聖白薔薇少女 

平坂 静音

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 いや、それもあるが、背を見ていると、妙に気を引かれるものがある。

(何故かしら……、なんだか気になる)

 スピーカーからは優雅でどこか悲しげなメロディーが相変わらず聞こえてくる。この音楽が流れている間は部屋の掃除をすることになっているのだと聞いている。壁にかけられている箒と塵取りを取ると、仕方なしに美波は掃除を始めた。

「あー、遅くなっちゃった」

 少し遅れて戻って来た夕子もあわてて制服に着替えるが、掃除しようとはしない。

「ねぇ、せめて窓を開けてよ」

「了解」

 窓はかなり高いところにあるので、夕子は机の上に乗って背を伸ばし鍵をあけ、左右の窓ガラスを中央に寄せる。

「ここから逃げ出せないかな」

 本気で言っているのではないだろうが、つい美波は笑ってしまった。

「無理よ」

「んー」 

 窓ガラスを開けたり閉めたりしながら、どうやら夕子は本気で考えているようだ。

 だがいくら夕子が小柄で敏捷びんしょうそうであっても、その狭い幅から抜けだすのは無理だろう。それにこの高さでは、外側もかなり高くなっており、一階とはいえ危険だ。

「なんか、この建物、あたしらを閉じこめるために作られているみたい」

「……」 考え過ぎよ、とは美波は何故か口にできない。

 やがて音楽が終わると「一年生は裏庭へ、二年生は正面中庭へ、三年生は北側へ集合してください」というアナウンスがながれた。ちなみに、集合場所は日によって違うので、かならずこの放送を聞いておくようにと昨夜シスター・アグネスから注意されている。

 さすがに今度は夕子もさぼっているわけにもいかず、面倒くさそうに二人は廊下へ出、つれだって生徒の列にしたがって寮の外へと出る。




 中庭へ出てから美波は目を見張った。

(うわぁ……)

 朝霞に濡れた芝生が朝の白い時間のなかで幻想的な美しさをはなって美波たちの目を刺激してくるのだ。

 六月ももう終わろうかというこの時期、早朝の空気はひどく澄んで、見わたす限りミントグリーンに輝く世界は荘厳の一言だ。生いしげる杉の木のうえから鳥の鳴き声が聞こえてくる。

「あー、なんか、気持ちいい」

 そこは素直に夕子も感心している。

 だがミントグリーンにきらめく世界の果てには巨大な象牙色の壁があり、そこで世界は区切られてしまっている。それを思うとすこしやるせないが、美波はそれを振り切って生徒たちが集まっているところへすすんだ。

 ここに集まっているのは二年生ばかりで、人だかりの前にはシスター・マーガレット。
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