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不思議の国 一
しおりを挟む肌を刺す陽光に汗をうっすら額にはりつかせて、美波はその日は草抜きをしていた。
そこは校舎の影になる辺りで、作業をしている生徒はまばらだ。すぐ近くで同じようにしゃがんで草抜きをしていた晃子と目が合う。
晃子は目を細めて制服のポケットに手をつっこむと、なにやら取り出し美波に差し出す。
「なに?」
「ふふ。これ、後で食べるといいわ」
よく見るとブルーの銀紙に可愛くつつまれたチョコレートである。日本のものではなく、輸入ショップなどで目にしたことのある海外のものだ。
「溶けてるかもしれないから、すこし涼しいところに置いてから開けた方がいいかも」
「これ、どうしたの?」
びっくりして訊く美波に、晃子は微笑んだ。
「もらったのよ」
「だ、誰から?」
晃子に合わせて美波は小声で問う。
「菜緒から。ほら、おなじクラスの小川菜緒」
「あの……プレの?」
彼女もプレ・ジュニア・シスターだと聞いて、なるべく目をつけられないようにと避けているので、話をしたことすらなかったが。
「ど、どうして菜緒がこんなもの持っているの?」
驚き顔の美波に晃子はあっさりと言った。
「あれ、知らなかったの? ジュニア・シスターやプレは購買室でお菓子をもらうことが出来るのよ。ちょっとだけだけどね」
「なに、それ?」
思わず美波は目をむいていた。夏の陽が降ってきて美波の額の汗を増やす。
「ジュニア・シスターたちは特別な仕事をしているから、その見返りっていうのかな? その埋め合わせに、お菓子をもらうことが出来るんだって」
美波は絶句していた。
「じゃ、ジュニア・シスターやプレたちだけお菓子もらっているの?」
「うーん、といっても皆が皆っていうわけじゃないけれどね。カード、ほら、あの色のついたカードと引き換えだから。あのカードをたくさん集めた人ほどたくさんお菓子をもらえるのよ」
「な、なんなの、それは?」
驚愕する美波に、晃子がまた苦笑してみせた。
「つまりさ、たくさんのカードを集めた人は、それだけたくさん仕事したっていうこと」
そんな馬鹿な話があるのだろうか。美波は頭がこんがらがってきた。
人の粗探しをした生徒ほどいい想いをするなどということがあっていいのだろうか。
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