聖白薔薇少女 

平坂 静音

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「そろそそ来るはずです。あ、ちょうど来たようですわ」

 ドアをノックする音がひびき、入室してきたのは一人の少女だったが、彼女の装いを見てまた夕子は眉をしかめ、美波は目を見張った。

「こちら、ジュニア・シスターのレイチェル」

 二人はまた一瞬ぽかんとして少女を見つめていた。

「こんにちは。レイチェルです。本名は緒方おがた裕佳子ゆかこです」

 レイチェルとは洗礼名なのだろうか、と美波は推測した。長い黒髪を二つに分けて三つ編みにし、雀斑そばかすの多い顔に眼鏡をかけている彼女は、外見も言葉も日本人にしか見えない。

 ぺこりとお辞儀する相手につられて美波たちも軽く会釈したが、二人とも複雑な顔になっていた。

 ふと夕子を見ると、その表情はなんとも微妙なもので、今にも笑いだしたいような、毒づきたいような、それでいてそれをこらえているという、やや意地悪げな顔つきになっている。スマートフォンを取り上げられたうえに外出もできないと言われたことへの苛立いらだちもあるのだろう。

 しかし二人に微妙な顔をさせるのは、そのレイチェルこと緒方裕佳子と名乗った少女の服装である。     

 青い半袖のワンピース姿で、白いストッキングを履き、足には白いシューズを履いている。

 なんか、だっさー。

 という夕子の感想が聞こえてきそうだ。

 私立の女子高といえばたいてい制服はお洒落で可愛いもの、という思い込みがくずれていく。美波は頬がこわばった。

 制服というよりもそれは作業着、もしくは女性看護師の制服――色は青だが――のようだ。また緒方裕佳子の、見るからに野暮やぼったい様子も、東京郊外に生まれ育ち、幼稚園から洗練された私立校に通ってきた美波からすると、どうにも我慢できない田舎臭さを感じさせる。

 母が見たら、さぞ笑うだろう。そして、こんなさえない子と同じ学校に入るなんて、と嘆くかもしれない。そういうことばかり言う母、いや、そういうことにしか関心がない母を、かつてはあれほど嫌悪し、軽蔑していたというのに、今美波は母とおなじ価値観で人を判断している自分に気づいた。

(着ているもので人を判断したらいけないよね……)

 そう思い、初対面の彼女にまずは言葉をはなった。

「こ、こんにちは。近藤美波です。あの……、レイチェルって、洗礼名ですか?」

 ここはミッション系の学校なのだから、もしかして自分たちも洗礼名をつけられるのだろうか、とふと気になったりもする。

「洗礼名じゃないですけど……ここでの呼び名です」

「それって、制服なわけ?」
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