聖白薔薇少女 

平坂 静音

文字の大きさ
74 / 210

しおりを挟む
「あたしはちゃんとわたるのことが好きになって、愛し合ってしたんだから」

「彼は結婚を約束しましたか?」

 シスター・マーガレットの冷ややかな問いに夕子はうんざりした顔をしてみせた。

「はああ? あんた、何言ってんの。あたし高校生だよ」

「彼とはその後どうなりました?」

「どうもこうも、親があたしをこの学院にほうりこんだんだから、それっきりよ。スマホだって、手紙だって出せないんだし……、どうしようもないじゃん」

 どうしょうもない、と言いつつも、語感に拗ねたひびきがあった。

「妊娠しましたか?」

 その言葉に室が凍りついた。

 美波と他の二人の生徒は緊張に青ざめて夕子を見ていた。

「知ってんじゃん! 知っていて、なんでこんなことすんのよ!」

 夕子は席を立っていた。

「やってらんないわよ! あたしもう帰るからね」

「このままだとあなたは地獄に堕ちます」

 優しさのかけらもない言葉にまたも三人の生徒たちは硬直したが、当の夕子は敵意に燃えた目をシスター・マーガレットに向けた。

「けっこうだよ、地獄に堕ちようが、閻魔様に舌を抜かれようが、そんなもんあたしの勝手じゃない。ほっといてよ。文句があるなら、さっさとあたしのこと退学させたら? こんな学院いつでもやめてやるって!」

 そう捨て台詞ぜりふを吐くと、夕子は部屋のドアを開けた。

「戻りなさい!」

「おことわり!」

 ドアを叩きつけるように閉め、夕子は出ていった。




 部屋には凍り付くような沈黙が満ちたが、やがてそれはシスター・マーガレットの微笑みで奇妙にぬるくなった。

「困った人ですね。仕方ありません。今日のカウンセリングはここまでにしましょう」

 この言葉に一番救われたのは美波だった。全身の力が抜けていく。

「では、皆さん、お疲れさま」

 美波と他の二人は力なく立ち上がると、部屋を出た。

「なんか、びっくりした……」

 ドアを閉めたとたん、真保がつぶやくように言い、桜子もうなずいた。

「あの子、妊娠したっていうことは、つまり、堕《お》ろしたっていうことよね」

「なんか、すごい……」

 そんなことを言う二人に、美波は言わずにいられなかった。

「ここで聞いたことは、絶対他の人に言わないようにしようよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...