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三
しおりを挟む「しっかりつかまっていろ」
「うん」
夕子は言われたとおりにしっかりと佐藤の身体にしがみついた。
佐藤和は夕子がアルバイトしていた店でいっしょに働いていたフリーターで、最初に夕子に仕事を教えてくれたことがきっかけで仲良くなった。
そもそも彼が友人だったマサトを店に連れてくるようになったことが今の夕子の現状につながったのだ。逆恨みだとは思うが、そのことを仄めかし、助けてほしいという意味のメールを送ったのだ。
(迎えにきてくれないなら、マサトたちにレイプされたこと訴えてやるから。佐藤だってあいつのダチなんだから責任あるはず)
勿論、十七歳の夕子に法的に訴えるなどという真似はできないし、すでに数ヶ月たった今ではかなり難しいことも知っているので本気ではないが、佐藤を呼ぶには効果があったようだ。
幸い、関東圏であるこの場所は夕子の実家がある横浜までそれほど遠くはない。
途中夕子がトイレに行きたくなったためファミレスで休憩をとることにした。店に入るなり、夕子の着ている制服を奇妙そうに見てくるウェイトレスの顔を見ないように夕子は顔を伏せた。
奥まった席につくと、佐藤はあらためて夕子を見て細い目を丸くする。
「しかし、本当に変わった学校だな。それ、制服っていうより作業着じゃねえか?」
呆れたように夕子の着ている制服を指で引っぱる。
「作業着だよ。これで毎日掃除やら作業やらやらされるんだから」
オレンジジュースをストローで啜り、夕子はその甘さと舌への刺激に涙が出そうになった。こんなものがたまらなく有り難く思える。
一緒にたのんでくれたチョコレートケーキも感動ものだった。
「なんか、おまえ見ていると、ネンショーから出てきた奴みたいだな」
ケーキを頬ばり、天にのぼるような顔をしている夕子を見て、またも呆れたように佐藤が目を見張る。
少年院から出てきたような人を知っているのか、という問いを敢えて夕子は口にしない。その代わり口をついて出たのは聖ホワイト・ローズ学院に関する恨みと怒りである。
しばらく聞いていた佐藤は驚いた顔のままだ。十代のころは相当馬鹿なこともしたようだが、今では二十五という実年齢よりも老成して落ち着いて見える。その彼が珍しく呆れた顔をしている。
「聞けば聞くほど学校っていうより、少年院だな。おまえはお金持ちの私立のお嬢様校に行ったんだとばっかり思っていたけど……、なんか、その話だとまるで女子刑務所……女子少年院だな。髪洗う日が決まっているとか、夜はトイレに入ったら駄目だとか、そんなこと本当にやってんのか?」
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