫したって売れるのはハイボールかビールなんだけど」
呆れたように騒いでいる男たちの方を見る。大声をあげて乾杯する彼らの手にはジョッキが握られ、並々と注がれて縁から溢れた泡が側面を伝っている。
「はぁ、なんでこう、親父ばっかなのかしら」
「絵、得意なんですか」
振り向いた彼女は大きく頷いた。
「そうね、得意かも。美的センスっていうの? 人より秀でてるのかもしれないわ。あの植物なんかも私が置いたんだから」
顎で示しながら誇らしげに語る。しかしその顔はすぐに不満を含んだ表情に変わった。
「本当はもう少し上品なお店にしたかったんだけどね。いいでしょ、あれ。濁った空気も少しは爽やかになるわ」
と皮肉げに言う。窓際を中心的に置かれた植物は酒臭い男たちには釣り合わない。口を尖らせたアルマは不満げにカウンターを拳で軽く叩いた。
「あの、、何かお勧めとかありますか」
口を尖らせたままのアルマが首を傾げた。
「あぁ、いえ。たくさんあって選べないから、貴女の意見を聞こうかと。お酒にそれほど強くなくこの後も予定があり、尚且つ大金はけして持ち合わせていないしがない旅人に丁度いいお酒、何かありますか」
今度はサリュが条件ごとに立てていった指を添えていたずらっぽく笑う。つられたアルマの表情からも尖りが消えた。少し悩む様子を見せながらも彼女は割と簡単に答えた。
「そうね、、、ポポタ酒なんてどうかしら。この土地周辺で採れるポポタっていう果実から作ってるんだけど。お酒の練習で飲むくらいだからそんなに強くないし。数も作られてるからこの町ではそれほど高くもないわ。まぁ、町の外に出たら希少になるみたいだけど。町の若者の酒って感じかな。ジュースに近いかも」
メニューをサリュから取り、これっと指して見せる。鮮やかなオレンジの液がグラスに注がれた様子は確かに酒というよりジュースに近い。
「じゃあそれを」
思い出してカルを見る。先程より姿勢を崩し楽にしているが、常に視線の先には客の姿を捉えている。まだ選定作業は続いているようだった。
「二つお願いします」
勝手に注文を済ませる。どうせ目的は酒にはないのだから大して問題はないだろう。飲むかどうかも怪しい。
「はい、かしこまりました」
 グラスを取りにアルマが離れるとカルがやっと口を開いた。
「サリュ、どうする」
「うーん、僕はここに残ってもいいかい」
ゆっくりお酒を飲みたい。
「それは問題ないけど、、、お金は?」
「酒代くらい持ってるさ、心配しないで」
「そうか。じゃあ俺のも頼む」
返事を待たずに立ち上がったカルを見送ると入れ違いでアルマが帰ってきた。
「あれ? どうしたのあの子」
不思議そうに後ろ姿を見送る。
「なんか彼らに聞きたいことがあるらしくて」
「ふーん」
「お酒は置いておいてくださって結構です。しばらくしても戻らなければ僕が持っていきますから」
 アルマはサリュの目の前にコブレット型のグラスを置き、挿絵通りの酒をその半分まで注いだ。カルがいた場所にも同様にもうひとつが置かれる。
「貴方たち本当はお酒を飲みに来たんじゃないでしょ。何の用?」
瓶の口を閉めながらアルマは唐突に問い掛けた。サリュは珍しい香りの酒にゆっくりと口をつける。
「、、ふぅ。やっぱり似合いませんか」
アルマが吹き出した。
「ふふっ、全然似合ってないわね」
整った顔をくしゃりと崩す。
「大人というのは本当です」
「えぇ、そこは疑ったりしてないわ」
「それはどうも」
「、、、で?」
どうもうまく手にはまらないグラスを何度か握り直すサリュにアルマは顔を寄せた。
「で、とは?」
「何しに来たの」
首を傾げると耳に掛けていた後れ毛が不安定になる。今にも落ちそうな髪を眺めながら、気にならないのだろうかと不思議に思う。
「特には、、、暇潰し。リプラーのこととか聞けたらなぁと思って」
そう言って再びグラスを口に運ぶ。どうやら彼女の思う答えではなかったようで、興味をなくしたようにカウンターから身を引く。
「なぁんだ、そんなこと」
「知ってるんですか、リプラー」
「えぇ、まぁね。ここにいると色々教えてくれるのよ。皆暇だから」
「なるほど。、、、教えていただけませんか、知ってること」
彼女はサリュの顔をじっと見つめた。何か考えているようだったが、やがて小さくため息を吐いた。カウンター裏のサリュからは見えないところにある椅子を近くに引いて座る。
「いいわよ、別に。、、最近多いわね」
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