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ルシューランにて
リプラーの傷
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こいつらまだ続けるんだろうか。先程から大声を響かせる髭の男、日々酒場に入り浸っているそいつは今日も上機嫌に自らの武勇伝を語っている。
「そしたらさぁ、いきなり襲ってきやがったんだよ」
周りの奴らもよく飽きないものだ。まぁ、真剣に聞いている者などいないのかもしれないが。皆口々に自分のことを話すので場はたいそう盛り上がって見える。話の繋がりなどどうでもいい集団が店内を埋め尽くしているのだ。
ひとりの男が近づいてきていた。赤毛、長身。目を隠してしまいそうな長い前髪が歩く度に揺れている。
「なぁ、話があるんだが」
男はそう言った。礼儀を知らないまだほんの若僧だ。
「何のようだ」
「あんたリプラーって知ってるか」
「、、、」
庇うように触れた左腕にぞわりと総毛立つ。またか。
「あんたのことか」
「さぁな」
「そうか。教えてくれないか知ってること」
どうやらもう知っているようだ、腕のことを。
「、、、二十ペギーだ」
「先に話してくれ。場合によれば四十払う」
四十! と周りの奴らが振り返ったのが空気でわかった。普通、たかが話に四十ペギーも払う馬鹿はいない。こいつ、金持ちか。二十でも相当の額を提示したつもりだったが、まさか倍で返ってくるとは予想していなかった。あんま見せ物にしたくなかったんだが。気にくわないが悪い話じゃない。
「、、話してやる、こっち来い」
酒の入った木樽ジョッキを手に立ち上がり、隅の二人席の方に行く。盛り上がっているあいつらにこれ以上水を差すのも悪いと思ってのことだ。
先に座るとそれにならって男も座った。
「、、、何が知りたい?」
「全て。あんたが知ってること全部教えてくれ」
全部。遠回しに腕のことを言っているのは明らかだった。まっすぐに見つめてくる瞳にその線を会わせるとふっと横を向いた。
「全部ったってなぁ。、、なんかねぇのか」
もう一度会わせられた視線がどこか申し訳なさそうに、労るように椅子の横に垂れた俺の左腕を見下げた。
「じゃあ、、聞いていいか、その、、、腕のこと」
はぁ、嫌になる。最初から言えばいい話を。長引かせるようなことはしないでほしい。結局話すとすればこんなことしかない。
「リプラーってのは、、、なんつったらいいのか。特定の形を持たない、生物か無生物かもわかんねえ黒い物体のことを差す。、、そういえばお前、見たことはあるのか」
男は頷いた。
「あぁ。つい昨日」
「そうか。それなら早い。そう時間も経ってねぇ、俺はそいつと七日ほど前に出会しちまった。黒い雲みたいなやつだった。やつらものすごい速さで向かってきやがるから逃げ切れなくて、、、しくじったんだよ」
ため息を押さえることができない。話していると思い出してしまう。あの時の不安と恐怖と孤独を。そしてため息さえ押さえることができなくなった小さな自分にどうしようもなく苛立つ。
「大丈夫か」
男が話の続きを待っていた。あぁ、俺はこんなガキにさえ満足に話もできなくなったのか。
「あぁ、すまん。、、俺の武器はハンマーだ。知ってるか、あいつらには攻撃することができる」
「あぁ。炎系の性質を持った武器なんかは切り込むことができるって聞いた」
「炎?」
「ん、違うのか」
俺のは炎系じゃない。
「俺のは魔法は魔法だが確か風の魔法だったはずだ。買ったときに微弱だがハンマーに上からかけられていた」
そう店主が言っていたのを覚えている。添付魔法の分少し値が張るのだと。
「効いたのか」
「微妙だな。何度か当てたんだが相手は雲だ。感覚もなければ消えもしない」
だが確かに攻撃したときに後ろに引いた。
「効いてなかった。もしくは、害を与えるまでには至らなかった」
「あぁ、そうかもな。リプラーが生物を取り込むっていう話は何となく聞いていた。とにかく触れないよう避け続け、隙を見て攻撃を繰り返していた。しかしだ、そう戦い慣れてもねぇからバランスを崩したときにハンマーに体を持ってかれてそのままやつに突っ込んじまった。その時だ、見たんだ。リプラーのからだの奥、光があった。その向こうに町が見えた。真っ白い町だ。道も建物も人でさえも白い町。その町の丁度真上に裂け目があった」
鮮明に思い出す、色を欠いた虚しさが屯する光景。今でも寒気がする。あれは死んだ世界だ。
「裂け目」
男は俺の言葉を確かめるように繰り返す。
「あぁ、他に言い表しようもない。空が割れたように空中に亀裂があったんだ。その深い黒はリプラーのと同じ。見ているだけで寒気がする。俺は、言いようもない恐怖に駆られた。だが身を引こうとしても吸われるように反対側に力が働いていて出られない。全力で体を引き抜いた頃にはこの様だ。俺の左腕は使い物にならなくなってた」
動く方で垂れ下がっていた左腕をテーブルに引き上げる。男の視線が一心にそこに注がれた。頭を近づける際に揺れた男の赤い髪が目を引く。魔鉱石の光を艶やかに受けている。
赤毛。どこかで話を聞いたような。
「もしかするとリプラーってのは人の能力を奪うのかもしれない」
赤い髪について少し気になったが、リプラーの話を再開するといつのまにか脳裏からも消えた。
「俺は左にハンマーを握ってたんだが、その重みで体は引き抜けてもしばらくは左腕がリプラーの中にあった。それからだ。俺の腕がこんなになっちまったのは」
男が腕から視線を上げ俺を見る。テーブルの上で組んでいる手に落ち着きがない。
「なぁ、嫌なら無理は言わねぇけど。触っていいか?」
あぁ、そういうことか。服の袖を捲って押し出す。もうすっかり商売道具って感じだな。
男はゆっくりと、小さな生き物を相手にするように柔らかい手つきで触れた。
「冷たいだろ。それでも血は通ってんだ。不思議だよな。感覚がなくなったから動かすことも出来ねぇ。ぶら下がったまんま、俺のじゃなくなったみたいだ」
「そうか、、」
目を伏せながらも男は腕を離さない。その目は幾つかある腕の傷を眺めていた。痛みを感じなくなった苛立ちから自らつけたものだ。なんだか気まずい。格好つかねぇことくらい自分でわかってるさ。
男は手を伸ばし傷口に触れ、
「痛くないのか」
と問う。
「全く」
「そうか」
代わりに俺の捲っていた袖をゆっくりと下ろし腕を包んだ。
「すまないな、辛い話をさせて」
そう言って立ち上がった。
「いや、金のためだ。問題ない」
「、、そうか。それはよかった」
カチャリ
小袋を机に置いた。中身はおそらく金だろう。
「ここに置いておく。きっちり四十だ」
「あぁ」
「ありがとう。、、それ、治るといいな」
その言葉を最後に男は背を向けた。その言葉にはどこか哀れみを感じさせた。
腕が動かなくなってから何人ものやつが俺を哀れみの目で見やがった。その度に何か腹の底で煮えたぎり、喧嘩に発展することもあったが。
今回はなぜか不思議と怒りも覚えなかった。感じたのは諦め。あいつには歯向かっても無駄な気がした。
あいつはたぶんこんな場所にいていい人間じゃねぇ。俺たちとは違う、けして下の立場に立つことのない人種。決定的なものは何もないが何かがそうだ思わせる。、、、目だろうか。何も知らない目をしていた。
ふとそのとき赤い髪が何を示すものかを思い出した。自然に酒に手が伸び、一口喉に通す。
あぁそうか、人の心なんて理解できるはずもない。
「あぁカル。どうだった? 話聞けたかい?」
カルが隅の席に移動するのを見届けてからはアルマとの会話を花を咲かせていたサリュは帰ってきたカルに尋ねた。
「あぁ、まぁな。そろそろ行こうぜ。サーカスも始まるんじゃないか」
もうそんな時間か。それほど経っているとは思っていなかった。
「そうかな。じゃあ行こうか」
鞄から金袋を取り出す。
「一杯二ペギー。二人分だから四ペギーよ」
アルマが言いながら、サリュの隣に置かれたグラスをカルの前に差し出した。その動きを見て今更ながらに思い出す。
「あぁ、そうだカル。これどうするの。飲まなきゃもったいないよ」
置かれたグラスを指差す。持って行くことなどすっかり忘れていた。
「持ってきてくれたっていいのに」
「ごめん、忘れてたんだよぉ。それにカル、楽しそうに話してたじゃないか」
「どこがだよ」
「あれっ、楽しくなかったの。僕はああいうときの君はすごく楽しんでいるように思えるのだけど。君は知識を増やしているときが一番生き生きしてる」
カルは少し考え込んで
「、、そうかもな」
と小さく頷いた。
「で、これどうすんの」
アルマがサリュのグラスを下げながら尋ねた。
「飲まないなら持っていくわよ」
「あぁ、ちょっと待ってくれよ。飲むよ、飲む。もったいないんだろ?」
サリュの方をちらっと見てからグラスを優雅に取り、そのわりにはごくごくと飲み干す。その様子はジュースを飲んでいるようにしか見えない。
「あーぁ、もう。ポポタはお酒なのよ。もうちょっとそれっぽく飲めないの?」
アルマは文句をいいながらも笑ってグラスをトレーに下げる。
「すまない」
カルが軽く頭を下げた。
「もしまた来たときは、もう少しゆっくり戴くよ」
トレーの上のグラスを見て苦笑いを浮かべる。サリュが四ペギーを渡すとどーも、と軽く手を振った。
「次はもっと時間を持っていらっしゃい。サリュ、じゃあまたね。今日のこと内緒よ」
サリュも頷いて返す。
「はい、アルマさんも。楽しかったです」
知らないうちに仲良くなっている二人に、不思議そうにしているカルを引き連れて店を出た。
「そしたらさぁ、いきなり襲ってきやがったんだよ」
周りの奴らもよく飽きないものだ。まぁ、真剣に聞いている者などいないのかもしれないが。皆口々に自分のことを話すので場はたいそう盛り上がって見える。話の繋がりなどどうでもいい集団が店内を埋め尽くしているのだ。
ひとりの男が近づいてきていた。赤毛、長身。目を隠してしまいそうな長い前髪が歩く度に揺れている。
「なぁ、話があるんだが」
男はそう言った。礼儀を知らないまだほんの若僧だ。
「何のようだ」
「あんたリプラーって知ってるか」
「、、、」
庇うように触れた左腕にぞわりと総毛立つ。またか。
「あんたのことか」
「さぁな」
「そうか。教えてくれないか知ってること」
どうやらもう知っているようだ、腕のことを。
「、、、二十ペギーだ」
「先に話してくれ。場合によれば四十払う」
四十! と周りの奴らが振り返ったのが空気でわかった。普通、たかが話に四十ペギーも払う馬鹿はいない。こいつ、金持ちか。二十でも相当の額を提示したつもりだったが、まさか倍で返ってくるとは予想していなかった。あんま見せ物にしたくなかったんだが。気にくわないが悪い話じゃない。
「、、話してやる、こっち来い」
酒の入った木樽ジョッキを手に立ち上がり、隅の二人席の方に行く。盛り上がっているあいつらにこれ以上水を差すのも悪いと思ってのことだ。
先に座るとそれにならって男も座った。
「、、、何が知りたい?」
「全て。あんたが知ってること全部教えてくれ」
全部。遠回しに腕のことを言っているのは明らかだった。まっすぐに見つめてくる瞳にその線を会わせるとふっと横を向いた。
「全部ったってなぁ。、、なんかねぇのか」
もう一度会わせられた視線がどこか申し訳なさそうに、労るように椅子の横に垂れた俺の左腕を見下げた。
「じゃあ、、聞いていいか、その、、、腕のこと」
はぁ、嫌になる。最初から言えばいい話を。長引かせるようなことはしないでほしい。結局話すとすればこんなことしかない。
「リプラーってのは、、、なんつったらいいのか。特定の形を持たない、生物か無生物かもわかんねえ黒い物体のことを差す。、、そういえばお前、見たことはあるのか」
男は頷いた。
「あぁ。つい昨日」
「そうか。それなら早い。そう時間も経ってねぇ、俺はそいつと七日ほど前に出会しちまった。黒い雲みたいなやつだった。やつらものすごい速さで向かってきやがるから逃げ切れなくて、、、しくじったんだよ」
ため息を押さえることができない。話していると思い出してしまう。あの時の不安と恐怖と孤独を。そしてため息さえ押さえることができなくなった小さな自分にどうしようもなく苛立つ。
「大丈夫か」
男が話の続きを待っていた。あぁ、俺はこんなガキにさえ満足に話もできなくなったのか。
「あぁ、すまん。、、俺の武器はハンマーだ。知ってるか、あいつらには攻撃することができる」
「あぁ。炎系の性質を持った武器なんかは切り込むことができるって聞いた」
「炎?」
「ん、違うのか」
俺のは炎系じゃない。
「俺のは魔法は魔法だが確か風の魔法だったはずだ。買ったときに微弱だがハンマーに上からかけられていた」
そう店主が言っていたのを覚えている。添付魔法の分少し値が張るのだと。
「効いたのか」
「微妙だな。何度か当てたんだが相手は雲だ。感覚もなければ消えもしない」
だが確かに攻撃したときに後ろに引いた。
「効いてなかった。もしくは、害を与えるまでには至らなかった」
「あぁ、そうかもな。リプラーが生物を取り込むっていう話は何となく聞いていた。とにかく触れないよう避け続け、隙を見て攻撃を繰り返していた。しかしだ、そう戦い慣れてもねぇからバランスを崩したときにハンマーに体を持ってかれてそのままやつに突っ込んじまった。その時だ、見たんだ。リプラーのからだの奥、光があった。その向こうに町が見えた。真っ白い町だ。道も建物も人でさえも白い町。その町の丁度真上に裂け目があった」
鮮明に思い出す、色を欠いた虚しさが屯する光景。今でも寒気がする。あれは死んだ世界だ。
「裂け目」
男は俺の言葉を確かめるように繰り返す。
「あぁ、他に言い表しようもない。空が割れたように空中に亀裂があったんだ。その深い黒はリプラーのと同じ。見ているだけで寒気がする。俺は、言いようもない恐怖に駆られた。だが身を引こうとしても吸われるように反対側に力が働いていて出られない。全力で体を引き抜いた頃にはこの様だ。俺の左腕は使い物にならなくなってた」
動く方で垂れ下がっていた左腕をテーブルに引き上げる。男の視線が一心にそこに注がれた。頭を近づける際に揺れた男の赤い髪が目を引く。魔鉱石の光を艶やかに受けている。
赤毛。どこかで話を聞いたような。
「もしかするとリプラーってのは人の能力を奪うのかもしれない」
赤い髪について少し気になったが、リプラーの話を再開するといつのまにか脳裏からも消えた。
「俺は左にハンマーを握ってたんだが、その重みで体は引き抜けてもしばらくは左腕がリプラーの中にあった。それからだ。俺の腕がこんなになっちまったのは」
男が腕から視線を上げ俺を見る。テーブルの上で組んでいる手に落ち着きがない。
「なぁ、嫌なら無理は言わねぇけど。触っていいか?」
あぁ、そういうことか。服の袖を捲って押し出す。もうすっかり商売道具って感じだな。
男はゆっくりと、小さな生き物を相手にするように柔らかい手つきで触れた。
「冷たいだろ。それでも血は通ってんだ。不思議だよな。感覚がなくなったから動かすことも出来ねぇ。ぶら下がったまんま、俺のじゃなくなったみたいだ」
「そうか、、」
目を伏せながらも男は腕を離さない。その目は幾つかある腕の傷を眺めていた。痛みを感じなくなった苛立ちから自らつけたものだ。なんだか気まずい。格好つかねぇことくらい自分でわかってるさ。
男は手を伸ばし傷口に触れ、
「痛くないのか」
と問う。
「全く」
「そうか」
代わりに俺の捲っていた袖をゆっくりと下ろし腕を包んだ。
「すまないな、辛い話をさせて」
そう言って立ち上がった。
「いや、金のためだ。問題ない」
「、、そうか。それはよかった」
カチャリ
小袋を机に置いた。中身はおそらく金だろう。
「ここに置いておく。きっちり四十だ」
「あぁ」
「ありがとう。、、それ、治るといいな」
その言葉を最後に男は背を向けた。その言葉にはどこか哀れみを感じさせた。
腕が動かなくなってから何人ものやつが俺を哀れみの目で見やがった。その度に何か腹の底で煮えたぎり、喧嘩に発展することもあったが。
今回はなぜか不思議と怒りも覚えなかった。感じたのは諦め。あいつには歯向かっても無駄な気がした。
あいつはたぶんこんな場所にいていい人間じゃねぇ。俺たちとは違う、けして下の立場に立つことのない人種。決定的なものは何もないが何かがそうだ思わせる。、、、目だろうか。何も知らない目をしていた。
ふとそのとき赤い髪が何を示すものかを思い出した。自然に酒に手が伸び、一口喉に通す。
あぁそうか、人の心なんて理解できるはずもない。
「あぁカル。どうだった? 話聞けたかい?」
カルが隅の席に移動するのを見届けてからはアルマとの会話を花を咲かせていたサリュは帰ってきたカルに尋ねた。
「あぁ、まぁな。そろそろ行こうぜ。サーカスも始まるんじゃないか」
もうそんな時間か。それほど経っているとは思っていなかった。
「そうかな。じゃあ行こうか」
鞄から金袋を取り出す。
「一杯二ペギー。二人分だから四ペギーよ」
アルマが言いながら、サリュの隣に置かれたグラスをカルの前に差し出した。その動きを見て今更ながらに思い出す。
「あぁ、そうだカル。これどうするの。飲まなきゃもったいないよ」
置かれたグラスを指差す。持って行くことなどすっかり忘れていた。
「持ってきてくれたっていいのに」
「ごめん、忘れてたんだよぉ。それにカル、楽しそうに話してたじゃないか」
「どこがだよ」
「あれっ、楽しくなかったの。僕はああいうときの君はすごく楽しんでいるように思えるのだけど。君は知識を増やしているときが一番生き生きしてる」
カルは少し考え込んで
「、、そうかもな」
と小さく頷いた。
「で、これどうすんの」
アルマがサリュのグラスを下げながら尋ねた。
「飲まないなら持っていくわよ」
「あぁ、ちょっと待ってくれよ。飲むよ、飲む。もったいないんだろ?」
サリュの方をちらっと見てからグラスを優雅に取り、そのわりにはごくごくと飲み干す。その様子はジュースを飲んでいるようにしか見えない。
「あーぁ、もう。ポポタはお酒なのよ。もうちょっとそれっぽく飲めないの?」
アルマは文句をいいながらも笑ってグラスをトレーに下げる。
「すまない」
カルが軽く頭を下げた。
「もしまた来たときは、もう少しゆっくり戴くよ」
トレーの上のグラスを見て苦笑いを浮かべる。サリュが四ペギーを渡すとどーも、と軽く手を振った。
「次はもっと時間を持っていらっしゃい。サリュ、じゃあまたね。今日のこと内緒よ」
サリュも頷いて返す。
「はい、アルマさんも。楽しかったです」
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