1 / 1
カレー
しおりを挟む
サクサクサクサクーーーー。
トントントントンーーーー。
モスッ、モスッーー。ススッ、ススッーー。
何を切っているかは定かではない。そんな包丁の音が、リビングまでこだましてくる。リズミカルな音は、否応なしに僕の食欲を駆り立てる。
パチッ、ボッ! トットットットットーー。
コンロに火が点いたらしい。そしてすぐに、
ジュジュジュジュジュジュジュッーー。
ジュジュジュッ、ジュジュッジュジュッ。
ゴトッ!
ジュジュージュジュージュジュージュジュー。
具材を炒める音が、一斉に聞こえてきた。今夜の夕飯のドラムが部屋の中に鳴り響いている。
「美味しそうだね、今夜は生姜焼き? チンジャオロース? うーん、生姜焼きとみた! 」
「ブー、ハズレ。今夜はカレーだよ」
背を向けるエプロン姿の妻は、こちらを振り返らずに答えた。そして、
「カレーかー! たまにはいいなあ!」
なんてことを言いながら、僕は彼女を見ている。すると、穏やかな時間が流れるこの空間に、5才の息子が乱入してきた。ユーモラスな音と、フワッとくる野菜の香りに口説かれて来たのだろう。すぐに妻の元まで、駆けて行った。
「ママー、なに作ってるの?」
「ママはねー、カレーを作ってるんだよ」
「やったー! カレーだ! パパ、カレーだって!!」
「え! そうなの!? やったね、嬉しいなあ」
彼は我が愛妻にひっつきながら、逐一料理の過程を報告してくる。まだまだ母親のことが大好きなんだなあ。四六時中、ベッタリして離れないときだってあるくらいだ。
コトコトコトコトーーーー。
お! いよいよカレー作りも大詰めに差し掛かったらしい。
「こーら。もう出来上がるから、席に座っといて」
「えーー。もっとギューしときたいよ」
「危ないから」
妻も妻で、息子のメロメロ攻撃には、かなりの耐性がついている。そりゃ、産まれて5年なんだもの。当たり前かもしれない。ひっついている息子の額には、玉のような汗が滲んでいた。こんな夏場にキッチンでハグなんて、間違ってもするものではないな。
「ほら、ママも暑がってるよ。こっちで待っとこうよ」
そう言って、僕はキッチンから息子を退場させた。まったく、なんと平和な夏の暮れだろう。
まもなく、妻は僕と息子に大盛りのカレーを運んできたーー。
トントントントンーーーー。
モスッ、モスッーー。ススッ、ススッーー。
何を切っているかは定かではない。そんな包丁の音が、リビングまでこだましてくる。リズミカルな音は、否応なしに僕の食欲を駆り立てる。
パチッ、ボッ! トットットットットーー。
コンロに火が点いたらしい。そしてすぐに、
ジュジュジュジュジュジュジュッーー。
ジュジュジュッ、ジュジュッジュジュッ。
ゴトッ!
ジュジュージュジュージュジュージュジュー。
具材を炒める音が、一斉に聞こえてきた。今夜の夕飯のドラムが部屋の中に鳴り響いている。
「美味しそうだね、今夜は生姜焼き? チンジャオロース? うーん、生姜焼きとみた! 」
「ブー、ハズレ。今夜はカレーだよ」
背を向けるエプロン姿の妻は、こちらを振り返らずに答えた。そして、
「カレーかー! たまにはいいなあ!」
なんてことを言いながら、僕は彼女を見ている。すると、穏やかな時間が流れるこの空間に、5才の息子が乱入してきた。ユーモラスな音と、フワッとくる野菜の香りに口説かれて来たのだろう。すぐに妻の元まで、駆けて行った。
「ママー、なに作ってるの?」
「ママはねー、カレーを作ってるんだよ」
「やったー! カレーだ! パパ、カレーだって!!」
「え! そうなの!? やったね、嬉しいなあ」
彼は我が愛妻にひっつきながら、逐一料理の過程を報告してくる。まだまだ母親のことが大好きなんだなあ。四六時中、ベッタリして離れないときだってあるくらいだ。
コトコトコトコトーーーー。
お! いよいよカレー作りも大詰めに差し掛かったらしい。
「こーら。もう出来上がるから、席に座っといて」
「えーー。もっとギューしときたいよ」
「危ないから」
妻も妻で、息子のメロメロ攻撃には、かなりの耐性がついている。そりゃ、産まれて5年なんだもの。当たり前かもしれない。ひっついている息子の額には、玉のような汗が滲んでいた。こんな夏場にキッチンでハグなんて、間違ってもするものではないな。
「ほら、ママも暑がってるよ。こっちで待っとこうよ」
そう言って、僕はキッチンから息子を退場させた。まったく、なんと平和な夏の暮れだろう。
まもなく、妻は僕と息子に大盛りのカレーを運んできたーー。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる